【越境EC 第7回】ポテンシャル十分!インドの越境EC事情

越境EC

人口13億人を超えるインドには、その人口規模と高いテクノロジーの観点から、様々な産業の巨大市場があります。その中でも今後拡大することが期待できる市場が「EC市場」です。その成長性を見込んで、現在、アメリカの巨大企業がインドのEC企業へ多くの資本を投資しています。
このように、将来確実に世界をリードする存在になると予測される、インドのEC市場の現状、将来性、主要プレイヤーなどについてご紹介します。

コロナ禍における必勝策 市場拡大中 いま話題の「越境EC」を特集! 地域概要情報 インド(India)

【越境EC 第7回】ポテンシャル十分! 『インド』の越境EC事情

インドの概要(人口、GDP、インターネット普及率など)

現在、インドには約13億7000万人の人がおり、日本の人口の約12倍、中国に次いで世界第2位の人口規模があります。
そのようなインドは世界第3位の新興経済国と呼ばれており、 なおかつ世界第5位の経済大国です。インドの名目GDP は2兆9600億ドルで、コロナ前の2019年度のGDP成長率は7.4%となっています。
インドは新興国の中でも中国をしのぐほどの経済成長率が予測されており、IMF(国際通貨基金)の世界実質GDP成長予想では、1位のインドが7.7%と、2位の中国に1.8ポイントの差をつけています。
インドでは、近年インターネットの契約者数が7億人を突破するなどの急速なデジタル化が進んでおり、2025年には普及率が55%ほどにまで上昇し、インターネット利用者は約8.5億人にまで上るとされています。他国に比べ安価なスマートフォン端末と携帯電話料金がインターネット利用者の急速な増加につながっています。

(注) 予想はIMFによるもの

インドのEC事情

GlobalDataの最新レポート「IndiaCards &Payments:Opportunities and Risks to 2023」によると、インドの電子商取引市場の全体的な取引額は、2019年の3.4兆インドルピー(490億米ドル/約5兆3,116億円)から2023年には6.3兆インドルピー(910億米ドル/約9兆6,062億円)に増加すると予測されています。

(注)GlobalData Banking and Payments Intelligence Centerによるデータ
ソース:https://www.globaldata.com/indias-e-commerce-market-set-surpass-us91bn-2023-says-globaldata/


また、IBEF社(INDIA BRAND EQUITY FOUNDATION)が出したレポートでも、インドのEC市場は上向きの成長軌道にあり、2026年には2000億ドル規模に成長し、2034年までに米国を抜いて世界第2位のEC市場になると予測しています。2020年の食品および食料品、アパレル、家電製品の小売業全体の4%から2025年までに8%に増加すると予測されており、インドのEC市場の将来に対するポジティブな評価が多いことが分かります。

ソース:https://www.ibef.org/industry/ecommerce-presentation

インドは、EC市場の年間成長率の中では世界で一番であり、世界基準の9.6%を大きく上回る19.9%もの年間成長をしています。圧倒的な人口と今後のインターネット普及拡大によってこの成長は今後も伸びていくことが予想されます。インドは今後EC市場で一番注目を集める国になるかもしれません。

ソース:https://palette-in.jp/20170828-061-ecommerce/

このインドのEC市場ポテンシャルを高く評価したGoogle、Amazon、Facebook、Wal-Martといったアメリカの巨大企業が、インドのEC市場の主要プレイヤーに出資を決め、提携を進めてきています。インドの大手ECサイトを運営しているFlipkart(フリップカート)がWal-Martを筆頭とした支援を受けて12億ドルの増資を実行したほか、Amazonのインド事業は今年1月と6月の2回に分けて、合計480億ルピー(約690億円)の増資を実行しました。

また、アジアを代表する日本の大手企業であるソフトバンクグループや、中国のアリババグループも業界第三位のECサイトであるSnapdeal(スナップディール)に巨額の資金融資を行っています。 インドのインターネット普及率は約50%程度であり、相対的に低所得層が多い国ですが、世界のトップ企業が注目し、年間の約20%の成長を見せているインドのEC市場には今後さらに大きな期待ができるでしょう。

