M&A: イスラエルの7,000ものスタートアップ企業が日本からの投資を待っている

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日本企業がM&A可能な企業は世界にたくさんある。日本国内では情報がきわめて限られるため、ほとんどが知られていない。そうした企業を海外情報ナビでは、紹介して行きたいと思う。

イスラエルの優れたM&A対象企業をどうやって探せばいいのか?
イスラエルのスタートアップ企業が探せるデータベースでは7,000も対象企業があり、日本からの投資を待っている。この優れた企業データベースから、日本企業にとってM&Aの対象になりうる注目企業を紹介するM&Aコラムです。

M&A: 掘り出し物のスタートアップ企業が探せるイスラエルのデータベース-Start-Up Nation Finderでは7,000のスタートアップ企業が日本からの投資を待っている

著者:gram fellow デビッド・イマ
公開日:2022年2月10日


優秀な人が多いユダヤ人と彼らの国イスラエル

イスラエルは技術が優れた国として知られている。世界中から集まって来たユダヤ人には元々優秀な人が多い。ノーベル賞受賞者の少なくとも20%はユダヤ人だと言う資料がある。

Wikipedia: List of Jewish Nobel laureates(ユダヤ人ノーベル賞受賞者のリスト): https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Jewish_Nobel_laureates

アインシュタインも生まれはユダヤ人の家系。コンピュータを発明したジョン・フォン・ノイマンもハンガリー生まれのユダヤ人だ。世界的な金融資本のロスチャイルド家もドイツ出身のユダヤ人の家系だった。ユダヤ人は歴史的民族的な背景により、世界中に離散して生き延びて来て、第二次世界大戦中にナチスのホロコーストを経験。戦後1948年にイスラエル国を建国し、離散していたユダヤ人が世界各国から集まった。イスラエルは優秀なユダヤ人が世界中から集まってできた国だと言える。

現在の人口は約930万人。首都はエルサレムだが、最大の都市は国際空港のあるテルアビブであり、そこに商業機能が集中している。投資対象となる企業のほとんどもテルアビブに集中していると考えて間違いない。

筆者は仮想通貨事業を構想し、2018年に世界各国で支援者や技術者を探して歩いた。テルアビブにも滞在し、ベンチャーファンドを回ろうとしたことがある(ちょうど春祭りプリムの時期でオフィスが閉まっていた)。滞在してみて、非常に気持ちのいい都市だと感じた。 都心部にはカフェがたくさんあって中東のパリのようであり、旧市街にはアラビアンナイトに出てくるような街並みがある。食べ物は美味しく、物価は為替レートを反映して、東京よりは高いがロンドンほどではない。

イスラエルの防空システム「アイアンドーム」

イスラエルの技術力の高さを示す典型例に、隣国から飛来するミサイルを迎撃する防空システム「アイアンドーム」(Iron Dome)がある。著名な軍事企業Rafael Advanced Defense Systems社とイスラエル国防軍が共同開発した。

2021年半ばにはイスラエル空軍がパレスチナのハマス拠点を空爆する状況が世界中で報道された。背景には、ハマスが数十kmの距離から毎日のようにイスラエル国内に打ち込む、一日あたり数十発のロケット砲攻撃があった。防空システム・アイアンドームはこの9割を正確に捕捉し、空中で破壊した。夜間アイアンドームから出た迎撃ミサイルがハマスのロケット砲を破壊する様を動画でご覧になった方も少なくないと思う(以下のYouTube動画参照)。

Insider: Israel’s Iron Dome has blocked some 90% of rockets fired by Hamas, limiting the impact of one of its biggest barrages:https://www.businessinsider.com/israel-iron-dome-blocks-90-percent-rockets-hamas-gaza-2021-5

Tel Aviv: Iron Dome filmed intercepting barrage of rockets over Israel

アイアンドームはイスラエルの技術の粋だと言って過言ではない。同国は隣国シリアなどにいる敵対勢力に囲まれており、ロケット砲やミサイルから国民や資産を守ることは死活問題だ。そこでRafael社とイスラエル国防軍とが共同で防空システムを開発した。

構成は以下のように、BMC(Battle Management & Control)指揮ユニット、ELTA EL/M-2084 MMR(multi-mission radar)レーダー装置、レーダーコントロールユニットのシェルターハウス、タミルミサイル本体、20発(5列4段)搭載のミサイルランチャーの5つの要素から成る(出典はWikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)。

BMC(Battle Management & Control)指揮ユニット
ELTA EL/M-2084 MMR(multi-mission radar)レーダー装置
 
レーダーコントロールユニットのシェルターハウス
タミルミサイル本体
20発(5列4段)搭載のミサイルランチャー

これらの要素で構成されるアイアンドームは、ハマスのロケット砲を撃ち落とす処理を瞬時に行っており、文字通り世界最高水準の防空システムだと言ってよい。敵ミサイル航路のシミュレーション能力、ミサイルの自動照準追尾機能、瞬発性が求められるミサイル発射機構のいずれもが極めて高い水準にあり、それがシステムとしてまとまっている。実に驚くべきシステムだ。

