オーストラリアの物価上昇、インフレが遂にピークアウトか?金利政策の影響
オーストラリアのインフレが33年ぶりの高水準に達したものの、今年に入ってCPIの上昇率が減速。世界的なパンデミックやロシア・ウクライナ戦争の影響で食品や住宅に大幅な値上げが続く一方、収入は物価上昇に追いつかず個人消費は低迷。オーストラリア準備銀行は政策金利を据え置き、インフレが2025年中頃までに3%付近まで低下する見通しを発表。今後の金利政策がオーストラリア経済の回復の焦点となる。
オーストラリアの物価上昇、インフレが遂にピークアウトか?金利政策の影響
著者:オーストラリアgramフェロー 平澤 歩
公開日:2023年5月9日
消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年同期比7.8%
2022年12月の消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年同期比7.8%と、1990年3月以来33年ぶりの高水準を叩きだすなど、激しいインフレーションが続くオーストラリア。しかし、今年に入り1月・2月と2ヶ月連続でCPIの上昇率が前月を下回り、ここにきてインフレが減速感を帯びてきました。
オーストラリアで続くインフレの状況
世界各国と同様、オーストラリアでもパンデミックの影響やロシア・ウクライナ戦争の影響などによるインフレが続いています。オーストラリアの中央銀行・オーストラリア準備銀行はインフレ抑制のため、今年4月4日に据え置くまで10ヶ月連続で利上げを行なっていました。
食料品・アルコールを除く飲料の価格は、2022年の1年間で約9.4%上昇しました。スーパーで買い物をすると「先週まで5kg20ドルだった米が突然30ドルに値上がりしている!」というような、大幅な値上げが常に何かしらの商品でなされています。
住居に関しても、賃貸・持ち家ともにインフレの影響を大きく受けています。賃貸物件はオーナーがローンで物件を保有している場合が多く、上昇した金利をカバーするために賃貸料が高騰しています。シェアハウスなど光熱費込みの賃料形態の物件は、値上がりした光熱費をカバーするため賃貸料が急激に高騰しています。持ち家については、金利の大幅な上昇によりローンの返済額が増え、払いきれなくなって家を手放す人が増えています。
日本のメディアでは「オーストラリアの高時給で出稼ぎ」などと高収入が期待できる側面ばかりが報じられていますが、実際には物価の上昇額に見合うほど人々の収入は増えておらず、個人消費は落ち込みを見せている状況です。
CPIがわずかに低下、インフレはピークアウトか
CPIの上昇率は2022年12月に7.8%と1990年3月以来33年ぶりの高水準をマークして以降、今年1月は7.4%、2月は6.8%と2ヶ月連続で前月を下回りました。この結果を受け、オーストラリア統計局は「オーストラリアはディスインフレーション(物価の上昇率が低下していく状態)に突入している」との見方を示しました。
この状況を踏まえ、オーストラリア準備銀行は今年4月4日、11ヶ月ぶりに政策金利を据え置き、インフレは2025年中頃までに3%付近まで低下するとの見通しを明らかにしました。しかし、高止まりした物価に対して消費者マインドの鈍化は依然として続き、オーストラリアの経済成長は今後2年間、平均を下回るとの見方を示しています。
今後、5月も政策金利を据え置くのか、わずかに上昇してその後据え置きになるのかが、オーストラリア経済が上向きになるかどうかの焦点となってくるでしょう。