フィリピンの3大配車アプリ「Grab」「InDrive」「Green GSM」徹底比較

経済成長著しいフィリピンですが、マニラ首都圏の交通渋滞はアジア最悪レベルで、移動には多大な時間とストレスを要します。公共交通機関には鉄道やバス、ジプニー(フィリピンの乗合タクシー)等がありますが、スリやぼったくりといった治安・不透明な料金体系への不安が拭えません。
そのため、安全・快適で明朗会計な配車アプリは、外国人やビジネスパーソンにとって不可欠なインフラとなっています。現在、市場では圧倒的シェアを誇る「Grab」に加え、「inDrive」や「Green GSM」が台頭し、激しいシェア争いを展開中。本記事ではこれら3社の特徴や価格、メリット・デメリットを徹底比較します。
フィリピンの3大配車アプリ「Grab」「InDrive」「Green GSM」徹底比較
著者:フィリピンgramフェロー たこ坊
公開日:2026年 03月27日
圧倒的な信頼と利便性を誇る絶対王者「Grab」
東南アジア全域で配車サービスの代名詞となっているのが「Grab」です。フィリピンにおいても最も普及しており、空港からの移動から日常の足まで、多くのビジネスパーソンが第一の選択肢として利用しています。

【ユーザー・ドライバー数】
Grabのフィリピンにおけるユーザー数は、全体の東南アジアユーザー(2025年に年間1億2900万人、月間約4700万人)に含まれるものの国別詳細は非公開です。フィリピン全体の正確なドライバー数に関しても特に明示されてはいませんが、2024年の報道ではクリスマス需要に対応するため「追加で5,000台分のドライバーを増やしたい」「2019年時点で5,000〜10,000台規模の車両数に近づきつつある」と言及されています。
(引用元:philstar GLOBAL │ Grab eyes holiday fleet of 5,000 more drivers
https://www.philstar.com/nation/2024/09/26/2388004/grab-eyes-holiday-fleet-5000-more-drivers)
(引用元:DailyTribune │ Grab driver shortage confirmed ahead of Christmas season
https://tribune.net.ph/2024/11/11/grab-driver-shortage-confirmed-ahead-of-christmas-season)
【特徴と価格帯】
事前にアプリ上で出発地と目的地を設定することで自動的に運賃が計算・表示されるため、ドライバーと面倒な価格交渉をする必要がありません。一方で、料金水準は一般的なタクシーや他社の配車アプリと比較するとやや高めに設定されています。また、需要と供給のバランスによって料金が変動するダイナミックプライシング(サージプライシング)を採用しているため、通勤ラッシュ時やスコール(豪雨)の際には通常時の数倍の料金に跳ね上がることもある点には要注意です。
【ドライバーの給与帯と質】
Grabのドライバーは基本的に個人事業主(ギグワーカー)としてプラットフォームに登録し、乗車ごとに歩合制(コミッション)で収入を得ています。Grabでは乗客が降車後にドライバーを5段階で評価するシステムが確立されており、この評価がドライバーのインセンティブや今後の配車優先度に直結します。そのためドライバーは総じて丁寧で、車両も清潔に保たれているなど高いサービス品質が担保されています。具体的な給与額について、現地メディアでは次のように紹介されています。
1時間あたり約400ペソの売上、12時間走って日売上約4,800ペソ、そこから経費を引くと純利益は1日約635ペソ
(引用元:VISOR │ The sad numbers behind a Grab driver’s income
https://visor.ph/traffic/the-sad-numbers-behind-a-grab-driver-income/)
平均運賃150ペソ、1日10件・週6日稼働で月売上約36,000ペソ、燃料や通信費などを差し引いた純利益はオーナードライバーで月約21,680ペソ
(引用元:PHILKOTSE.com │ How much can you earn per month as a Grab/Uber driver in the Philippines?
https://philkotse.com/safe-driving/how-much-can-you-earn-per-month-as-a-grabuber-driver-in-the-philippines-414)
【メリット・デメリット】
最大のメリットは、圧倒的な配車スピードとキャッシュレスの利便性です。クレジットカードやデビットカード、独自ウォレットの「GrabPay」を登録しておけば、車内での現金のやり取りは一切不要です。さらに領収書もメールで自動送信されるため、経費精算もスムーズです。
一方、デメリットとしてはやはり料金の高さが挙げられます。また、ごく稀にですが有料道路の通行料などを乗車後にアプリ上でドライバーが手入力して決済する仕組みを悪用し、過剰な金額を上乗せ請求されるといったトラブルも発生しているため、利用後の明細チェックが推奨されます。
低手数料モデルで市場に切り込む「inDrive」
アメリカ・カリフォルニア州に本社を置く「inDrive」は、現在フィリピンで利用者を急激に伸ばしている新興アプリです。