M&A対象企業を探す際にだんだんとわかってくるイスラエルの大きな優位性は、こうした国防に関わる技術の高さが民生分野にも及んでいるという図式にある。同国の人口は1,000万人にも満たない。そうした小国でありながら、アイアンドームに見る世界最高水準の防空システムを具現化しており、技術力の高い人材が国中にあふれている様が窺える。

IT分野でも強さが目立つイスラエル

IT分野でもイスラエルの技術力の高さは群を抜く。というのも、イスラエル国防軍でシミュレーション技術や暗号技術などを実戦レベルで鍛えた技術者が、民生分野に転出してスタートアップを始める例が多々あるからだ。

例はよくないが、同国のモバイル端末企業が開発したソフトウェア技術により、西側各国の政治家やジャーナリストの通話が漏れていた事案が昨年発生した。ドイツのメルケル首相の通話も盗聴されていた。

M&Aの典型的な事例には、2013年のMazeがある。この会社はスマホの位置センサーを活用して、自家用車がどこを走っているかを記録し、サーバーに上げることで、多数の自家用車が地図情報のどこにいるかを瞬時に把握するサービスを具体化した。簡単に言えば、現在の混雑状況が地図システムで表示できる。このMazeをGoogleが13億ドル(約1,490億円)で買収した。買収当時は確か数十名の企業だった記憶がある。

現在、米国とイスラエルとの間で発生するM&A案件(ほとんどは米国企業によるイスラエル企業の買収)は、2017-2018年に16件だったものが2年後の2019-2020年には27件に大きく増加している。

2017-2020年の分野別M&AではAI関連企業が一番多く11件。続いてSaaS、モバイル、エンタープライズソフトウェア、サイバーセキュリティが各9件となっている。

CTech: US-Israel M&A getting stronger and expected to continue: https://www.calcalistech.com/ctech/articles/0,7340,L-3837402,00.html

イスラエルのM&A対象企業の探し方

こうしたイスラエルの優れたM&A対象企業をどうやって探せばいいのか?
先日たまたまStart-Up Nation Centralというイスラエルのスタートアップ企業7,000社を、様々な基準でスクリーニングして調べることができる優れた情報源を見つけた。

Start-Up Nation Central: https://finder.startupnationcentral.org/

ここはイスラエルのスタートアップ企業数千社が探せるだけでなく、イスラエル国内のベンチャーキャピタルや、米国などからイスラエルに行って拠点を構えている投資家も探すことができる。例えば、2017年以降に海外からイスラエルに進出した投資家(そのほとんどは商都テルアビブにオフィスを構える)は65社もある。サイト全体では700社の投資家が色々な基準で探し出せる。

M&Aの対象になる7,000社あまりのスタートアップは、複数の角度からスクリーニングが可能だ。例えば、コアテクノロジーのセグメント別検索では、以下のように13セグメント(コアテクノロジー種類)、80あまりのサブセグメントで対象企業を検索できる。

  1. 1. Artificial Intelligence
    Chatbots
    Computer Vision
    Deep Learning
    Image Recognition
    Machine Learning
    Natural Language Processing
    Voice & Speech Recognition
  2. 2. Biologicals
    Cells
    Genes
    Herbals
    Microorganisms
    Molecules
  3. 3. Communications
    5G
    Bluetooth
    Fiber Optics
    IOT
    LTE
    RFID
    Radio Frequency
    Satellites
    VOIP
    Wireless
  4. 4. Components
    Fixed
    Modular
  5. 5. Cryptography
    Encryption
    Tokenization
  6. 6. Data Storage
    CDN
    DLT & Blockchain
    Edge Computing
    Flash
    P2P
  7. 7. Machinery & Robotics
    3D Printing & Additive Manufacturing
    AGVs
    Anti-Drone
    Assistive Bot
    Cobots
    Drones
    Exoskeleton
    Industrial Robots
    Processing Machinery
  8. 8. Materials & Substances
    Adhesive
    Alloys
    Composites
    Implants
    Insulation
    Nanomaterials
    Nonwoven Fabric
    Polymers
    Raw Materials
    Silicon
  9. 9. Platforms & Interfaces
    API
    Mobile
    Plug-in
    Search Engine
    Software
    Web
  10. 10. Quantum Computing
  11. 11. Semiconductors & Electronics
    Chipsets
    Digital Signal Processing
    Printed Circuit Board
    System-on-a-chip
    Wearables
  12. 12. Sensing
    Acoustics
    Biometrics
    Chromatics & Light
    Electro-Magnetic
    Geolocation
    Infrared
    LIDAR
    Laser
    Motion
    NFC
    Optic
    Radar
    SWIR
    Scent
    Vibration
  13. 13. Simulation & Imaging
    Augmented Reality
    Digital Twin
    Synthetic Data
    Ultrasound
    Virtual Reality

次回以降の記事では、このすばらしい企業データベースから、日本企業にとってM&Aの対象になりうる注目企業を紹介していくことにしたい。

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