ロシア軍ドローンがラトビアに墜落──続くウクライナ支援

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9月7日、ロシア軍のものとされるドローンがラトビア東部に墜落。ドローンはウクライナを狙っていて、爆発物が搭載されていた。ラトビアはロシアとベラルーシに接しており、戦争の影響を受けやすい立場にある。ラトビアはウクライナへの軍事支援を強化しており、その支援は国内でも大きな負担だが、ウクライナの状況を考えると依然として不足していると感じられている。

ロシア軍ドローンがラトビアに墜落──続くウクライナ支援

著者:ラトビアgram fellow さえきあき
公開日:2024年11月5日

ロシア のドローンがラトビアに

9月7日の早朝にラトビアの東端にあるラトガレという地域で、ロシア軍のものと思われるドローンが落下したとのニュースがあった。特にラトビアを狙っていたわけではなく、ウクライナを狙っていたとのことだ。調査の結果、そのドローンは爆発物がついているタイプのものであったことも判明した。ドローンは墜落後に地上で破壊されたという。

墜落した現場の物的証拠はすべて収集され、ドローンの構成部品の詳細な分析が進められている。国家軍は「戦争が続く限りこのようなことが再び起こらないという保証はない」と報告し、戦争の最中にいることを再度認識するように促した。

ロシア・ベラルーシと接するラトビア

ロシア、ベラルーシの2か国と国境を擁するラトビアは、戦争が長引けば次に狙われるかもしれない国の筆頭だ。隣国のエストニアはロシアと、リトアニアはベラルーシと接してはいるが1か国のみで、2か国に接しているのはラトビアだけだ。経済的な面においても、エストニアはフィンランド、リトアニアにはポーランドという巨大なパートナーがいるが、ラトビアは孤立している。隣国2つと比べると少々危ない立場にいるため、今回の事件は夏で浮かれていた気分を引き締めるには充分なものであった。

また、今後はロシア、ベラルーシとの姉妹都市提携が法律で禁止される可能性もある。現在ラトビアのどの自治体も、ロシアやベラルーシの自治体と姉妹提携を結んでいるという情報はないが、将来的な問題を避けるため、法律が制定される可能性があると報じられた。

ラトビアの約20の自治体が2022年までロシアやベラルーシの自治体と姉妹提携を結んでいた。これらの協定は、ロシアによるウクライナ侵攻後、中断または終了した。 法律によって中断していた協定を更新したり、中断解除をしたりして、ロシアやベラルーシとの協力をする可能性を排除しようと試みているのだ。

続くウクライナ支援

ロシアを嫌う感情を持つのはバルト三国だけにとどまらず、ロシアに近い国たちのほぼ全てが同じ感情である。そのため、ウクライナを支援するのは至極当然のことで、国家予算の中からなんとか捻出している。ラトビアの今年3回目となるウクライナへの軍事援助は約4000万ユーロになると、9月11日にウクライナの首都キエフを訪問したシリョーカ首相が発表した。

ラトビアはすでに2025年に向けた軍事支援パッケージの準備を始めており、その中には新型装甲兵員輸送車、無人機、弾薬の輸送、兵士の個人装備の輸送、4,000人の部隊への提供や訓練が含まれているとのことだ。同首相は、ラトビアは今後もウクライナを支援し、年間国内総生産(GDP)の0.25%に相当する1億ユーロ以上の軍事支援を行うことを確約した。2024年のウクライナへの支援総額は2億ユーロを超えている。

支援額が多すぎると思うかもしれないが、筆者のウクライナ人の友人の話を聞く限り、これでも十分とは言えないと感じた。筆者の友人であるウクライナ人女性は、夫がウクライナに残り訓練を受けており、彼女は子供とともにラトビアに避難してきている。

彼女いわく、軍から装備品等は一応支給されるがそれでは不十分であるため、給料の半分を訓練の装備品購入に使わざるを得ないらしい。各国からの支援がどのように使用されているのかは不明だが、訓練をしている人が自費で装備品をまかなう状況が続く限り、支援額が多すぎるということはないだろう。

まとめ

夏休みでゆるんでしまっていた気分が一気に引き締まるニュースであった。ラトビアはロシアとベラルーシに接しており、地理的にウクライナ戦争の影響を受けやすい。今後ロシアとの緊張が続く中、ラトビアは防衛力を一層強化し、NATOやEUとの連携を深める必要がある。また、ウクライナへの支援は経済的負担となるが、自国や地域全体の安全保障に直結するため、継続する意義は大きい。

【参考】
◇LSM:Russian drone that fell in Latvia had explosives attached
https://eng.lsm.lv/article/society/defense/09.09.2024-russian-drone-that-fell-in-latvia-had-explosives-attached.a568090/

◇LSM:Latvian PM announces 40 million euro aid package in Kyiv
https://eng.lsm.lv/article/politics/politics/11.09.2024-latvian-pm-announces-40-million-euro-aid-package-in-kyiv.a568455/

◇LSM::Town twinning with Russia, Belarus could be banned by law in Latvia
https://eng.lsm.lv/article/politics/politics/11.09.2024-town-twinning-with-russia-belarus-could-be-banned-by-law-in-latvia.a568420/?utm_source=lsm&utm_medium=article-bottom&utm_campaign=article

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エストニア在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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