建物の緑化を進めるシンガポール
シンガポール政府は、ビルの壁面や屋上の緑化に対して補助金を支給し、建物の緑化を急速に進めています。
世界でも2番目に人口密度が高い都市国家であり、高温多湿な気候のシンガポールでは、近年、気温の上昇が著しくなっています。
この問題に対処するためにさまざまな取り組みが行われていて、その中でも中心的な戦略となっているのが、建物の屋上や壁面を植物で覆うことで都市を緑化することです。
今回は、シンガポールがすすめる緑化政策について解説します。
建物の緑化を進めるシンガポール
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年 10月27日
「生死に関わる」問題
かつてリー・シェンロン首相は、「この小さな島国にとって、気候変動の影響を軽減する方法を見つけることは、文字通り『生死に関わる』問題だ」と述べ、危機感をあらわにしています。
多くの外国人労働者を受け入れているシンガポールは、人口密度が急激に増加して、市内はどこも非常に混みあい、高速道路も常に渋滞しています。
加えて、気温上昇によって海面上昇や豪雨など、シンガポール特有の気候課題が喫緊の課題になっており、解決策が求められています。
「ガーデンシティ」コンセプト
以前この記事でも紹介しましたが、建国の父 リー・クアンユー氏の「ガーデン・シティ」という都市ビジョンは、彼の強いリーダーシップのもとで推進され、現在シンガポールと言えば、美しく整備された、まるで箱庭のような「ガーデン・シティ」として、世界中から来る多くの観光客を惹きつけています。
彼の卓越した未来を見通す力により、彼が述べたように”最も低コスト”で、国民の意識の啓もうに努め、改革し、高めることに成功しました。手入れの行き届いた「ガーデン・シティ」の実現は、細部まで気を配れる国民の能力を世界に示すことができ、それが国民の自信へとつながりました。
クリーン&グリーン
1969年に始まった環境美化運動は「クリーン&グリーン」で、清潔さを維持するとともに「庭と水が価値を上げる街」のスローガンのもと、緑化を国家的に進めました。
現在シンガポールは、自然環境を利用した適応可能な都市設計に投資し、これを見事に実現化。そこでの生活を持続可能で、より楽しいものにしています。
シンガポールには、その気候を活かした木々や緑地が、道路沿い、公園や自然保護区ばかりではなく、屋上公園から建物の壁まで、ありとあらゆる場所に見られます。
アジアではNo.1、世界でもトップ10にランクインされる環境に優しい都市になっています。
「グリーン プラン 2030」
2020年に発表された環境に対する新たな国家目標である「グリーン プラン 2030」。このプランは植樹本数を倍増させ、屋上の植物配置を強化し全ての建物の80% を緑化することを掲げています。
また、緑化推進政策のもと、屋上や壁面の緑化にかかる費用の最大50%がその不動産の所有者に支払われるという助成金の支援策も進めています。
世界中の都市計画に影響
シンガポールのさまざまな持続可能性や都市緑化への取り組みは、国境を越えて世界中の都市計画に影響を与えています。
パリやミラノでの垂直庭園の導入や、ロンドンとシドニーでの生態系保護対策は、シンガポールの政策と実績を参考に行われたものであり、強く影響を与えています。
シンガポールの先進的な取り組みは、リー・クワンユー氏の時代から、常に世界の耳目を集めているのです。