就労ビザ    月額の給与基準を2025年より引上げ 

シンガポール

シンガポール人材省は、2025年1月1日から外国人労働者の最低賃金を引き上げることを発表しました。

この数年は毎年のように外国人の最低賃金が上昇しており、それに伴って就労ビザを取得する際の手続き費用も上昇し続けています。

今回は、就労ビザの最低賃金について深掘りしようと思います。

就労ビザ    月額の給与基準を2025年より引上げ  

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年 2月7日

5,000ドルから5,600ドルに

人材省は2025年1月1日の改定により、一般就労ビザの月額最低賃金5,000ドル(約57万円)を5,600ドル(約64万円)に、金融サービス部門の場合には5,500ドル(約63万円)を6,200ドル(約71万円)に引き上げることを発表しました。この月額の給与額は、地元の管理職や幹部の給与の上位3分の1を基準に設定されています。

国民有利に調整

今回の改訂では、いわゆる上級職についている外国人労働者には影響はないが、上級職に就く外国人労働者が増えることもないと、人材省は見ています。

今回の改定はシンガポール国民が有利になるように調整しているとも、人材省は発表しています。

40代の標準給与額122万円!

ビザを取得するための適格給与は年齢とともに増加しており、来年からの推定のレートは、40代半ばの従業員は1万700シンガポールドル(約122万円)、金融サービス部門は1万1800シンガポールドル(約135万円)です。

以前の記事でも紹介しましたが、2024年6月時点でシンガポールには155万人の外国人労働者が働いており、そのうちの約20万2,000人が高度技能就労ビザ保持者です。

最低給与基準の変遷

過去10年間で外国人がビザを取得する際の最低賃金は上昇し続けています。

2014年、就労ビザの最低月額給与基準は3,300シンガポールドルに設定されていました。

この時期シンガポールは経済成長が続いており、比較的緩やかな引き上げが行われていました。

2017年には最低給与基準は3,600シンガポールドルに引き上げられましたが、これは経済の成熟とともに、高スキル労働者の需要が高まったことが理由です。

2020年は新型コロナウイルスの影響を受け、労働市場に大きな変動がありましたが、最低月額給与は4,500シンガポールドルに引き上げられ、金融業界など特定の業界においてはさらに高い基準(5,000シンガポールドル)が設けられました​。

2022年には金融業界の基準が再び引き上げられ、5,500シンガポールドルになりました。政府は、この基準の引き上げにより、地元労働者の賃金競争力を守りながら、外国からの高度な人材を確保することを目指しました。

2023年には基準が5,000シンガポールドルに引き上げられ、外国人労働者の流入が過度にならないよう、管理が強化されていました。

取得コストも上昇

就労ビザの申請費用についても少しずつ上昇していて、過去数年で数回調整されました。申請費用は管理コストや審査の複雑さに対応するために引き上げられたと考えられます。

上昇の背景と理由

政府は経済発展を続けるために国外から高スキル労働者を呼び込む一方で、過度な外国人労働者の流入が地元の労働市場に与える影響を懸念し、調整しています。

このため賃金基準や取得フィーを段階的に引き上げ、地元労働者の賃金圧力を軽減しつつ、必要なスキルを持つ外国人のみを選別する方針を取り続けています。また、インフレや生活費の上昇に伴い、給与基準もそれに合わせて調整されています。

高度な人材確保と経済成長の持続

シンガポールは製造業からサービス業、特に金融、情報技術、バイオテクノロジーなどの高度な知識産業への移行を進めています。

このためより高度なスキルを持つ人材を国内に呼び込むことが重要で、最低給与基準の引き上げは高スキルの専門職や管理職に特化した外国人労働者の誘致を目的としており、シンガポールの経済成長を支える技術革新や競争力の強化を期待しています。

シンガポール政府は引き続き高度人材の誘致と地元労働者の保護のバランスをとりながら、経済成長を持続させるための施策を進めていくと考えられます。

Malay Dragon

18,540 views

マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

プロフィール

関連記事一覧