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【越境EC 第6回】『香港』のEC事情とは?コロナの影響は?香港の越境ECのポテンシャルについて解説!

越境EC

第3・4回のコラムでは中国大陸におけるEC事情についてご紹介しました。
中国以外に、香港や台湾などの中華圏に属する地域も海外でビジネスを展開するうえで必ず視野に入れておくべきです。
香港は、歴史や政治の諸因で自由貿易地域となり、欧米からの資本が流入し、早い段階で発展しました。今では世界的に重要な金融センターとなり、越境ECを展開する環境が整っていると考えられます。今回は香港のEC事情についてご紹介します。

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【越境EC 第6回】『香港』のEC事情とは?コロナの影響は?香港の越境ECのポテンシャルについて解説!

コロナ時代 香港におけるEC市場

香港のEC事情

香港はアジアの中で最も早く発展した地域の一つとして、EC産業の発展がかなり進んでいると想像しやすいですが、実際には地元のEC産業はまだそれほど発展していません。原因には以下の三点が考えられます。

①オフラインショッピング(実店舗訪問ショッピング)が便利
香港は低関税の自由貿易地域であるため、オフラインの買い物が非常に便利です。東京都の約半分程度の面積に人口約750万人が住む、非常にコンパクトな現代都市でもあり、全香港住民は中心街まで約30分圏内の距離に住んでいます。実店舗に行って購入することは、ECサイトでの購入より明らかに効率が良いでしょう。

②配送コストが高い
香港は人口や面積の制限により、人件費・賃金が高く、5キロメートルの配送距離だけでも80香港元(約1070円)の送料がかかるなど、香港でECを展開するにはコストがかかります。

③海外ECサイトの利用が便利
低関税に恵まれ、ebayやアマゾンなど海外のECサイトから商品を購入し、香港へ直送することがかなり便利です。そのため地元のECサイトを利用しなくても、オンラインショッピングに支障がありません。

以上の原因によって、香港でのオンラインショッピングは決して不便ではないが、地元のEC産業は中国やアメリカの大手ECサイトに比べると、まだ劣っています。

言い換えると、今後の香港のEC発展における潜在力は高いと考えられます。

コロナ時代における香港EC

2019年の香港民主化デモおよび2020年の新型コロナウィルス感染拡大(以下にコロナ)の影響で、香港の観光客数が激減し、住民の外出も制限され、小売業は厳しい状況に置かれました。2020年第1四半期、香港小売業の取引件数は前年度比36.9%減少し、記録上最大の四半期下げ幅を記録し、大手小売業者も続々と一部の店舗を閉店させました。

その中で、香港人の消費活動も著しく変わってきています。
Ipsosが2020年3月に行った調査によると、半分近く(48%)の消費者はより多くの時間をオンラインショッピングに費やし、三分の一以上の消費者はオンラインで生活必需品を購入し、あるいは電子マネーを利用して他人との接触を避けるようにしています。また、香港最大のEC企業HKTVmallのデータによると、コロナの感染爆発以来、サイトへの一日当たりのアクセス端末数は40万超えと、コロナ以前に比べて倍増しました。一日当たりの取引件数も2019年の約2万件から3万件へと急増しました。

コロナ禍でオフラインの店舗が打撃を受けた一方、香港消費者の消費活動がオンラインへと変化していることが明らかです。


ソース:
http://www.xinhuanet.com/gangao/2020-08/08/c_1126342995.htm
https://www.ipsos.com/sites/default/files/ct/news/documents/2020-04/impact_of_covid19_hk_press_release_-_chinese_02042020.pdf
https://research.hktdc.com/sc/article/NTA3NDc5Mzc5

香港小売企業も需要に応じて、Eコマース、特にライブコマース(ライブ動画を配信し、商品を紹介して購入してもらうという販売形態)へとシフトしています。

香港で30店舗以上を展開している大手化粧品販売社卓悦(Bonjour)は、2020年3月から「ECインキュベーター」を開始しました。自社の店舗販売員のライブコマースに関する研修と、広東・香港・マカオ地域(中国語で“粵港澳”という)でのECに関する起業の支援を併行し、ライブコマースへと一歩踏み出しました。

