物件価格の上昇が止まらない！｜スペイン

2025.03.19

スペイン

スペインでは賃貸契約は1年更新で、そもそも毎年家賃が上がる傾向にある。近年は様々な要因が重なり、住宅価格と賃貸物件の家賃の双方の顕著な上昇が深刻な社会問題となっている。全国的にみると、過去５年間で住宅価格は平均60,000ユーロ上昇した。特にマドリード州では61%、バレアス諸島では55.5%と大幅な上昇が報告されている。本記事では物件価格の上昇と、高い需要があるにもかかわらず供給不足という課題に直面しているスペインの不動産の現状をお伝えする。

異国の地スペインコスタ・デル・ソル/フエンヒローラに住んで22年

交通便利な生活と多彩なカルチャー広がる多文化都市｜マラガ/フエンヒローラ

この記事の内容

物件価格の上昇が止まらない！｜スペイン

物件価格の上昇が止まらない！｜スペイン

　　　著者：スペインgramフェロー北田ミヤ
公開日：2025年3月19日

住宅価格の上昇

スペインの住宅価格の上昇が止まらない。2024年の第4四半期には、前年同期比で4.4%増加し、１平方メートルあたり平均1,846ユーロに達した。マドリード州では年間7%の上昇がみられ、バレアス諸島では2007年の不動産バブル期の最高値を16.9%も上回る水準となっていて、2025年も約6%の価格上昇が予測されている。

地域別にみると、カンタブリア州では過去5年間で住宅価格が27.36%上昇し、2019年の137,598ユーロから2024年末には175,000ユーロとなった。サンタンデール市ではさらに顕著で、同期間に61,790ユーロ増加し、247,596ユーロに達している。また、2024年の第3四半期には、マドリード州、アリカンテ県、バレアス諸島、マラガ県、ギプスコア県、サンタ・クルス・デ・デネリフェ県、ラス・パルマス県の7県で住宅価格が過去最高を記録した。

家賃の上昇

住宅価格と同様に、賃貸物件の家賃も大幅に上昇している。2024年、スペイン全体の賃貸価格は前年比で13.2%上昇し、1平方メートルあたりの平均家賃は13.4ユーロとなった。特に主要都市では家賃の上昇が顕著で、バルセロナ(17.8%)、マドリート(17.9%)、バレンシア(19%)で大幅な上昇が見られる。

バルセロナでは過去10年間で家賃が約70%も上昇、マドリード州のヘタフェ市では2024年に家賃が44%上昇した。1平方メートルあたりの価格は18.47ユーロで、これは、１位のマドリード市、２位のラ・モラレハに次いで州内で３番目に高い水準だ。

この急激な上昇を受け、政府は家賃の高騰を抑制するため、2023年には家賃の年間更新率を最大2%、2024年には最大3%に制限した。さらに、2025年以降は新たな指標であるIRAV（El indice de referencia de arrendamiento de vivienda = 住宅賃貸参考指数) に基づいて家賃の更新が行われる予定だ。

物件価格上昇の主な理由と対策

物件価格の上昇理由には、国内の経済回復と内需の増加、観光客向けの短期賃貸物件の増加など様々な要因が組み合わさっている。特にバルセロナなどの主要都市や新規建設が少ない地域の住宅不足と高い需要が要因となり物件価格が引き上げられている。その対策として、バルセロナ市は2028年11月までに観光客向けの短期賃貸アパートの許可を取り消し、それらの物件を市民向けの賃貸市場に戻す計画を発表した。この措置は、価格高騰を抑制し、地元住民の生活環境を改善することを目的としている。

また、外国人投資家による不動産購入も価格上昇に影響を与えている。2023年にはEU圏外の居住者、主にイギリス人や中南米の富裕層などによる住宅購入が約27,000件に上った。これに対し、スペイン政府は非EU市民の住宅購入に対し、最大100％の課税を検討している。