急成長の秘密:GDP25%増の戦略マレーシア

マレーシア

アジア経済の新たな主役、マレーシア。2030年までに高所得国入りを目指す同国の躍進が止まりません。一人当たりGNIが14,291ドルに達し、GDP成長率5.4%を記録するセランゴール州。この急成長の裏には、
どのような戦略があるのでしょうか?本コラムでは、マレーシアの経済改革の核心に迫り、日本企業が活用できるビジネスチャンスを探ります。

マレーシア|2030年までに高所得国入り  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年10月17日

マレーシア全体のGDPの25.9%

セランゴール州の2023年のひとり当たりのGNI(総所得)は14,291ドル(約211万円)で、「高所得」の最低基準を超えました。

他にもクアラルンプールの29,967ドル(約442万円)、ラブアン(連邦直轄地のひとつで低税率地)、ペナン(クアラルンプールに次ぐ都市圏で世界遺産のジョージタウンがある)、サラワク(ボルネオ島側にあるマレーシアで1番面積が大きな州)が高所得地域に認定されています。

セランゴール州は5.4%の経済成長も記録していて、これはマレーシアの全州の中で最高の成長率でした。

多次元貧困の可能性も

セランゴール州は絶対的貧困の発生率は非常に低く、深刻な貧困の事例もありません。

しかし専門家は、セランゴール州の人口の一定部分は、住宅、健康、教育、社会福祉などの問題で多次元貧困に直面する可能性があり、対処する政策が必要になるだろうと警告しています。

さらに「高所得な経済は、必ずしも貧困と相関関係にあるわけではなく、セランゴール州が直面している本当の課題は、低所得世帯で暮らす人々の数を減らすことで経済を改善することだ。」とも述べています。

GDP成長の持続

経済学者のラジャ氏は、セランゴール州の一人当たりGNIは世界銀行が定める基準をわずかに上回っているだけなので、最大の課題はかなり急速にGDPの成長を達成することだと述べました。そのためには、生産性を高める経済活動を行い、付加価値の高い、より高度な技術への投資を引き付けることが重要であるとしています。

日本の高専制度を参考に

またラジャ氏は、理論的な学習と広範で実践的な訓練を統合したカリキュラムを通じて、熟練した技術者を5年間で養成している日本の「高専制度」と、ドイツの理論教育と実践訓練を統合した職業教育モシステムを参考に職業訓練を行い、貧困層を無くしてより付加価値の高い経済活動を行うべきだとも提言しています。

所得増加の理由

マレーシアの経済は、長らく石油や天然ガス、パーム油やゴムなどの一次産品に依存していました。近年では製造業やサービス業にシフトしていて、2021年には電子機器と電気機器が輸出の約37%を占めるまでに産業の多様化が進んでいます。

技術革新が進み、半導体産業などのハイテク産業も急速に成長していて、付加価値の高い製品を製造・輸出できるようになり、所得が増加しています。

また、マレーシアはいわゆる「中所得国の罠」や「資源国の罠」にも長期にわたっては陥っていません。

これは、経済構造をうまく転換できたこと、教育の積極的に投資した結果、人材育成に成功したためと考えられています。

持続可能な成長と挑戦

マレーシアが高所得国になるためには、持続可能な成長が求められます。

環境への配慮や経済のデジタル化など、将来的な課題にも対応する必要があります。

民族間や地域間での格差の是正もマレーシアにとっては重要な課題です。

高所得国になることで、国際的な地位が向上し、地域内でのリーダーシップを発揮する必要性がでてきます。アジア太平洋地域での経済的な中心地としての役割を果たすことが必要になると同時に期待されています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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