中国で日本製の釣具が人気!若年層に広がる釣りブーム

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中国では釣りがレジャースポーツとして人気が上がっている。釣り人口は年々増加し若い消費者が増え、球技や水泳、自転車など他のスポーツよりも遥かに早いペースで売上が伸びていると現地メディアが述べた。今年の「6.18」でも釣り具の人気は凄まじく、日本ブランドの高級リールが即完売。当記事では中国で注目されている釣り市場について紹介する。

中国で日本製の釣具が人気 若年層に広がる釣りブーム

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年7月15日

中国で釣り人気高まる

「一時間、幸せになりたかったら酒をのみなさい」
「三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい」
「八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい」
「永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい」
この言葉は中国の古いことわざだ。日本の釣り雑誌で紹介されたこともあり、釣り好きなら一度は聞いたことがあるかもしれない。現在、中国には54万近くの釣り具関連企業があり、釣り人口は1億人を超えるという。釣りは人気の趣味として中高年だけではなく、若い世代の心をも掴んできている。

(出典:抖音)

中国のSNSで「钓鱼」と調べると、釣りへの中国人の興味・関心の高さが投稿への反響の大きさから伺える。釣りをしながらネットユーザーとチャットを楽しむライブ配信や、バラエティー番組では有名人をゲストに迎え、SNSではアイドルなど芸能人が釣りを趣味として紹介したりしている。ライブ配信やテレビ、SNSを見て影響を受けた多くの若者やファンが、自らも体験してSNSに投稿することで釣りがどんどん広まっているのだ。

上海市にある釣り堀施設。1人あたりの料金は約30元。(出典:大众点评)

中国では川や湖で釣りをする人が多く、海釣りは富裕層の間で人気だ。釣り人口の約8割が淡水魚釣り、海水魚釣りは2割と現地メディアが報じている。海釣りよりも川釣りをする人が多いのは、中国の地形とコストの問題があるためと考えられる。また、中国人が普段食べる魚が、海で釣れる魚ではなく淡水魚であることも理由の1つだろう。
釣り大会も頻繁に開催され、日本でいう釣り堀もある。釣りは、コロナ禍でもパーソナルスペースを安全に保てる中国人の人気の遊びの1つとなっている。

若年化する釣り市場

釣りは今や中高年の専売特許ではなく、トレンドに敏感な「90後」がレジャーや社交といった要素を持ち込んだ。調査会社ニールセンのデータによれば、2020年の中国レジャー釣り市場の規模は1100億元(1元は約17.8円)を突破した。Z世代(1995年代後半から2009年生まれの世代)と町に住む若者が釣具の「手切り族(ネット通販で過剰な衝動買いをしてしまう人々)」になって、Z世代のオンラインによる釣具購入額が急速に伸びている。
(引用:人民网 http://j.people.com.cn/n3/2021/1020/c94476-9909445.html

2022年6月までの12ヶ月間で、1995年以降生まれの300万人もの消費者が、タオバオとTmallで釣り具を購入した。今年の6.18第1弾(5月31日20時~6月3日23時59分)で、釣り具の売上は前年同期比で50%近く増加している。高級釣り具は88VIP会員に好まれる商品で、このカテゴリーの多くのリールも飛ぶように売れた。日本の高級釣り具ブランドDAIWAの新製品「2022 EXIST LTリール」は5,000元(約10万円)以上するが、発売と同時に売り切れてしまった。
(引用:アリババニュース https://jp.alibabanews.com/2022618_key_trends/

京東で購入できるDAIWAの釣り竿(出典:京東 https://bit.ly/3ul9eM8  

中国シェアNo.1とNo.2を誇るECサイト「天猫」と「京東」で釣り道具を検索すると、シマノやダイワなどの日本ブランドの人気が高い。釣り竿が柔らかくしなる、非常に軽量ながら丈夫という品質の高さを評価する口コミばかりであった。(筆者調べ)

若者に流行った理由は?

中高年がハマるイメージの強い釣りが、なぜこれほどまでに若者の人気を集めているのか。現地メディアは若年層が釣りにハマる大きな理由の1つは「ブラインドボックス」を開けるときのような、未知の世界にあると述べている。ブラインドボックスとは、箱を開けるまで何が入っているのかわからない中国版ガチャガチャのことである。その販売手法は消費者の購入意欲を高め、中国で大ブームが巻き起こった。釣りもブラインドボックスと同じで、釣り針の先にどの魚が繋がっているのかわからないロマンがあるレジャースポーツなのだ。

釣り好きの友人(男性・20代)は「一匹の魚を釣るために試行錯誤をして、やっと魚と出会えたときは感動すら覚える。また新しい魚と巡り合うため釣り道具を新調、カスタマイズする。工夫しているうちに釣り中毒になってしまい寝ても覚めても釣りのことばかり考えている」と話してくれた。彼にとって釣りとは人生を豊かにする最高の趣味で、釣り道具はいくつ購入しても足りないくらい「沼」と化している。釣り市場は小さな釣り針1つで大きな産業を成し遂げているといっても過言ではないだろう。

まとめ

初心者に需要がある釣りセット155元(出典:京東 https://bit.ly/3Rbyezh

若年層の新規顧客の囲い込みに、各企業も余念がない。釣りを始めるために釣竿、針、リール、糸、ルアー、餌、網やバケツ、椅子、帽子や服などの釣り具や小道具、装備品が必要で、約1000元以上(約20,000円)の費用がかかる。(筆者調べ)しかし、初心者向けに気軽に釣りを始めることができる「釣りセット」を比較的安価で購入している初心者は多い。

中国では幅広い価格帯の模造品が出回り、品質にもバラつきがある。日本や欧米と比較すると中国の釣り市場はまだ未成熟な段階だが、今後も消費者の需要は高まり企業の新規参入もより激化することが予測される。拡大していく中国の釣り市場での、品質の高い日本ブランドの発展に今後も期待したい。

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