インドネシアで高まる日本のラーメン人気
インドネシアの経済成長は、その食文化にも大きな影響を与えています。特に日本のラーメンは、多様化する食のトレンドの中で新たな注目を集めています。都市部を中心に、ラーメンは独自の市場を形成し、食の多様性を豊かにしています。このコラムでは、インドネシアにおける日本式ラーメンの浸透と、その背後にある要因を探ります。
インドネシアで高まる日本のラーメン人気
著者:インドネシアgramフェロー 尼野さらさ
公開日:2023年 12月5日
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インドネシアの麺文化
インドネシアの食卓では、麺が存在感を示しています。日本でのラーメンやうどんのように、インドネシアにも独自の麺料理が存在し、地域によって異なる豊かな食文化を形成しています。たとえば、日本でも親しまれている「ミーゴレン」は炒めた麺(ミー)に様々なトッピングを加えた料理で、インドネシアの代表的な麺料理です。
インドネシアは世界でも有数のインスタント麺消費国であり、その消費量は経済発展と共に増加しています。WINAのデータによれば、2022年のインスタント麺の消費量は約142億6000万食に達し、これは国民ひとり当たりの年間消費量が70食以上になるという計算です。この数値からもインドネシアにおける麺への深い愛着が伺えます。
(引用元:World Instant Noodles Association https://instantnoodles.org/en/noodles/demand/table/)
日本のラーメンとインドネシアの相性
日本のラーメンがインドネシア市場で受け入れられているのは、このような麺文化の土壌があるからこそでしょう。インドネシアの消費者は、新しい味や異なる地域の料理など積極的求めており、日本のラーメンにも関心を寄せています。
日本のラーメンチェーン「一風堂」は、ジャカルタのショッピングモールに8店舗を展開し、2023年8月には地方都市スラバヤにも進出を果たしました。豚肉を禁忌とするイスラム教徒が国民の約87%を占めるインドネシアにおいて、とんこつラーメンがどこまで広く受け入れられるのか注目が集まっています。
「麺屋桜」はジャカルタのショッピングモールに6店舗、地方都市ソローにも店舗を構えています。日本で提供されるラーメンを忠実に再現するだけでなく、インドネシア人の好む辛みの強いメニューも開発し、人気を博しています。
また、日本の森ビルが運営する「Jakarta Mori Tower」内に出店した「MYMON」は、革新的な鶏白湯カプチーノラーメンを提供しています。オープンから半年が経過した現在も、ランチタイムにはこのラーメンを求めて行列が店外にまで伸びるほど。この現象は、日本のラーメンがインドネシアの食文化において、単なる一過性のトレンドではなく、確固たる地位を築きつつあることを示しています。
他にも、「スガキヤ」、「清六家」、「山ト天」といった日本のラーメン店がジャカルタの主要ショッピングモールに出店し、日本のラーメンの多様性と地域ごとの特色を現地の人々に紹介しています。これらのラーメン店は、日本の本格的な味わいを提供するとともに、インドネシアの消費者の好みに合わせたメニューをあわせて展開しており、インドネシアの食文化に見事に適応しています。
一方で、インドネシア国内最大手のインスタント麺ブランド「インドミー」は、和風ラーメンの新フレーバーを市場に投入し、ジャカルタで「Yatai Ramen Indomie」のポップアップイベントを開催しました。インドネシア市場での日本のラーメンの注目度の高さを表す一例といえます。
日系ラーメンビジネスの鍵
インドネシアでの日系ラーメンビジネスの成功には、市場のニーズを理解し、文化的適応を図ることが不可欠です。インドネシアの外食市場は、Mordor Intelligenceによると2020年から2025年にかけて年平均5.1%の成長が見込まれており、特に中間所得層の拡大がこの成長を牽引しています。これらの消費者は新しい食体験を求めており、日本のラーメンはそのニーズを満たすポテンシャルを持っています。
(参考元:Indonesia Foodservice Market Size & Share Analysis – Industry Research Report – Growth Trends
https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/indonesia-foodservice-market)
インドネシア人は唐辛子の辛みを好むため、市場ニーズに応える戦略として辛さの強いメニューのバリエーション強化が挙げられます。また、ムスリムの多いインドネシア市場では、ハラル食品への配慮は特に重要です。日本のラーメンチェーンがハラル認証を取得した食材を使用することで、より広い顧客層にアピールすることが可能になります。
昨今、日本風の屋号を冠したインドネシア資本のラーメン店チェーンも増加しています。これらのチェーンは、食文化への深い理解を背景に現地の嗜好に合わせたメニューを開発していますが、日本のラーメン店が独自の品質と本格的な味わいを提供することで、これら現地資本との差別化を図ることが可能です。
さらに、デジタルマーケティングの活用も重要です。インドネシアは若い人口が多く、ソーシャルメディアの利用率が高いため、オンラインでのプロモーションは顧客獲得に効果的です。インフルエンサーやSNSを通じたマーケティングは、ブランド認知度の向上に寄与します。
まとめ
インドネシア市場での日本ラーメンの将来は、その国固有の食文化と経済の流れに深く根差しています。経済の発展に伴い進化する消費者の嗜好を理解し、地元の食材を取り入れたメニューの革新や、ターゲットを絞ったデジタルマーケティング戦略が事業の成功を左右します。日本への旅行が盛んなインドネシア人にとって、ラーメン店は訪れるべきスポットとしての地位を確立しており、筆者自身もインドネシア人の知人からおすすめの店を尋ねられることが増えました。ラーメンは単なる食事の選択肢を超え、文化的な繋がりを築き、新しいビジネスチャンスを生み出しています。