GDP成長率が順調のマレーシア| 2026年には高所得国入り
先日マレーシアのラムリ経済相は「マレーシアの国内総生産(GDP)の成長率が、今後年率4~5%で継続してリンギが上昇すれば、早ければ2026年には高所得国入りできる」との見通しを示しました。
よく言われる「中所得国の罠」から、マレーシアは抜け出すことができるのか。
今回は、この記事を紹介するとともに、マレーシアの経済の特徴と実態について解説します。
マレーシア 高所得国入り間近
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年2月8日
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中所得国の罠
「中所得国の罠」とは、多くの新興国が中所得国になったあと、高所得国になかなかなれないことを言います。ひとり当たりのGDPが、3,000ドルから1万ドルまでの国を”中所得国”と世界銀行では定義しています。
中所得国の罠の原因にはさまざま考えられますが、教育の質が低く、普及が十分ではない点があげられます。しっかり教育を受けた人材が不足していると、高度な技術や付加価値の高い製品やサービスを生み出すことが難しくなり、成長が鈍ってしまいます。
また、制度の整備やインフラが不十分で法制度や政治的な環境が不安定なところも、企業の自由な経済活動や経済的な成長に悪影響を与えます。
マレーシアの停滞
マレーシアの場合は、1996年にはすでに上位の中所得国になっていました。
しかし、それからすでに27年が過ぎています。中所得から高所得国への移行に15年以上かかる国は、「中所得国の罠」に陥っていると言われますが、まさにマレーシアはこの罠に陥っている状態です。
台湾・韓国は罠に陥らず
現在マレーシアの人口は3,340万人で、台湾が2,300万人、韓国が5,100万と、人口に大差はありません。
国名 | 人口 |
マレーシア | 3,340万人 |
台湾 | 2,300万人 |
韓国 | 5,100万 |
シンガポール | 545万 |
1981年時点での1人あたりGDPもほぼマレーシアと同じでした。
しかし、台湾は1986年に、韓国は1988年に中所得国となり、それぞれわずか7年で高所得国になっています。
人口がおよそ6分の1程度の隣国シンガポールも10年ほどで移行しており、2022年にはGDPが約82,800米ドルで世界第6位まで発展しています。
台湾・韓国・シンガポールとの差は?
ではこの4ヶ国の差はどこにあるのでしょうか?
マレーシアとは違って、他の3ヶ国には民族問題がない点がまず挙げられます。
マレーシアでは、1969年に首都クアラルンプールで起きた民族暴動で200人の死者が出ており、いまだにその衝撃は忘れられていません。人口では3割に満たない中華系が経済のほとんどを握る、いびつな構図のひずみが噴出したためです。
また、他の3ヶ国は石油や天然ガスなどの天然資源に恵まれなかったことです。そのため、工業化を早期に推し進めていくしか道がなかったのです。
「資源国の罠」には陥っていない
マレーシアは天然資源に恵まれてはいますが、サウジアラビアなどの中東国と違って天然資源に頼った工業化が進んでいない、「資源国の罠」には陥っていません。マレーシアの最大の輸出品は、電気・電子製品で、これらが全体の4割を占めており、主要な産業になっています。
2022年の成長率は8.7%
2022年のマレーシアの高い成長率は、コロナ禍からの経済の回復力を反映しているとみられています。
しかし、ウクライナ戦争やイスラエル紛争のため、2023年には世界経済の成長が減速することが予想されています。マレーシア経済にも大きな影響を与える可能性があると懸念されており、予測・期待通りの成長率を維持するのは困難との見方もあります。
しかし、マレーシアは30年近くかかりながらも確実に前進しているので、多少の停滞があっても必ずや高所得国と先進国の仲間入りすることは間違いないでしょう。