アジアの不動産市場動向|シンガポールが示す驚異的な成長と課題

シンガポール

シンガポールの不動産市場が驚異的な成長を遂げている。グローバル・プロパティ・ガイド社の調査によると、一等地の1ベッドルームアパートの家賃がアジア1位で、2位の香港の倍以上。この急激な上昇は、若者の生活や外国企業の進出戦略にも大きな影響を与えている。
本コラムでは、シンガポールの不動産市場の現状を分析し、その背景にある要因や、ビジネス環境への影響、さらには政治問題化する可能性まで、幅広い視点から解説する。

シンガポール家賃高騰の実態:アジア1位の背景と影響を解説

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 7月26日

シンガポールは飛びぬけて高い!

同社が発表した、アジア主要都市の月額の家賃ランキングは以下の通りです。

順位国名金額
1位シンガポール4,590ドル(約70.5万円)
2位香港2,173ドル(約33.4万円)
3位東京1,216ドル(約18.7万円)
4位バンコク1,080ドル(約16.6万円)
5位台湾816ドル(約12.5万円)

この他には、クアラルンプールが7位に入っています。

2位の香港にダブルスコア以上の大差をつけて、シンガポールが1位にランキングされています。

一等地の家賃においては、世界でも最も家賃が高いと言われる香港よりも、シンガポールの方がはるかに高いことがわかります。

市場環境が二極化

2023年はインフレの影響とそれに伴う経済成長の鈍化のために、アジアの住宅市場は低迷しています。

同社の報告でも、他の東南アジア諸国でも住宅価格が下落していることがわかります。

一方で、シンガポールや台北などの都市では、市場環境が悪化しているにもかかわらず手堅い回復力を示していて、2023 年の住宅価格も2~5%近く上昇しています。

一等地においては住宅価格は顕著な上昇を維持し続けています。

若者が賃貸を断念

シンガポールの都市再開発庁のデータによると、2022 年にはすべての民間住宅の価格が、前年比で29.7% 上昇しており、これは2007 年以来の最高値でした。

家賃の高騰により、シンガポールの若者は独立性を維持するために高い家賃を支払うか、それとも実家に戻るかの選択を迫られているようです。

結婚して家族を持っているため実家に戻ることも難しく、都心の部屋に住み続けざるを得ない人も多いようです。

私の姪夫妻も親の実家は手狭で郊外にあるため、通勤や子育てのために都心に近い家を借り続け、夫婦で働いています。

HDBも価格高騰

シンガポール人の多くは、割安な価格で購入できるHDBと呼ばれる分譲集合住宅に住んでいますが、その家賃もここ1~2年で急上昇しています。都市再開発局のデータによると、民間住宅の賃貸料は2022年に30%近く上昇していて、3月のHDBアパートの賃貸価格は、前年比で26.8%も上昇しています。

以前新聞で、私がかつて仕事をしていた、シンガポールのかなりの郊外にあるHDBの購入価格が6,000万円前後と発表されているのを目にしました。

バスターミナルは近いものの駅からは遠く、かつては芝生の原っぱが広がるエリアでしたが、この10年ほどでHDBが立ち並び、外国人や富裕層向けの高級コンドミニアムも多くでき、価格が急騰していました。

家賃高騰が政治問題化

世界最速のペースで上昇しているシンガポールの家賃に強い危機感を感じているのは、国民だけではありません。海外からの在住者も同じです。

国の住宅補助制度からほとんど締め出されていて、しかも住宅を購入する外国人に対しては、追加の印紙税が倍増されています。これは世界の主要都市の中で最も高い税率になっています。

ビザの取得条件もさらに厳しくなったため、隣国マレーシアへ地域統括事務所や工場を移転する企業も急増しており、家賃の高騰は政治問題化しつつあります。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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