プロが教えるソーシャルリスニングの基本 使い方編その①:同じカテゴリー内の商品との比較
ソーシャルリスニングの重要性は「自然に発言した消費者の声を傾聴(リスニング)する」点にあることを前回の記事で述べた。
今回は、そのソーシャルリスニングを使ってどんなことができるのか、事例を紹介してみたい。
ソーシャルリスニングの使い方編その①:同じカテゴリー内の商品との比較
著者:gram 福田 さやか
公開日:2021年4月1日
同じカテゴリー内の商品との比較
まず今回ご紹介するのは、「同じカテゴリー内の商品との比較」である。
同じ商品カテゴリーの中で、売上が主要上位数社で占められている、という場合は多い。例えば、航空会社ではJALとANA、ビールメーカーならキリン、アサヒ、サントリー、サッポロ、チョコレート菓子なら、明治、ロッテ、森永、江崎グリコといった具合である。
こうした同じカテゴリー内の別のメーカーについて比較調査することがソーシャルリスニングの1つの使い方としてある。要は、「自社ブランドと競合ブランド」の調査である。
ステップ1:ブランド間の発言数推移をみる
では、比較をするときに何を見ればいいのか。
まずは、自社ブランドXと競合ブランドYの発言数推移である。
以下は単なる例であるので、縦軸、横軸を隠しているが、例えばこのようにブランドX(赤)とブランドY(青)の発言数が推移したとする。
そうすると、概ね自社商品Xが優勢だが、ブランドYに抜かれているタイミングも存在することが分かる。 この時、ブランドYについてはどのような層がどのように発言しているのか、それにはY社のキャンペーンが影響しているのか否かなどを調べることで、自社商品Xへの発言数が相対的に落ち込んでいる部分の分析ができる。
ステップ2:頻出単語の分析
次に、頻出単語の分析である。
自社ブランドXと競合ブランドYの頻出単語を比較し、消費者に訴求できている機能や特徴において、XとYに共通のものについては、XやYのブランドそのものだけでなく、その商品群が持っている機能や特性であるといえ、独自性にはつながらない。一方で、Xについてだけで語られている機能や特徴、Yについてだけで語られている機能や特徴は、そのブランド特有のイメージということがいえる。
このようにして、XとYのブランドはそれぞれ消費者からどのように評価されており、どうして購入されており、支持されているのかを比較することで、XとYのブランドの個性を特定することができる。
ステップ3:ブランドのコアファンの分析
更に、ブランドのコアファンについても分析ができる。
Xのブランドのコアなファンを見つけ、そのファンの「ペルソナ」(消費者のプロフィール、人となり)を複数人分析することにより、それぞれのブランドの支持者のイメージを見つけ、比較することができる。
これにより、ファンは何歳くらいの性別は何で、どんな職業でどんなことが好きで、どのようなシーンでX(ないしY)を購入しているのかを分析できれば、今逃しているターゲットはいないのか、あるいは、ブランドの新ラインナップを出すときに、どのような層を意識すればいいのかなどが明らかになる。
その際に、競合ブランドのコアファンにも届くにはどうすればいいのか、あるいは、競合ブランドとの差別化を図るには、どういうイメージを付ければいいのかなどが明らかになるだろう。
最後に
以上のように、単に自社ブランドを分析するだけではなく、競合ブランドとの比較で分かることは数多い。
ソーシャルリスニングでより選ばれるブランドになるための戦略を描くことができる。この分析は一定期間内だけでなく、継続的に行うことで、自社ブランドの差別化を行う上でより効果が出るだろう。