シンガポールとマレーシアがお互いのいいとこ取り:ジョホールバル経済圏とは!

シンガポール

マレーシアの国営ベルナマ通信は、2022年6月22日、シンガポール北部のウッドランズとジョホール州ジョホールバルとを結ぶ快速鉄道(RTS)の建設事業について、5月末時点の進ちょく率が17%だったと明らかにしました。
シンガポールとマレーシア最南端の州ジョホールの間では、パンデミック以前は、毎日約41万5,000人が2つある国境の橋を渡って両国間を往来していました。
シンガポールとジョホールは地理的にも経済的にも非常に密接な関係にあります。
今回は、この「シンガポールとジョホールバルの経済圏」について紹介します。

シンガポール・ジョホールバル経済圏

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2022年7月21日

シンガポール・ジョホール間の快速鉄道

RTSは全長4キロメートルの路線で、2026年末に完成し、27年初めにも開通予定です。
シンガポールに通勤するマレーシア人らの利用が見込まれ、乗客数は双方向で1時間当たり1万人に上る見通しです。
2023年12月末までに70%の完成を目指しています。

ジョホールの位置

ジョホール州はマレー半島最南端に位置し、人口はマレーシアの全州の中で3番目に多い約380万人。州都のジョホールバル(Johor Bahru)の都市圏の規模はクアラルンプール、ペナンに次いで第3位(人口約50万人)です。
ジョホール海峡(海峡というより川のような感じ)を挟んだ対岸にはシンガポールがあり、2つある橋(コーズウェイとセカンドリンク)を利用しての行き来は非常に盛んで、毎朝、マレーシア側からは多くのトラックが野菜やフルーツなどの荷をいっぱいに積み、また、多くの企業の通勤バスなどが2時間ほどの渋滞も待ちながら、シンガポールに向かってきます。

シンガポールとジョホールの地政学的優位性

シンガポールとジョホールは、大陸の端に位置しており、港を整備しやすい、大陸国家と交易しやすい、防衛しやすいという利点があります。これはニューヨークや香港と同じ地政学的優位性です。
また、どちらもインド洋と東シナ海をつなぐマラッカ海峡の要衝にあり、物流の拠点として成長してきました。
英国の植民地であったことも、戦後の発展に大いに影響を与えています。

シンガポールの製造代替地

1980年代以降、ジョホールに電子や自動車関連部品などの日系製造業の進出が相次ぎました。これは、シンガポールでの製造コストの高騰を理由に移転を決めたメーカーが多かったためです。
また、1990年代には、シンガポールとジョホール州、南のインドネシアのバタム島やビンタン島の一帯は、国境を越えた経済圏構想「成長の三角地帯」として注目を集めました。そして、シンガポールに代わるコスト競争力のある製造の代替地として発展を遂げました。
しかし、2000年代後半頃から、ジョホールからよりコスト競争力のある他のアジア地域へ製造の拠点が移されるなど、日系企業を含めた撤退の動きが加速しました。

ジョホールのイスカンダル計画

この動きに対しマレーシア政府は、ジョホール州南部で、より付加価値の高い製造業や教育機関、住宅などからなる「イスカンダル開発計画(東京都とほぼ同じ面積で、シンガポールの3倍となる2,217平方キロメートル)」を2006年から始めました。
2005 年時点でジョホール州の GDP の 6 割を占めていたこの地域では、 高所得国であるシンガポールとの臨接性を活かして、更なる総合的発展を目指しました。
この計画では9つの促進産業が指定されました。うち5つの基幹産業は、今までジョホール経済を牽引してきた産業で、さらに強化されていくことが期待されます。残り4つの新興産業には10年間の法人税免除など、広く手厚い優遇措置が設定されており、高付加価値産業発展を下支えしています。
特に教育は注目されており、キャサリン妃の母校として有名なイギリスの名門校マルボロカレッジが開校されました。その後も多くのインターナショナルスクールや専門性の高い教育機関が進出し、Edu Cityという町に集積しています。

同一経済圏

シンガポールとジョホールバルとを繋ぐ地下鉄が完成すれば、ヒト・モノの移動がより活発になり、シンガポール・ジョホールバル経済圏がより強くなっていくでしょう。
そして、独自で強力な経済圏をもつシンガポールと広大な土地があるマレーシアとがお互いに補完しあい、協力しながら同時に経済発展していくことが期待されます。


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