中国版ガチャガチャ(カプセルトイ):中国で大ブームのブラインドボックス(盲盒)
中国では数年前から中国版ガチャガチャ(カプセルトイ)といわれるブラインドボックス(盲盒)が爆発的に流行した。ブラインドボックスは、箱を開けるまで何が入っているかわからない。ごく数量しか販売されないレアフィギュアも存在する。
その販売手法は消費者の購入意欲を高め、いくつも購入してしまう沼に陥る若者が続出した。当記事では、今もなおブラインドボックスは流行っているのか、ブラインドボックス市場の現在と今後について紹介する。
中国で大ブームのカプセルトイ(盲盒)市場の未来
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年7月xx日
町中で目にするブラインドボックス(盲盒)
中国のショッピングセンターでは、驚くほどの数のガチャガチャを目にすることが多い。また、フィギュアのブラインドボックス自動販売機が設置され、おもちゃ屋はもちろん、中国で人気の雑貨店メイソウなどでもブラインドボックスが販売されている。
ブラインドボックス(盲盒)は、日本の福袋やガチャガチャが始まりとなった販売スタイルといわれている。ブラインドボックスが大ヒットした際、生きている生後数カ月の子犬や子猫をボックスに詰め込み販売するという非人道的事件が起こった。また、少額の投資でギャンブルのような感覚を味わえるため中毒性があり、過剰消費への注意喚起されるなど、一時期ブラインドボックス経済は恐ろしいほど過熱した。
中国版ガチャガチャを広めたPOPMART
ブラインドボックスを世の中に広めたのは、中国のフィギュアメーカーであるPOPMARTだ。香港のデザイナーがデザインした、大きな瞳と優しく微笑む愛らしい顔が印象的な「Molly」というデザイン性の高いフィギュアは、中国人消費者を虜にした。ブラインドボックスの価格は1つ59元~89元(約1,000円~1,700円)する。筆者が店内を見たときは、ディズニーなど有名IPとコラボレーションした商品を手に取る人が多い印象であった。
若い消費者が爆発的に増え、ブラインドボックスの購買力も上がったことで、Tmall旗艦店の1時間の売上は、前年の1日の売上を上回る日もあったと現地メディアは報じていた時期もあったが、現在はどうなのか。次にブラインドボックス市場について紹介する。
市場は徐々に落ち着いているも今後も拡大予測
中国のブラインドボックス産業の市場規模は2016年から2020年まで4年連続で拡大し、294.8億元に達している。また、2023年には574億6,000万元まで急増すると予測されている。
(引用:CBNData https://www.cbndata.com/information/233146 )
市場は拡大し続けているが、現在は全盛期ほどの勢いは見られない。
POPMARTの2020年収益データの伸びは前年比49.32%となっている。このような成長率は一見よさそうに思えるが、2018年の225.95%、2019年の226.80%と比べると、成長率は低めである。POPMARTの2021年半期報告書によると、売上高、当期純利益ともに前年同期比100%以上の増加を維持したが、成長率は金融機関が期待した170%超から大きく下回るものだった。
(引用:CBNData https://www.cbndata.com/information/233146 )
成長期を経てブラインドボックス市場は鈍化し始め消費者の熱量も低下しているようにみえるが、売れていることに変わりはない。コスメや野菜、本などの新しいブラインドボックスが発売されると、また大ブームが巻き起こるのだ。
「潮玩」とはフィギュアやブラインドボックスのような、流行りのおもちゃのこと。国内の潮玩市場規模は、2015年の63億元から2020年には294.8億元、年平均成長率は46.36%となり、2024年には763億元、2030年には1100億元を超えると予測されている。
(引用:CBNData https://www.cbndata.com/information/233146 )
上海市のロックダウン中から、ケンタッキー・フライド・チキンのおまけフィギュアが話題となっている。ケンタッキー・フライド・チキン指定のセットを購入すると、ポケモンのおもちゃがランダムで付いてくる(中国版ハッピーセットのような商品)。ポケモンの代表格であるピカチュウを差し置いて人気が爆発したのは「コダック」のフィギュアだ。両手に抗原検査キットやユニークなアイディアのメモを持つコダック、音楽に合わせて踊るコダックを中国のSNSで見ない日はなかった。これほどまでにコダックのフィギュアが話題となった理由は、その愛らしい姿にあることはもちろんだが、消費者が商品の使い方を自らのスタイルに変化させたことでコダックの価値がさらに上がったからである。筆者の周りの友人もコダックを目当てにケンタッキー・フライド・チキンのセットを購入したが、ピカチュウの水筒しか手に入らなかった。現在もコダックのフィギュアは入手困難な状態となっており高値で転売されている。
まとめ
ブラインドボックスに熱狂していた若年層は現在、デジタルコレクションという新しい波に移行する層も出てきた。ブラインドボックス市場は拡大を続ける一方、全盛期ほどの勢いはなく成熟期に入っている。しかし農村地域では、野菜のブラインドボックスを都市部住民向けに販売したところ、予想外の大ヒットで農民の増収に貢献した。
(引用:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2022/0602/c94638-10105000.html )
ブラインドボックスは様々な販売手法で今後も伸びる可能性を秘めている。業界の発展が早い中国では、これからも注視するべき市場のひとつといえるだろう。