未知の楽器、未知の言葉｜エストニア代表が挑む異文化交流の旅
ヨーロッパで最も盛り上がる音楽フェスティバル「ユーロビジョン」。今年は「5Miinust & Puuluup」がエストニア代表で出場することが決定した。彼らが使う北欧の伝統楽器「Hiiu kannel」にも注目が集まり、国の文化を発信するいい機会になっている。エストニア代表と不思議な楽器について紹介していく。
2024年のユーロビジョンのエストニア代表が決定！
著者：エストニアgram fellow さえきあき
公開日：2024年1月22日
ユーロビジョンとは？
毎年開催されるヨーロッパ最大級の音楽フェスティバルで、各国からの代表1組がパフォーマンスを行うものだ。3日間かけて行われ、優勝者は視聴者投票と審査員の評価によって決まり、優勝するとその後のキャリアに大きなメリットとなる。優勝しなくとも視聴者にインパクトを残せば仕事が急増する。去年のフィンランド代表はその最たる例だ。
エストニア代表は「5Miinust & Puuluup」
2024年のユーロビジョンのエストニア代表は、国内で行われた大会で優勝を修めた「5Miinust & Puuluup」。名前の中に&が付いていることから察せるように、普段は別々で活動している2グループがコラボで発表した曲が選ばれたということだ。コラボによって6人という大所帯でユーロビジョンのステージに立つことになる。
選ばれた曲は「(Nendest) narkootikumidest ei tea me (küll) midagi」。タイトルがエストニア語で何もわからないと思うが、歌詞もエストニア語のためネイティブ以外は意味を把握するのが非常に難しい楽曲となっている。ちなみに訳すと「私たちはこれらのドラッグについて何も知らない」というタイトルだ。
歌詞が理解できなくてもサウンドやリズムがよく楽しめる上、見たことのない楽器、不思議なダンス等視覚的にずっと飽きないので一度YouTube等で視聴してみることをお勧めする。
2グループそれぞれについて簡単に説明していこう。
◆ 5miinust
エストニア語で「5分」という意味で、数字が示す通り最初はメンバーは5人だった。しかし2023年に1人がグループを去り、現在は4人グループとなっている。音楽のジャンルとしてはヒップホップだそう。6人で出るユーロビジョンでは楽器を持っていない4人、と覚えると、もうひとつのグループの2人と見分けがつきやすい。
◆ Puuluup
見たことのない不思議な楽器を演奏する音楽ユニット。この楽器はエストニア周辺の国の伝統楽器で、詳しくは後述する。このデュオのエストニア国内での知名度は相当なもので、エストニア代表と言ってしまえるくらい、国外のイベントにも呼ばれていたりインドでツアーを行ったりしている。
見慣れない楽器「Hiiu kannel」
Puuluupの2人が演奏している弦楽器は「Hiiu kannel」と呼ばれる箱のような形をした弦楽器で、チェロのようにして演奏する。別名talharpa（タルハルパ）。
エストニアからスウェーデンまでの北欧周辺の伝統楽器で、スウェーデン系エストニア人によって開発されたのではないかと言われているが、歴史が複雑なためはっきりとしたことはわからない。民謡で使われるのが主なので、現代曲には使用されない。そのため、今回エストニア代表に選抜されたPuuluupの2人の演奏が放送されることで認知度は高まるだろうと予想される。
まとめ
今回のエストニア代表の選出は、国の文化を世界に発信する重要な機会となるだろう。特にPuuluupの演奏する伝統楽器「Hiiu kannel」は、エストニア含む北欧の音楽文化を象徴し、注目を集めることが予想される。また、伝統音楽と現代音楽を融合させ後世に残していくという課題に対してのある種の解決策となるだろう。文化の交流と相互理解を深める重要な一翼を担うことになる。
2024年のユーロビジョンの開催は5月7日から。無料のネット配信もあるのでエストニアのみならず各国の音楽の流行や文化を感じるのに視聴してみると楽しいかもしれない。
参考
◇ERR：
https://news.err.ee/1609256514/gallery-video-5miinust-puuluup-wins-eesti-laul-and-goes-to-eurovision
◇PILLIPORTAAL： https://pilliportaal.kultuur.ut.ee/parimuspillid/muud-keelpillid/