主要越境ECモールの紹介

 Flipkart

2007年に設立されたFlipkart(フリップカート)は、インドを代表するECサイトです。当初は本を販売していましたが、現在ではカメラ・PC・家電・洋服・ゲームなどの総合通販サイトになりました。2018年にはアメリカのWal-Martによって、インド市場最高額である160億米ドルで買収されました。この買収によってインド市場進出を図りたいWal-MartとFlipkartが手を組み、市場を急拡大させてきました。そして現在では、インドEC市場の約45%のシェアを持つECモールへと成長しました。

FlipkartはeBAYからの5億ドルを超える資金調達にも成功しており、それのみならずMicrosoftや中国の大手企業のテンセントなどからも巨額の資金調達を受け、今後さらにインドEC首位の地位を圧倒的なものにしようとするでしょう。

https://www.flipkart.com/

② Amazon  India(アマゾン インディア)

Amazon  India(アマゾンインディア)は、2013年にマーケットプレイス型EC事業に乗り出しました。現在では、インドのEC市場の約3割のシェアを持ち、家電、日用品、印刷書籍、電子書籍、Kindle端末、音楽、ゲーム、アパレル、スポーツ用品など、約1700万点の商品を扱っています。ライバル企業であるWal-MartのFlipkart買収により、インドでのEC市場の競争はさらに激化すると見られています。

https://www.amazon.in/

③ Snapdeal(スナップディール)

Snapdeal(スナップディール)は、農村部の低所得者層をターゲットに成長しているインド国内で最大のECモールの一つです。10万以上の売り手が販売する様々な種類の1,000万以上の品揃えの商品を提供し、同社の主な投資者として日本のソフトバンクグループ、中国のアリババグループなどの名が連ねており、今インドで一番勢いがあるECサイトの一つです。

https://www.snapdeal.com/

新型コロナウィルスによるEC需要の拡大

新型コロナウィルスのパンデミックによる都市封鎖(ロックダウン)や巣ごもり需要によって、人々が自宅で過ごす時間が多くなり、小売り事業の需要がEC市場にシフトしているという現象は、一連のコラム(中国、日本、シンガポール)のなかでもご紹介しました。その流れはインドでも起こっていたようです。

NNA ASIA内の記事によると、インドの祭事期(例年10~12月)商戦がオンライン上でも盛り上がりを見せ、消費が最も活発化する灯明祭(ディワリ)までの1カ月間の電子商取引(EC)各社の取引額は、前年同期比34%増の65億米ドル(約6,810億円)に達する見通しであり、インドでもやはり、ECでの買い物需要が急増していました。

また、インド最大手のECサイトであるFlipkartのCEOクリシュナムルシー氏は、「インドのEコマース経済は新型コロナウィルスによって、ポジティブな方向に恒久的に変化していると信じている」、「Eコマースの新型コロナウィルス前の成長率は約26~27%だったが、新型コロナ以後の見積もりを見ると、30%に近づいている。今後3~4年で、電子商取引の市場規模はおよそ500~600億米ドルの範囲であると見積もっていたが、今日において実際には、900~1000億米ドルに近い」と、新型コロナウィルスの影響により、今後数年間で、インドの電子商取引経済はより発展していく可能性があることを示唆しました。

ソース:
https://www.nna.jp/news/show/2111001
https://retail.economictimes.indiatimes.com/news/e-commerce/e-tailing/indian-e-commerce-industry-poised-to-touch-90-100-billion-in-3-4-years-flipkart-group-ceo/80491519

むすびに

いかがでしたでしょうか。

インドのEC市場はビジネスチャンスの面でも成長性が感じられ、どの国のEC市場よりも期待できるかもしれません。
近い将来、アメリカや中国といった大国と同じくらいの魅力的な市場になることは確実ですので、これからもインドの動向に注目してください。

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