世界4位の富裕層都市シンガポール|繁栄の裏にある格差拡大の実態
英国の投資コンサルティング会社のヘンリー・アンド・パートナーズが公表した調査で、100万ドル(約1億5,600万円)以上の資産を有している富裕層が最も多い都市に、シンガポールが4位にランクインしたことが明らかになりました。
シンガポールが世界でも有数の豊かな国であることは数々の調査で明らかになっていて、この記事でもなぜシンガポールは豊かになったのか、その理由を解説してきました。
今回は、豊かになる一方で社会の不満が蓄積しつつある現状について解説します。
シンガポールの富裕層増加と所得格差:経済成長の陰で広がる社会問題
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年 7月19日
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アジアで最も裕福な都市
同社の2024年のレポートによると、2023年だけで実に3,400人もの富裕層がシンガポールに移住したとのことです。
シンガポールには、現在100万ドル以上の資産を持つ百万長者は244,800人、資産1億ドル(約156億7,000万円)以上が336人、10億ドル(約1,567億円)以上が30人居住しています。
金融資産が1億ドルを超える超富裕層の世帯の割合は10万世帯当たりで14.3世帯で、こちらは世界2位にランクインしています。
2013年から2023年までの10年間でシンガポールでは億万長者の数が64%も増えていて、数年のうちに3位の東京を抜いて、アジアで最も裕福な都市になる見込みです。
所得格差
シンガポールでは、上位10%と下位10%の所得比率が2000年から2012年にかけて大幅に増加し(18.4倍)、2013年から2020年にかけても約24倍になっています。
つまり、シンガポールの最も裕福な10%の所得は、最も貧しい10%の所得の約24倍にあたるのです。
ローレンス・ウォン新首相は、シンガポールの所得格差は過去20年以上で最低水準にまで低下したと発表していますが、所得格差による不平等感は確実に広がっていると見られています。
数字で表れない不平等
確かに政府が発表している数値では、所得格差はパンデミック以降縮小しつつありますが、実際には不平等が深刻化しており、国の社会的な安定を脅かしています。
政府は社会保障や「SkillsFuture」と呼ばれる職業教育プログラムなどを通じて低所得者層への支援を行って、不平等の解決に注力しています。
しかし、国民の実際の状況が反映されていないのではと懸念されています。
消費の不平等
消費の不平等とは、一部の裕福な人々が他の人々よりも多くの商品やサービスを利用できることです。これには食料や医療、住宅だけではなく、教育なども含まれます。
所得格差よりも不平等さがより正確に表せると考えられ、実際にシンガポールでは消費の格差に不平等感が表れています。
富の不平等
富の不平等は、個人または世帯が、資産を実際にどれだけ所有しているかを調べます。現在の収入だけでなく、過去の貯蓄や投資なども考慮に入れます。
富の不平等は経済的な階層化を促進し、少数の人々だけに経済的・政治的権力が集中することにつながる可能性があり、東南アジアでは多く見られます。
教育格差
教育格差は経済的な格差だけではなく、一般的に人種や民族、性別、地理的な位置などの要因によって起こります。
シンガポールの奇跡的な発展において、教育は中心的な役割を果たしてきました。
しかし、経済的な格差が、教育を受ける際の格差にもつながり出しています。
裕福な家庭の生徒はあまり成績が悪くならない、つまり「底辺」は確保されているという問題点が指摘されています。
実力主義社会シンガポール
実力主義を遵守し個人の責任を強調することで、シンガポールは著しい発展を可能にしてきました。能力主義が社会の流動性を可能にしていました。
しかし、恵まれた層だけに富や機会があまりにも極端に集中したことにより、社会の流動性に危機が生じ、階層の固定化が始まっています。
新首相はこのような社会的な問題に、どのような解決策を見いだしていくのかが注目されています。