「越境ソーシャルリスニング」はこれからの海外マーケティングのスタンダードとなる!(2)

ソーシャルリスニング

企業マーケターにとって絶対的スタンダードとなっていくマーケティング施策「ソーシャルリスニング」。SNSから読み取った市場構成者の真実の姿は、商品の販売促進キャンペーンに活用することもできるし、次世代の新商品を開発する際にも活用できる。
越境ソーシャルリスニングを使うことで日本にいると全くわからない海外の消費者の生の姿を捉えることや、海外にある潜在的な市場をサウンディングすることもできる。

著者:gramマネージャー 今泉 大輔 
公開日:2021年2月10日

SNS時代のマーケティング施策「越境ソーシャルリスニング」解説まとめ

越境ソーシャルリスニングの実際(2)

越境ソーシャルリスニングでは、海外にある潜在的な市場をサウンディングすることもできる。例えば、海外で食べられている日本の和牛(国産)、およびWAGYU(主にオーストラリア産)について。ソーシャルリスニングで得られた情報を元にまとめた記事が2020年7月に掲出したこちら。

海外で広く食べられている「ワギュー・ビーフ」▼

この記事を書くきっかけは、2018年に半年ほど英国、米国、ハンガリーなどを旅行して回った際に、特に英国ロンドンのパブでWAGYUのハンバーガーを何度か見たことである。
その時、得た知見は以下である。

・英国のWAGYUが使ってあるハンバーガーは、普通のハンバーガーの2倍の値段である。
・WAGYUの説明として、「特別な味覚があり、高級食材である」ということが記してあった。

この時「日本の和牛が英国でも食べられているのか。すばらしいな」という思いを持った。しかし、後日、ソーシャルリスニングやインターネットリサーチでしっかりと確かめてみると、英国で食べられているWAGYUは、かなりの確度で日本産ではないということがわかってきた。世界で最もWAGYUビーフを輸出しているのはオーストラリアなのである。また米国でもWAGYUを育成している大きな牧場がある。それらについては上の記事で書いた。

ソーシャルリスニングを使えば、日本にいると全くわからない海外の消費者の生の姿がわかってくる。WAGYUというキーワードを使えば、ロンドンでWAGYUメニューを出している目ぼしいレストラン数件をピックアップするとか、その価格帯を調べるとか、どういうセグメントが食べているかを確認するといったことは、すぐにできる。
またそれと従来型のインターネットリサーチを組み合わせれば、ロンドンで出されているWAGYUの出荷国を大まかに、あるいはかなりの精度をもって特定することもできる。どんどん掘り下げていけば、ロンドンでWAGYUを飲食店に卸している卸売業者を特定することも可能だ。

このように越境ソーシャルリスニングは、その国の市場のあり方を知る際のとっかかりになる。

海外に広がる「もちアイスクリーム」

日本で言う「雪見だいふく」(バニラアイスをもちで包んだアイスクリーム)が海外の複数の国で人気だということも、ソーシャルリスニングを使えばよく見えてくる。海外では、日本人が気づきにくい日本の商品のある特性が受け入れられ、ブームになることがある。雪見だいふく、一般名詞ではもちアイスクリーム(Mochi Ice cream)はその一例である。

米国ではもちアイスクリームは高級なお菓子である。一般的なスーパーで売っているお菓子の価格水準からすると、かなり高めである。それに関して、筆者が以前に作成した資料では、次のように述べている。

米国のSNS投稿では、「もちアイスクリームは値段が高い」ということを複数の人が言っています。
米国の代表的なブランドBuddiesは8個入りパックが10.39ドル。Whole Foodsチェーンで販売されているMy/Moが6個入り4.59ドル。おおむね1個1ドル前後。米国のスーパーでは1.3kg入りの大型アイスクリームパックが5ドル程度で売られていますから、小ぶりのもちアイスクリームが1個1ドルでは確かに高いです。

Twitterでは「3.29ドルも払って損した。もちアイスクリームは絶対に試しちゃダメよ」という女性のツイートも見られました。

米国では、単価が高いもちアイスクリームをたくさん食べるために、自宅で米粉を使ってもちの生地を作り、バニラアイスなどを包んで自作するノウハウが流通している。書籍もあり、YouTuberのYouTube動画もある。ここでわかることは、米粉(Rice flour)が米国のスーパーで普通に売られているということである。

こうしたもちアイスクリームの米国における広がりがわかると、適合する商品を持つ日本のメーカーは様々な打ち手があるのではないだろうか?

もちアイスクリームが食べられているのは米国だけではない。タイには専門店があり、インドネシアでは新製品が市場に投入されている。ロンドンの和食チェーンWagamamaでは、もちアイスクリームがメニューに加わった時期がある。

海外における日本酒人気

WAGYU、Mochi ice creamに似た現象に、海外における日本酒の人気がある。ロンドンに滞在していた時、中の上クラスの都心の中華レストランに入って、高級メニューであるラーメンを頼もうと考えた。その時に日本酒メジャーブランドの300mlボトルがあるのを見つけて、試しにと思って一緒に頼んだ。日本で以前飲んだ時のそのブランドの味がした。

「獺祭」が海外で広く飲まれていることはよく知られている。英語のDassaiは、複数のソーシャルメディアで多くの投稿が見られる、いわばSNS頻出日本ブランドだ。細かく掘り下げていけば、Dassaiの飲まれ方から多数のマーケティング的に有意な知見が得られるだろう。

海外ソーシャルリスニングの使い方

こうした日本食品にまつわる諸現象。それを海外ソーシャルリスニングで把握していくには、どうしたらいいのだろうか?

マーケティング的に有意な日本製品に関する諸現象をソーシャルリスニングで把握するには、一にも二にも、適正なキーワードの設定が不可欠である。
上のケースでは、”WAGYU”という言葉を知っていることで、WAGYUにまつわる諸現象がソーシャルメディアから抽出できる。”Mochi ice cream”という英語の言葉がわかっていることで、InstagramやTwitterでそれに関する投稿を拾うことができる。つまり、既知のキーワードが必要だ。

しかし、日本にいるマーケティング担当者には、そうした既知のキーワードがないケースが多い。海外に行って、しばらくその都市に滞在してフィールドワーク的な行動を取れば、現地の消費者の動きが色々と拾えるのだが、それができない現在では、有意なキーワードが手元にないケースが多い。

キーワードがない時に、何ができるか?

次回の記事では、その点も含めて、海外ソーシャルリスニングの現実的なやり方を見ていきたい。

企業マーケターにとって絶対的スタンダードとなっていくマーケティング施策
「ソーシャルリスニング」はこれからのマーケティングのスタンダードとなる!(3)へ続く

ソーシャルリスニング」はこれからのマーケティングのスタンダードとなる!(3)へ続く SNS時代のマーケティング施策「越境ソーシャルリスニング」解説まとめ ソーシャルリスニングに関するお問い合わせはこちら Photography by Andrea Piacquadio

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