インド:インド-中国の国境での軍事衝突と二国間の貿易問題について

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インド-中国国境付近での軍事衝突以降、インドの反中国感情が高まり、インド国内では中国企業の製品や中国からの輸入品をボイコットする声が高まっている。専門家たちは、インドが中国との貿易を突然厳しくしたり、大幅に削減したりすることは難しいと述べている。しかしながら、インドは、以前から企業の国内生産の促進に焦点を当ててきており、外国企業(中国以外)に投資の機会を生み出してきている。この状況は、インドと中国の関係のターニングポイントになる可能性がある。インドは商品貿易以外にも対中行動を起こしており、中国製のスマートフォンアプリを禁止し、中国からの投資を特に厳しく規制している。

インド-中国の国境での軍事衝突と二国間の貿易問題について

著者:gramパートナー 西山 
公開日:2020年09月25日

貿易赤字の拡大

今世紀初め以来のインドと中国の二国間貿易の急速な拡大は、中国をインドにとって最大の貿易相手国として浮上させた。過去三年間、この二国間の貿易は二桁の堅調な成長を記録している。2018年の二国間貿易は、前年比13.34%増の957億米ドルに達した。同年のインドの中国からの輸入額は12.89%増加して768.7億ドルになり、貿易赤字は580.4億ドルに拡大した。

インド・中国 二国間貿易(単位:10億ドル)
インドから中国への輸出 中国からインドへの輸入 輸入-輸出 貿易額合計
2014年 16.41 54.24 37.83 70.65
2015年 13.39 58.26 44.87 71.65
2016年 11.75 59.43 47.68 71.18
2017年 16.34 68.1 51.76 84.44
2018年 18.83 76.87 58.04 95.7
2019年1-11月 16.32 68 51.68 84.32
北京インド大使館 出典: 中華人民共和国海関総署

中国-インド国境における軍事衝突の貿易への影響

インドと中国の軍隊は、両国の国境付近のラダック地域において、ここ数週間にわたり激しい戦闘を繰り広げた。少なくとも50年間で最悪の紛争である。
二国間の軍事衝突は、貿易に影響を及ぼし、二国間関係と地域の安全を急激に悪化させる恐れがある。

この紛争により、インドでは中国製品のボイコットや中国からの輸入規制を求める声が高まった。しかし、専門家は国境の緊張は両国間の貿易にすぐには影響しないかもしれないと言う。「二国間貿易への影響は見られない」とインド輸出連盟S. Kサラフ氏は述べた。
同時に専門家は、状況がさらに悪化すれば二国間の貿易関係に影響を与える可能性があると警告した。インドは中長期的に中国への依存度を下げることを目指している。これは最近の政府の行動でも明らかであり、二国間関係のターニングポイントといえるかもしれない。

ガルワン渓谷での紛争後のインド政府の対策

最近のガルワン渓谷でのインド軍兵士と中国人民解放軍の間の衝突の後、インド政府は中国からの投資の枠組みの規制を強化し、中国からの直接または間接投資が政府によって承認されなければならないよう修正された。中国からのインドのIT関連の新興企業と製造業への投資は、過去5年間で急増している。

インド政府はまた、TikTok、WeChat、Heloなどのトップソーシャルメディアプラットフォームを含む中国の118のモバイルアプリケーションを禁止し、これらのアプリケーションによってもたらされる国の主権と安全に対する脅威に対抗した(Economic Times)。

さらに、政府に商品やサービスを提供しようとする中国企業に対する規制を強化した。この規制は、州政府、国営企業や銀行、官民パートナーシップなど、幅広い公共部門のビジネスに適用される(Economic Times)。

浮き彫りになる問題点

二国間紛争は、既に物流業界の混乱を引き起こしている。DHL Express Indiaは、最近インドへの貨物の通関手続きが遅れているため、中国本土からの輸入貨物の集荷を一時的に停止している。

2018年と2019年には、インドのコンピューターの92%、テレビの82%、光ファイバーの80%、オートバイのコンポーネントの85%が中国から輸入された。電子機器、医薬品、ITハードウェアなど、インドの多くの産業は、特に中国からの輸入に大きく依存している。2019年4月から2020年2月までの間に、電子製品の総輸入額は3.59兆ルピーに達した。このうち、中国からの輸入は1兆4,200億ルピーであり、電子製品部部門総輸入額の40%に相当する。また、太陽電池パネルの約80%を中国から輸入しており、太陽電池への関税の引き上げも検討されている。(データ出典元:インド政府、商務省)

中国は報復を控えたが、深い懸念を表明し、中国とインドの経済の強制的な分離は世界的な傾向に反する、と中印インド大使がインドを牽制した。さらに中国からの投資に対する敵意を是正するよう求めた。 これらの動きの経済的影響は最初はそれほど大きくないようであるが、インドが中国への依存から脱却し、米国や日本などの国とより強力な戦略的関係を作ることを決定した場合、より大きな影響が生じる可能性がある。

西山謝志

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gram パートナー リサーチコンサルタント インド・コンサルティング Exxonテクニカル・サービス・エンジニアを経て日本・東南アジア地域統括マネジメント...

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