「越境ソーシャルリスニング」はこれからの海外マーケティングのスタンダードとなる!(1)
企業マーケターにとって絶対的スタンダードとなっていくマーケティング施策「ソーシャルリスニング」。SNSから読み取った市場構成者の真実の姿は、商品の販売促進キャンペーンに活用することもできるし、次世代の新商品を開発する際にも活用できる。
各国ローカル市場の若者が多種多様な情報を書き込み、シェアしているTwitter、YouTube、Instagram、Facebookなどのソーシャルメディア(以下SNS)、これらの情報を正確に読み取っていくと、特定の市場を構成する人たちの真実の姿が見えてくる。海外で展開する日本の消費財メーカーも、各国ローカル市場展開の参考のために「ソーシャルリスニング」を活用することができる。
著者:gramマネージャー 今泉 大輔
公開日:2021年1月25日
越境ソーシャルリスニングの実際(1)
越境ソーシャルリスニングのメリット
日本にいるマーケティング関係者が海外SNSから情報を得る利点として、「比較的安価に現地の生の状況をキャッチできる」という点を挙げることができる。
例えば、インドネシアのお菓子事情。
消費財メーカーがマーケティングに活用できる情報を得ようと思えば、従来であれば、相応のコストをかけて本格的なマーケティング調査を行うしか方法がなかった。どのようなセグメント顧客がどのようなお菓子を食べているのか?SNSがないとすれば、日本にいては全くわからないから、現地でしかるべき手法による調査をするしかなかった。
しかし現在では、しかるべきキーワードでSNS投稿に絞り込みをかけ、ノイズに相当する投稿を除いた上で、丁寧に個々の投稿を読み込んでいくならば、多種多様なインサイト(気づき)を得ることができる。
また、膨大な数の投稿が見つかった場合でも、期間を区切って投稿数の増減を調べることなどにより、何らかの傾向が把握できる。競合製品と比較することで、消費者心理の動きをより深く知ることもできるようになる。
越境ソーシャルリスニングの可能性は実に大きい。
SNSへの投稿イメージ
食品メーカーXのケース
事例として、ある食品メーカーXがインドネシアで販売しているYという健康食品について、ソーシャルリスニングでいくつかの知見を得たケースを記す。
メーカーXは、インドネシアに製品製造工場を設けた。それまでは、日本で生産した製品をインドネシアに送って販売していたが、インドネシア市場である程度まとまった量の売上が見込めるようになったため、生産工場を現地に設けた。
工場新設とは別に、製品Yについては、消費者向けの啓蒙キャンペーンが長く続いていた。Yはインドネシアの同種のスナック菓子と比べると単価が高い。従って、付加価値をきちんと説明して、価格が高いなりの価値があることを消費者に印象付ける必要がある。健康食品Xは、太りにくさを示す数値Zの値が他の製品を大きく上回っている。そこで同メーカーは、この太りにくさを示す数値Zについて啓蒙キャンペーンを行うようになった。
Twitterでは、製品YのZの値について言及する投稿が、数は多くないものの、定常的に見られるようになった。特に注目されるのは、栄養管理士の専門家が、専門家の視点からZの値が大きい事実をツイートし、かつ、関連のイベントにも出席していて(栄養管理士のための製品Xのイベント)、それを克明にTwitterで報告していることだった。このことから、1年以上続いてきた数値Zの啓蒙キャンペーンは確実にターゲットに届いており、それが結実しつつある(専門家がエバンジェリストとなって放っておいても宣伝してくれる状態になっている)ことがわかった。
SNSへの投稿イメージ
競合企業もソーシャルリスニングを活用できる
これをメーカーXの競合の視点から見るとどうなるか?
インドネシア市場を攻略するにあたって、ソーシャルリスニングを施せば、メーカーXが過去数年にわたって行ってきたマーケティングキャンペーンのうち、ターゲットに確実に届いているものについては、それを把握できるということである。
かつ、それを把握した上で、インドネシアでどのようなキャンペーンの手応えがあるか、どのような層がキャンペーンに反応しているかを、ある程度まで理解することができるようになる。
これができれば、競合メーカー製品Yの競合製品をインドネシアに投入する際に、どのようなキャンペーンを行うべきかを、予めリアリティのある理解をベースに組み立てることができるということである。