海外マーケティング 匠への道 vol.2

ビジネスコラム

前回のコラムで海外進出において、事前リサーチを進めていく重要性について述べました。それでは事前リサーチとは具体的に、どのように進めていくべきなのでしょうか。
私自身、本稿を執筆するにあたり改めて弊社の過去実績やケーススタディをいくつか見直す中で、事前リサーチの進め方の王道のようなものが見えてきたので、この場を借りてご紹介いたします。

事前リサーチをどのように進めていくか

著者:gramマネージャー 坂井 聡佑 
公開日:2020年07月15日

事前リサーチにおいて規制情報の把握は大前提にある

海外進出に伴う事前リサーチの中には各国の市場規模推計による参入市場の評価を行う調査(市場調査)や規制情報に関する調査(規制調査)、各国の産業構造・流通構造に関する調査(産業調査)、そして顧客先・提携先・競合先となりうる企業に関する調査(企業調査)などがあります。
事前リサーチは記載したように様々な観点で行うべきですが、その中でも規制は前提として把握しておくべきです。進出に際して要求される参入規制を満たさない限りは進出自体が不可能になる上に、仮に進出基準を満たすケースでも条件によって進出後の難易度が大きく変わります。国別の進出難易度を把握する上でも、規制情報の把握は優先的に取り組むべきです。

規制調査 ~外資規制~

海外進出に伴い把握すべき規制の中では、外資規制があげられます。外資規制とは外国人または外国企業による国内企業への投資に対する規制のことを指します。外資規制は日本も例外ではなく、国家の安全や主権維持に関わる産業分野(通信、放送、航空など)において、外国人による投資が制限されています。新興国についてはローカル産業を保護するために、外資規制が特に多く存在したり、厳格であったりします。
例えば東南アジア地域において、以前は小売業について外資規制が強く掛けられていました。東南アジアでは伝統的な小売業(パパママショップなどの個人商店)がローカルの消費経済圏を支え、ローカル労働者の雇用の受け皿としても機能していました。伝統的な小売業を保護する目的で、外資系企業の参入について資本金やローカル人員の雇用人数に関して、規制が課されるケースが多くありました。外資規制は海外進出するうえで必ずクリアすべき水準であり、規制情報把握の根本にあるといえます。

セブンイレブンのインドネシア撤退から見る、外資規制以外の影響力

海外進出の際に押さえておくべき規制として、外資規制の他に業界規制や製品規制があります。製品規制の影響力の大きさがわかりやすい例としてセブンイレブンのインドネシア撤退があげられます。2017年6月にセブンイレブンがインドネシアから撤退するという衝撃的なニュースが走りました。

▶︎日本経済新聞 電子版:インドネシアのセブンに誤算、運営会社が116店閉鎖


その際に、撤退の1つの理由として挙げられたのが飲酒規制です。インドネシアでは国民の大多数が飲酒を禁じられているイスラム教徒であり、コンビニでの若者の飲酒は以前より保守層から問題視されていました。そうした声に押され、2015年4月に政府は酒類の販売禁止に踏み切りました。セブンイレブンは酒類の販売規制の影響を大きく受け、業績悪化し撤退へ進むことになってしまいました。このセブンイレブンの事例の場合は海外進出後に規制が制定され、悪影響を受けた形ではありますが、製品規制の影響力の大きさを物語っているといえます。

むすびに

海外ビジネスにおける規制の影響を見てきましたが、ビジネス自体の可否や難易度が規制に大きく左右されます。その意味でも規制の把握は重要であり、事前リサーチにおいても前提として必ず押さえるべきであるといえます。

坂井 聡佑

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gram 部長 1991年愛知県生まれ。一橋大学卒業後、2015年4月、株式会社クロス・マーケティングに入社。主に大手自動車メーカーや情報システム会社を中心...

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