英語熟達度アジア首位 マレーシア

マレーシア

「マレーシアがアジアで最も英語熟達度が高い国になった」

これは一見すると語学の話題に思えます。でも実際は、教育・社会構造・地域戦略が交差した結果だと強く実感できます。ここで問われているのは、英語がどのように社会に埋め込まれているかという、もっと深い問題なのです。

今回は「英語」という面からマレーシアを解説していこうと思います。

(引用元:マレーシア 英語能力指数でアジア3位を維持 │ マレーシア総合情報メディアMTown(エムタウン)
https://www.mtown.my/news/politics/20231201-001

英語熟達度アジア首位 マレーシア 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年02月16日

英語が「科目」か「道具」か

マレーシアと日本の英語教育を比べると、決定的な違いがあります。

それは、英語を何として扱ってきたかです。日本では長く、英語は”試験科目”でした。正確さ、文法、減点されないことが重視され、使う前に評価される言語として教えられてきました。

一方マレーシアでの英語は、”早い段階から使わなければ回らない道具”でした。多民族国家という前提がある以上、英語は上手いかどうか以前に、通じるかが問われます。多少間違ってもいい、訛りがあってもいい。まず伝える。その姿勢が社会全体に共有されています。

日本人が感じる「英語は話せない」の正体

日本人は英語学習時間が長いです。それでも「話せない」と感じる人が多いのは事実です。

理由は明確で、「間違えること=恥ずかしい」という文化的ブレーキが、学習の最終段階で作動するからだとよく言われています。

マレーシアでは逆で、間違えながら修正するのが普通です。完璧さより、場を前に進めることが優先されます。

この違いは教育制度というより、社会全体の言葉との距離感の違いと言えるでしょう。

ASEANの中でのマレーシアの立ち位置

ASEANを俯瞰すると、英語力は国ごとにばらつきがあります。シンガポールは別格としても、フィリピン、マレーシア、ベトナム、タイでは英語の役割が異なります。その中でマレーシアは、英語ができるだけでなく、英語で調整できる国です。

立場や価値観の違う人々の間で英語を使って折り合いをつける経験値が非常に高いのです。これはASEANが一体として機能するうえで、非常に大きな強みとなっています。

経済ハブとしての言語力

英語熟達度の向上は、結果であると同時に戦略でもあるでしょう。

外資系企業、IT、BPO、教育、医療。マレーシアが”英語で安心して仕事ができる国”と認識されることで、人も資本も集まって来ています。ASEANの中で価格競争ではなく、調整力と信頼で存在感を出しているのが今のマレーシアなのです。

語学力は、国の成熟度を映す

英語力首位というニュースは、単なる順位の話ではありません。多様性をどう扱ってきたか、教育をどう現実と接続させたか、地域の中でどう振る舞おうとしているか。それらが静かに数値化された結果だと思います。そしてASEANにおいて、マレーシアの役割は今後さらに重くなると予想できます。この点で日本が学べる点は多いはずです。

日本の現在地と、マレーシアが示す一つの答え

日本はいま、英語教育改革を何度も掲げながらも決定打を見いだせずにいます。制度は動いているが、「英語を何のために使うのか」という根本の問いは、未だ共有されきっていないと感じられます。一方、マレーシアでは英語は誇示する能力ではなく社会を動かすための前提条件なので、完璧さよりも機能性、正確さよりも合意形成が重視されました。

ここで重要なのは、マレーシアが英語が得意な国だから成功したのではない、という点です。マレーシアは、異質性の中で”言語を使い倒す社会”になったのです。

日本がこれから英語教育を考えるとき、マレーシアの姿はひとつのヒントになる。今回のニュースでそう感じました。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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