「越境ソーシャルリスニング」はこれからの海外マーケティングのスタンダードとなる!(3)

ソーシャルリスニング

日本のことなら、日本のSNSをウロウロすればすぐにキーワードがわかる。キーワードがわかれば、Googleで検索するなり、Twitterで検索すればよい。Instagramで話題になっているハッシュタグを知る方法もある。
しかし、海外の特定の国や地域で、ターゲットとなる消費者が話題にしているキーワードを知るにはどうすればいいのか?
ソーシャルリスニングは、適正なキーワードを得て初めて実り豊かなものになる。

著者:gramマネージャー 今泉 大輔 
公開日:2021年2月17日

SNS時代のマーケティング施策「越境ソーシャルリスニング」解説まとめ

越境ソーシャルリスニングの実際(3)

ソーシャルリスニングに向く価格帯

越境ソーシャルリスニングの体制が整っていない企業にまずお勧めしたいのが、定点観測をするための「アンテナを立てる」ということだ。
その国にどのようなマーケットがあるのか?その国のマーケットを動かしているセグメントはどういうメンバーから成り立っているのか?SNSで主体的に情報発信をしているのはどういうペルソナの消費者か?話題に出るアイテムの価格帯はいくらからいくらまでか?
などなど、まずは、その国のマーケットの特性をソーシャルリスニングによって把握していく。

一般的に、ソーシャルリスニングで情報が得やすいのは、どの国でも価格が日本円の感覚(購買力平価)で言うと100円〜10,000円程度の商品だ。それを超える価格帯のものは話題になりにくい。
ジャンルでは、飲料、菓子(スイーツ)、化粧品に代表されるその国のナショナルブランドが育っている分野で、CMなどもふんだんに流れている商品はSNS上でふんだんに情報が得られる。簡単に言えば、消費者がブランド名、商品名をよく知っているアイテムと言うことだ。そうして店頭やネットで買いやすいもの。そうした商品についてはネットにコメントがあふれている。これに準じるものにファーストフード、それに準じたカジュアルな飲食がある。女性の場合は、ファストファッション。スターバックス的な位置付けのカフェ。トレンドの飲食。

ソーシャルリスニングで情報が得にくいものの代表にクルマがある。一人のクルマ好きがクルマに関する経験から得た情報をTwitterなどのパブリックなSNSでシェアする行為は、様々な営業系のお声がけを誘発させることになるため普通はやらない。クローズドな情報交換ボードでシェアするか、いっそYouTuberになってしまって、豊富な情報をブロードキャスティングする。
簡単に言えば、価格帯が日本人の感覚(購買力平価)で100万円を超えるような商品は、普通は、SNSで色々な情報をシェアしない。そのため、ソーシャルリスニングを行なっても意味のあるサンプル数が得られず、大した知見が得られないことが多い。
ソーシャルリスニングを行なって意味があるのは、消費者がブランド名、商品名をよく知っているジャンルの、価格帯(購買力平価)が100円〜10,000円程度の製品と言い切ってよいだろう。

アンテナを立てる

そうした情報が得やすいジャンルについて、「アンテナを立てる」ことで定点観測を行なっていく。
定点観測を行うとは、担当者を固定化して、定期的に主要ソーシャルメディアをスキャニングする行為を行い、クライアント企業の興味に適合した投稿やトレンドをピックアップしていく。1ヶ月に1度程度、このスキャニングを行うことで、クライアント企業のマーケティング活動にとって意味のある動きが拾えていく。その中で、焦点となるキーワードも自ずと浮かび上がってくる。前回の記事で言えば、”Mochi”や”WAGYU”がキーワードだとわかる。
キーワードがいったん拾えれば、あとは自由自在にソーシャルリスニングを展開できる。

逆に、アンテナを立ててキーワードを得ることなくして、その国の市場についてソーシャルリスニングを行おうと思っても、思ったような成果を得られないだろう。
これは「その市場に期待できるものが何もわからない状態でリサーチを行なっても、何の意味あるものも浮かび上がってこない」ということを意味する。別な言い方をすれば、仮説がない状態で、ソーシャルリスニングを行なっても、何も引っかからないということだ。
キーワード設定は、その市場に対する仮説の設定である。

インフルエンサーに着目する

キーワードが何もない状態でその国の市場に関するトレンドを把握するには、アンテナを立てて定点観測をする以外の方法として、インフルエンサーに着目するというやり方がある。

インフルエンサーとは、Instagramにいるいわゆるインフルエンサー、インフルエンサーした人たちだけでなく、ブロガー、Twitterでフォロワーの多い人たち、YouTuber。さらには専門雑誌に記事を書いているライターなどもインフルエンサーに含まれる。アマゾンの商品レビュー欄でインフルエンサーが見つかることもある。先入観を排除して、様々なところから観察して意味のあるインフルエンサーをピックアップすべきだろう。

現代では、情報感度が良く情報の発信力もあるインフルエンサーは、YouTubeに複数いる可能性が高い。筆者が知っている例では、米国のスマートホーム関連製品について調査を行った時に、YouTubeに極めて質の高いインフルエンサーが複数いて、活発に商品情報を発信していたということがある。

インフルエンサーの活動をしばらく観察して、頻繁に出てくる言葉や固有名詞を得る。それをTwitter、Instagramなどのソーシャルメディアでリスニングをする際のキーワード候補として設定する。色々な検索をして有意な動向が得られたら、それを深掘りしていけば良い。

まとめ

現代では、知的な消費者は必ずソーシャルメディアで何らかの情報発信を行っている。また、隣近所や近しい人間関係に影響を与えることができる消費者は、必ず、良いと思った商品をSNSで書く。結果として、SNS上には、その商品に関する無数のコメントがあふれることになる。
日本を代表する化粧品メーカーの30年の歴史を誇るあるブランドのスキンケア製品は、東南アジアの女性たちが好んで投稿を書いている。そうしたことが上記の価格帯のFMCGでは無数に起こっている。
従って、日本にいて、その国の市場のあり方をまずざっと知りたい場合、ソーシャルリスニングをかけるのがもっとも懸命なやり方だということになるだろう。

まずソーシャルリスニングを行い、そこから深掘りして、デプスインタビューを行うとか、ペルソナを抽出してカスタマージャーニーを作るといった展開ができる。また、投稿件数が多いジャンルについては、統計的な分析を行ったり、時系列の消費動向変化を追うこともできる。

海外市場アプローチでは「まずソーシャルリスニングを行ってみる」というのは、大変に正しい選択肢だと言えるだろう。

SNS時代のマーケティング施策「越境ソーシャルリスニング」解説まとめ ソーシャルリスニングに関するお問い合わせはこちら Photography by Andrea Piacquadio

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