その後、EC企業HKTVmallも2020年8月からFacebookの公式アカウントでライブコマースを始めました。前回、中国ECのコラムでご紹介したのと同じく、HKTVmallのライブ配信でも元TVB (無線電視、香港の民放テレビ局)司会者などの著名人やKOL(Key Opinion Leader:中国版インフルエンサー)に商品を紹介してもらうことがあります。現在はほぼ毎日約1時間のライブ配信があり、視聴者のみの特典割引なども盛り沢山で、好調に展開しています。

主要プレイヤー:HKTVmall

前文でご紹介したように、オフラインショッピングの充実度と各国ECサイトから直送の利便性によって、香港での地元EC企業の発展は他の国・地域に比べて少々遅れています。その中で、香港最大のECサイトとして知られているのはHKTVmall(https://www.hktvmall.com/ )です。

HKTVmallは香港電視網絡(香港の民間テレビ局)が2015年に設立した子会社で、1日平均約25万人がアクセスしています。香港住民の10人中1人がHKTVmallで買い物したことがあると言われています。
販売している商品は生活必需品からテイクアウトフード・トラベル・保険などといったサービスまで、幅広くあります。自社運営のオンラインショッピングモールとして、香港で有名なショッピングモールに実際に出店した100近くのブランドで構成された13Landmarksがあります。それ以外の企業・店舗は、それぞれサイトに出店し商品を販売することができますが、4000香港元(約53,500円)以上の貴重品やお花など以外は、ほとんどの商品は集荷の形で発送しなければなりません。つまり、出店企業がサイトの指定日時までに集荷倉庫に運送し、倉庫側が消費者に届けるといった形式です。また、消費者が店頭に注文商品を受け取りに行くことも可能です。
HKTVmallは他国の大手ECサイトと異なり、オンラインとオフライン併行のO2O(Online To Offline:ネットの情報からリアルな店舗へ顧客を誘導する販売動線)形式で経営しており、どちらかというとUber Eatsのビジネスモデルに近いです。

HKTVmallでは、海外からの商品はもちろん多数販売されていますが、O2Oのビジネスモデルや独特の配送ルールによって、香港の実店舗で販売されている海外商品でなければサイトに掲載・出店することが難しいです。

中国ECのコラムでも行ったように、今回もHKTVmallで「日本」で検索し、(販売数順がないため)評価の良い順で並べてみました。海苔やカレールーをはじめ、日本のスーパーで販売されているもの全般が出てきました。

O2Oのビジネスモデルで考えると、香港の実店舗でも、このような日本からの生活必需品が人気であることが考えられます。

ソース:
https://cloud.marketing.hktvmall.com/applymerchant
https://cloud.marketing.hktvmall.com/applymerchant_FAQ

日本から進出する際の留意点

香港では、中国大陸のような制限がなく、Google・Facebook・Youtube・Instagramなど日本でよく使われる検索エンジン・SNSの利用率も高いため、検索エンジン・SNSを利用したプロモーション方法は日本とあまり変わらないことが、進出したい日本企業にとっての一大メリットです。
また、海外のECサイトからも香港の消費者と直接取引することが可能で、税関の制限を調べて海外直送に対応すれば問題ありません。
しかし、これまで紹介したように、香港におけるECも消費者の消費パターンもオンラインへシフトしたばかりの段階にあり、オフラインショッピングと対抗できる規模ができておらず、店舗を主体とするO2O形式が主流です。そのため、中国大陸でのようにコストを削減し、オンラインのみで販売することは香港では難しいかもしれません。
そのため、香港に初めて進出するブランドや商品であれば、まず実店舗での販路を確保し、ブランド・商品のイメージを浸透させたうえで、地元のECサイトへ進出した方が良いでしょう。
また、自ら出店するよりは、専属の代理店や代理ECサイトを指定し、一定の客層を確保するのも一手です。

むすびに

コロナによる不況の下、長くオフラインショッピングに力を入れてきた香港も中国大陸に続き、Eコマースへとシフトしています。
ただ、オフライン時代の名残が強く、O2Oモデルで展開するのが主流で、海外企業の進出に不便をもたらしてきました。
日本の企業が越境ECを通じて香港へ進出したい場合、市場調査・規制調査などを行うほか、まずは実店舗での販路を確保し、徐々にECへ転換した方が良いでしょう。
その他、アマゾンやT-MALLなど、香港消費者が利用可能な他のECサイトに出品・出店するのも一つの手かもしれません。

ソース:
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2017/12/6e26824adda295a1.html
https://www.gvm.com.tw/article/73987
https://zhuanlan.zhihu.com/p/146597187

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