【ユーザー・ドライバー数】
inDriveは2025年にフィリピンで乗客数が前年比7倍、乗車回数が8倍に増加し、アクティブドライバーは1万6000人に達しました。 フィリピン国内でのアプリダウンロード数は400万超で、アクティブユーザーの絶対数は非公開ですが、急拡大中です。
(引用元:NEWSBYTES.PH │ inDrive posts 8x ride surge as PH becomes fast-growth market in 2025
https://newsbytes.ph/2025/11/17/indrive-posts-8x-ride-surge-as-ph-becomes-fast-growth-market-in-2025/)
(引用元:AUTOCAR PHILIPPINES │ InDrive is the 4th most in-demand travel app in 2025
https://autocar.com.ph/indrive-is-the-4th-most-in-demand-travel-app-in-2025/)
【特徴と価格帯】
本来、inDriveは乗客とドライバーが直接運賃を交渉できる独自のシステムが売りです。しかしフィリピンにおいては、2024年1月、陸上交通フランチャイズ規制委員会(LTFRB)が「運賃交渉の仕組みが規定に違反する」として一時的に事業を停止させました。その後、LTFRBが定める料金体系に準拠することを受け入れ、同年6月にサービスを再開しています。そのため現在はGrabと同様に自動で料金が提示される仕組みとなっていますが、全体としてGrabよりも安価な価格帯で利用できるケースが多くなっています。
【ドライバーの給与帯と質】
inDriveが急速にシェアを伸ばしている背景には、ドライバーに対する手数料の低さがあります。プラットフォーム側が徴収する手数料は乗車運賃のわずか10〜12.99%に抑えられています。さらに、地図データ収集プロジェクトに参加すると、通常の乗車収入とは別に月最大18,000ペソを追加で稼げると報じられています。これによりドライバーはより多くの手取り収入を得ることができるため、他社からinDriveへと乗り換えるドライバーが増加しています。
(引用元:philstar GLOBAL │ inDrive opens extra livelihood for drivers
https://qa.philstar.com/business/2025/01/12/2413494/indrive-opens-extra-livelihood-drivers)
【メリット・デメリット】
メリットは、料金が安いことに加え、比較的新しい車両に当たる確率が高い点です。デメリットとしては、決済方法が現金またはフィリピンの電子マネー「GCash」に限定されており、クレジットカードが直接利用できない点が挙げられます。
ドライバーの質については「Grabでアカウントを停止(BAN)されたドライバーが流れてきている」といった不穏な噂も一部で囁かれており、サービス品質にばらつきがあるとの評価もあります。
エコで次世代の移動空間を提供する「Green GSM」
ベトナム最大のコングロマリットであるビングループ(Vingroup)が展開する「Green GSM」は、すべての配車車両に100%電気自動車(EV)を採用するという画期的なアプローチでフィリピン市場に参入しました。

【ユーザー・ドライバー数】
GreenGSMは2025年6月にメトロマニラでローンチし、開始48時間で数万ダウンロードを記録しました。 以降のユーザー数は公表されておらず、主にEVタクシーとして初期段階です。なお、フィリピン参入時にはメトロマニラ向けに、電気タクシー2,500台の初期フリートを導入したとされています(1台=1ドライバー前提なら最低2,500人規模)。
(引用元:PHILIPPINES wheels │ Green GSM Becomes Top-Ranked Ride-Hailing App in the Philippines
https://wheels.com.ph/green-gsm-becomes-top-ranked-ride-hailing-app-in-the-philippines/)
(引用元:philstar GLOBAL │ Vietnam’s Green GSM investing $1 billion in Philippines
https://www.philstar.com/business/2025/06/11/2449602/vietnams-green-gsm-investing-1-billion-philippines)
【特徴と価格帯】
自社グループのEVメーカーであるVinFast製の車両を使用し、排気ガスを一切出さないゼロエミッションの移動を提供しています。料金はGrabなどと同様にアプリ上で事前に明確に提示されるため、不透明な請求を心配する必要がありません。
【ドライバーの給与帯と質】
他2社が歩合制の個人事業主を束ねているのに対し、Green GSMの最大の違いは、ドライバーを固定給制(月給制)の正規雇用として抱えている点にあります。給与額について、Green GSM公式のドライバー募集ページでは『月最大45,000ペソの収入ポテンシャル』と明記されています。さらに、交通安全やカスタマーサービスに関する専門的なトレーニングを徹底して受けさせています。そのため、渋滞に巻き込まれても歩合制のドライバーのように苛立つことが少なく、総じて穏やかでマナーの良いドライバーが多いという好意的な評価が見られます。
(引用元:GREEN GSM公式ページ │ Taxi Driver
https://www.greengsm.ph/en/driver-car)
【メリット・デメリット】
メリットは、エンジン音や振動がないEVならではの非常に静かで快適な乗り心地です。また、車内外をリアルタイムでモニタリングするAIカメラや緊急アラート機能など、独自のS2S(Secure to Safe)システムを搭載しており、女性や高齢者でも安心して利用できる高い安全性を誇ります。
一方で深刻なデメリットも報告されています。クレジットカードを紐付けて利用した際、二重請求や過剰請求が発生したというトラブルがネット上で散見されています。アプリ内でのクレーム対応が制限されているなどカスタマーサポートの質が低いとの指摘もあり、当面はクレジットカードの登録を避け、現金やGCashでの支払いを強く推奨します。
まとめ
短期の出張者や万が一のトラブルを避けたい方、経費精算のために正確な領収書が必要な方には、やはり総合力で勝るGrabの利用が最も確実です。中長期の滞在者で、GCashなどのローカルな決済手段に慣れており、日々の交通費を少しでも抑えたいという方にはinDriveが強力な選択肢となるでしょう。企業のESG(環境・社会・ガバナンス)目標に対する意識が高い方や、最新のEVによる静かで快適な移動を体験したい方にはGreen GSMがおすすめです(ただし、決済トラブルの自衛策として現金払いを推奨します)。
フィリピンの交通インフラは過酷な渋滞という負の側面を持つ一方で、最新のテクノロジーを活用したモビリティサービスが次々と誕生するダイナミックな市場でもあります。それぞれの配車アプリの特性を理解し、自身の滞在スタイルや用途に合わせて賢く使い分けることが、フィリピンでのビジネスを成功に導く第一歩となるでしょう。























