中国で「花き」市場が拡大:ECの急成長で浮き彫りになった課題とは
上海市にある公園には色とりどりの鮮やかな花が何種類も植えられ、道路や歩道にも花が整備され目を楽しませてくれる。公共の福祉としてだけではなく、最近は家庭で花を日常的に飾る人が増え、その需要は留まるところを知らない。近年、世界有数の「花き」の生産国となっている中国の大型市場の様子を交えながら、なぜ中国で花きが人気になっているのか、また浮き彫りなっている課題についても解説する。
中国で「花き」市場が拡大 ECの急成長で浮き彫りになった課題とは
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年7月15日
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日常に花きを取り入れる中国人
そもそも「花き」とは、観賞用の植物全般のことを指す。花物だけに限らず葉物・実物、枝物、盆栽などの鉢物、見て楽しむ植物であればすべて「花き」という。
中国では今、生活の質や美を求め花きを日常的に購入して飾っている家庭が増えている。上海市がロックダウンとなったとき、筆者が住む小区では食料などの必需品の他に、生花の団体購入が立ち上がったのだ。意外な需要に驚いたが、新型コロナウィルスの影響で様々なルールに縛られて、緊張感も高まり疲弊する人が増えれば、生活の質と心の癒しを求め人々が花きを準必需品とすることにも納得がいく。
ロックダウン中はWechatのミニプログラムだけを頼りに花きの購入をしていたが、本来は店舗で直接花きを見て購入する人も多く、店には一定数の顧客がついている。大型の有名な花き市場が数か所存在し、一般客も購入できるのが特徴だ。今回は上海市にある花き市場「上海虹橋花卉市場」に足を運んだ。
国慶節中ということもあり多くの客が花きを買い求め、店員の声で市場は活気づいていた。切り花はもちろん、小中大と様々な大きさと種類の観葉植物、苗木、野菜や花の種、日本をイメージさせる盆栽なども売られている。ここに行けば気に入った花きが必ず見つかるだろう。他にもプランターやスコップ、土なども販売している。特にガーデニング用の花きコーナーと、切り花コーナーは賑わっていた。
花き市場では生花の切り花が一番需要が高いと現地メディアは伝えている。筆者が購入した店ではバラの花束(10本)で30元(約600円)かすみ層の花束(3本)も30元と安価。日本産の花きは高品質のため中国の一定層から人気が高いが、高価で国産に比べ約3倍以上するものも少なくないという。
花屋の従業員は「今年の異常な猛暑と新型コロナウィルスの影響で花の収穫量は少し減ったが、例年通り繁盛している。切り花だとバラが人気で売れ行きは国慶節がピークだ」と教えてくれた。
中国の花き市場はECが急成長
中国の生花市場規模(事業者の売上高ベース)は既に1097億2000万元(約2兆1500億円)に達しており、2023年には1943億7000万元(3兆8100億円)まで拡大すると予想されている。
中国のギフト経済産業自体の市場規模(売上高ベース)も年々拡大している。18年の8000億元(約15兆6700億円)から21年は1兆1000億元(約21兆5000億円)と、4年で約4割増えた。22年は1兆2000億元(約23兆4000億円)に達する見通しだ。
(引用:36Kr Japan https://36kr.jp/181985/)
生花のEC市場規模は、2016年には168.8億元に過ぎなかったが、2019年には500億元を突破し、2021年には総売上高896.9億元を達成した。Eコマースの物流が便利になるにつれて、花のEコマースの市場規模は拡大を続け、2022年には1000億元を突破。2025年には1500億元に達すると予想されている。
(引用:中国商报社 https://www.zgswcn.com/article/202205/202205170942371015.html)
少し前までは花を直接店で購入する中国人が多かったが、現在ECの普及が急拡大している。Wechatのミニプログラムを活用した団体購入や、ネットスーパーの「盒馬鮮生(フーマー)」や叮咚買菜(ディンドン)でも生花や多肉植物などの花きを販売。
盒馬鮮生(フーマー)では会員なら99元以上買い物をすると、特定の商品が1つおまけとして貰える。水やジュース、パンや野菜などがあるが1本約5元(約100円)の生花もおまけ商品として選択できる。
花きのサブスクも若者を中心に人気である。手軽に購入できるようになっているが、配達の遅れや破損、写真と実物がまったく違うなどのクレームが消費者からでることも少なくない。
中国の花き市場はなぜ人気なのか?
なぜ中国で花き市場が拡大しているのか、理由はいくつかある。まず、所得が上がり自由に使えるお金が増えたことで消費の中心となる中間層が増加したこと。新型コロナウィルスの影響で人々の生活スタイルが変化し、生活の質や癒しを追求する傾向が高くなったこと。そして、政府が花き市場について政策を打ち出していることも業界を後押ししている。花き産業の発展は、都市部と農村地域の一人当たりの所得倍増の促進、社会的雇用の拡大、人々の生活の質の向上などに重要な役割を果たす。そのため、中国は花き産業の発展を実現するために、都市再生の原動力となる花き産業に関する政策を繰り返し発表していると現地メディアは伝えている。ECの普及で花きがとても身近になったことも市場規模が拡大している理由だ。
品質管理が業界の課題
花きの国内生産が拡大しているが、中国市場はまだ未成熟な段階にある。業界全体として品質管理が大きな課題だという。筆者が盒馬鮮生(フーマー)で生花を注文した際、届いた花は驚くほどしおれておりその場で配達員に返品した。また、Wechatのミニプログラムで購入した花を花瓶にいけると水がピンク色に変色した。恐らく花を着色料で染めたのではないかと思っている。筆者の周りにもネットで花を購入した友人がいるが、彼女は「安くて好みの商品だったから購入したが、写真よりも実物の花は小さくてボリュームがなく枯れている花もあった。カスタマーセンターに連絡をしたが返答がないし、もう二度とネットでは花を買いたくない」と言っていた。中国では花きの栽培などの技術はまだ発展途上で怪しい商品もある。また、果物などの食品よりも花の輸送は品質管理が難しく、消費者の期待値も高いためクレームに繋がりやすい。花きのEC市場はまだ大きな課題が残っているが、今後も業界規模は拡大すると予測され、可能性のある市場となっている。