マレーシアEV販売、前年比286%増の急伸要因に迫る
マレーシアのEV(電気自動車)販売台数が前年比286.1%増と急伸している。政府によるEV優遇策と手頃な価格帯のモデル投入がけん引役だ。マレーシアはEV関連の製造・販売拠点として有利な条件を備えており、アジアのEVハブを目指す。税制優遇のほか、充電インフラの大幅拡充を進める。
中国EVメーカー傘下の現地ブランドが低価格車で中流層に浸透。テスラの正式参入も発表され、さらなる競争が予想される。
マレーシアは産業基盤の整備、優れた物流立地、質の高い人材確保など、多くの強みを持つ。
マレーシアEV販売、前年比286%増の急伸要因に迫る
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年4月25日
前年比286.1%増
EV販売台数の1万159台は前年比286.1%の増加で、わずか274台だった2021年に比べて36.5倍にもなります。
販売台数が急増した理由としては、政府がEVを優遇する政策を講じていることに加え、手頃な価格のEVモデルが出始めて消費者の関心が高まっていることがあげられます。
政府がEV普及を後押し
EVを普及させるためにマレーシア政府はまざまな優遇策を実施しています。
完成車の輸入に対し、2025年末まで輸入税と物品税、さらに道路税を免除をしています。
また、EVの充電所の整備についても優遇措置を設け、2023年10月の時点で1434ヶ所だった充電所設備を、2025年までに少なくとも1万ヶ所設置することを目指しています。
この優遇策により、2030年までに自動車販売台数の15%をEV車とハイブリッド車にすることを目標に掲げています。
テスラも正式進出
マレーシアに進出済みのメーカーとしては、BMW、MINI、日産、ルノー、ORA、ヒュンダイ、起亜、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲン、ボルボ、BYD、アウディ、ロータスなど多数あります。
現在マレーシアで販売されているEVの中で最も安価なのは「Neta V」 で、小売価格は RM99,800(約315万円) です。
2023年10月には、米国のEV大手テスラがマレーシアへの正式進出を発表しました。サイバージャヤで採用面接を実施し、数千人がカスタマーサービスや販売アドバイザーなどに応募したことが報じられ、一時ネットが非常に盛り上がりました。
クリーンエネルギー産業を強化
マレーシア政府は、炭素の排出を実質ゼロにする目標を、早ければ2050年までにの達成するために、取り組みを強化しています。
東南アジアではマレーシアだけでなく、インドネシアやベトナム、タイなどの各国がEVやハイブリッド車など、次世代自動車の域内ハブとなることを目指しており、しのぎを削っています。
政府は他国を先行するためにEV振興を急いでいます。
EVの販売台数の傾向
2024年はさらに多くのEV車が販売されると予想され、その数は19,000台から20,000台に達するとみられています。
自動車販売総数に占めるEVの割合は、2022年にはわずか0.4%でしたが、2023年には1.3%に増加、2024年にはさらに急伸すると予測されています。
中国のBYD がマレーシアへの初進出からわずか 9ヶ月で、2023年の国内EV市場全体の 37% を占めました。低価格のEVの販売がマレーシアの中流層に歓迎され、EVの普及を主導したと考えられています。
マレーシアは優位な立場
マレーシアは他のアジアの国々よりもEVの製造や販売で優位に立っているとされています。
紹介したような政府の強力な支援のほかに、自動車産業において産業基盤がしっかりと整備されているのは大きな強みになっています。特に国内メーカーであるプロトンやプロドゥアは、全土にサービス拠点を持ち、海外メーカーと比較しても自動車部品や技術の供給網が整っているため、大きなアドバンテージを持っています。
マレーシアはアジア地域における物流の中心地であり、近隣のアジア市場へのアクセスが容易で、他国よりも効率的な供給チェーンを確立できます。
さらに、教育水準の高い労働力を有していて、技術者やエンジニアなどの専門家の供給が比較的容易でです。これにより、高度なEV技術の開発や製造が可能であることがマレーシアの強みになっています。