BYD「Seal」 2024年カーオブザイヤーに選出

マレーシア

今年の最高賞である「カー・オブ・ザ・イヤー」は、BYDの「シール・プレミアム」に授与されました。

電気自動車(EV)がこの栄誉ある賞を初めて受賞した歴史的な瞬間でした。
これはマレーシアにおいて、EVへの移行が進んでいることを示しています。

今記事では、特殊事情があるマレーシアの自動車産業におけるEVの現状と今後について深掘りします。

BYD「 Seal」 2024年カーオブザイヤーに選出  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年5月1日

カーオブザイヤー

マレーシアの「カー・オブ・ザ・イヤー」は、Mobility Media(自動車関連情報の発信)とマレーシア国際貿易産業省(MITI)の傘下である「マレーシア自動車・ロボティクス・IoT研究所(MARii)」が共催しています。 2002年に開始され、自動車業界における重要な賞であり、近年ではEVの台頭が注目されています。

自動車産業にとって記録破りの年

2024年はマレーシアの自動車業界にとって画期的な成果を達成した年でした。

新車販売は初の80万台越えを達成しています。この成長は電気自動車の導入促進が影響しているとみられています。

マレーシアはASEAN域内で自動車イノベーションのリーダーとしての地位を固めていますが、グリーンモビリティ部門でもリーダーとして躍進していきそうです。

​特殊事情のマレーシア自動車産業

マレーシアの自動車産業は産油国であることや、国民車メーカーの存在など、特殊な条件下にあります。

特に国民車の存在感は大きく、国民車メーカーであるプロトン(Proton)とプロドゥア(Perodua)が強固な地位を築いており、2023年の新車販売台数において両社で市場シェアの66.9%を占めました。 プロドゥアはダイハツ工業と三井物産が出資しており、2023年には前年比17.1%増の33万325台を販売し、市場シェアの41.3%を占めています。

政府は補助金を出しているため、ガソリン価格が1リットル約70円程度と非常に安いことが特徴です。

日本車も存在感

日本車(トヨタ、ホンダ、日産など)も根強い人気があり、ハイブリッド車(HEV)の販売がEVよりも好調な状況です。しかし2019年以降、日本車の販売台数はマレーシアで5%程度減少しており、中国メーカーの台頭が影響を及ぼしているとみられています。

ガソリン補助金の影響

マレーシア政府は低所得層の負担軽減を目的として、ガソリン価格に補助金を提供しています。

現状ではEVの購入価格がガソリン車よりも高く、充電インフラも十分に整備されていないため、多くの消費者はEVを選択しにくい状況にあります。

しかしこの補助金は国の財政負担が大きく、政府は将来的な補助金削減を検討中です。

もし補助金が縮小、あるいは撤廃されれば、ガソリン価格が上昇しそれによってEVのコストメリットが高まれば、EV市場の成長を後押しする可能性があります。

また、中国のBYDをはじめとするEVメーカーが価格を下げる戦略を取ることで、市場競争が加速する可能性もあります。

日本メーカーも戦略の見直しが必至

マレーシアの自動車市場は、産油国であることやガソリン補助金、国民車メーカーの存在など特殊な条件下にあります。そのためEVの普及は一筋縄ではいかず、日本メーカーにとっても戦略の見直しが求められています。

今後の予想としては、短期的にはガソリン車とハイブリッド車が主流であることは間違いないでしょうが、BYDなど中国メーカーが低価格戦略でEV市場を拡大させていき、競争が激化していくと思われます。

補助金の動向と充電インフラの拡充がカギとなりそうです。

日本メーカーはマレーシアのEV市場でも競争力を高める必要があるでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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