海外マーケティング 匠への道 vol.3

ビジネスコラム

市場規模推計は各国でどの程度の市場が見込まれるか推定値を出すことを指し、進出国を選定する際の1つの検討材料となります。市場規模調査をどれほど厳密に行うかは各企業が置かれている状況によって大きく変わります。
今回は、海外進出における事前リサーチの中で、規制調査の次は市場規模推計に触れていきたいと思います。例によって弊社の過去支援実績を元に学んだことを中心に紹介いたします。

市場規模推計に必要となるフェルミ推定とは!?

著者:gramマネージャー 坂井 聡佑 
公開日:2020年08月5日

市場規模推計をどのように捉えるか

例えば上場企業の場合は、経営陣や株主に海外進出国に関して選定理由をロジカルかつ正確に説明する必要があるため、市場規模調査を厳密に行う必要があります。その場合は自社内で市場規模調査を完結するのが難しくなることも多々あり、外部の調査会社を活用するケースが出てきます。(弊社も同様の経緯でクライアントから市場規模調査を受託するケースが多い)
一方、中小企業で特に社長主導で海外進出を進めている場合、厳密に市場規模推計を行うこと以上に、実際に現地を視察しターゲットとなる顧客層が一定数いるかどうかの肌感の方が重要であると考えます。しかし、中小企業の場合も市場規模推計は最低限行うべきであり、本コラムでは自社内で完結して市場規模推計を行う場合の基本的な考え方をお伝えしたいと思います。(市場規模データについてはデスクリサーチで取得できるケースが増えておりますが、蓋然性を確保する意味でも自らの手で市場規模推計ができると有効です)


市場規模推計に必要となるフェルミ推定

市場規模推計を行う場合はフェルミ推定という考え方が有効です。フェルミ推定とは一見予想もつかないような数字を、論理的思考能力を頼りに概算することです。
フェルミ推定の有名な例としては「アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるか?」「日本にある電柱の数は何本か?」などがあり、コンサルティングファームの面接で採用されているメソッドとしても知られております。詳しい説明は下記をご参照いただければと思います。市場規模推計においては上記のようにマニアックな数値の算出は不要ですが、市場規模推計に必要となる基本的な考え方はフェルミ推定と同様です。

リンク:戦略ファーム内定者直伝、選考通過のためのフェルミ推定対策【例題の実況解説と NGパターン付き】

フェルミ推定

フェルミ推定を活用して、市場規模推計をする際には
①供給側からのアプローチ
②需要側からのアプローチ
の2つがメインとなります。
「供給側からのアプローチ」に関して単純なケースでいうと、自動車業界の上位3社で全体のおよそ6割をカバーしているという情報がある場合、”上位3社の売上合計÷0.6(60%)” という計算式で市場規模が算出されます。これは非常に単純なケースですが、商品やサービスを供給している側から市場規模を推計するのが1つの手段です。
「需要側からのアプローチ」に関して、同じ自動車業界の例を挙げると、消費者を都市部、都市近郊、地方などの地域セグメントに分類し、”地域セグメント別世帯数×世帯別自動車保有率×自動車購入平均金額”という算出式にそれぞれの世帯数、自動車保有率、自動車購入平均金額を調査し、数値を代入することで各セグメントの市場規模推定値を得ることができます。法人用自動車市場を別で考慮する必要があるなど注意点はありますが、需要者側からも市場規模算出が可能です。

むすびに

繰り返しになるが、市場規模推計は求められる要件、厳密さによって対応方針は大きく変わってきます。また市場規模は進出国選定の絶対的な決定要因とは言えず、1つの参考指標として捉えることが大切です。
社長主導で海外進出を進めている企業で、厳密な推計値が不要なケースは市場規模推計を自社内で進め、他分野に投資していくことも1つの選択肢です。

坂井 聡佑

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gram 部長 1991年愛知県生まれ。一橋大学卒業後、2015年4月、株式会社クロス・マーケティングに入社。主に大手自動車メーカーや情報システム会社を中心...

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