オフィス空室率 アジア地域で最高

クアラルンプールのオフィスの空室率が、依然として他のアジア太平洋地域よりも高いことがわかりました。
この十数年でコンドミニアムが乱立し、明らかに空室が多いとは感じていましたが、オフィスに関しても同様の傾向があるようです。
今回はクアラルンプールのオフィス事情について解説します。

オフィス空室率 アジア地域で最高
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年7月29日
空室率は25.9%

英国の不動産サービスの大手ナイトフランクによると、アジア太平洋の地域の主要な23都市の中で、2024年10~12月にかけての高級オフィスの空室率は、クアラルンプールが25.9%と最も高かったということです。
一方、シンガポールや東京の具体的な空室率に関しては同調査では明らかにされていませんが、他の調査データを見ると、シンガポールではオフィス需要が回復し空室率が低下、賃料が上昇する傾向が見られます。東京に関しては空室率の上昇が一服し、賃料の下落傾向が続いて、空室率は3%程度と見られています。
賃貸料はアジアで最低額
クアラルンプール首都圏のオフィスの賃料は、1平方フィート当たり年額平均で18.98ドル(約2,878円)と安定していて、23都市中で最低価格でした。
不動産コンサルタントによると、賃料は下降圧力に直面しているが、ミッドバレーやクアラルンプールエコシティ、クアラルンプールセントラル、バンサーサウス、および市内中心部のTRXなどの主要エリアにある最高級グレードAのオフィスビルでは、新規テナントや事業統合を進める企業の関心を集め続けていて、入居率と賃料は若干上昇しているということです。
クアラルンプールのオフィス市場の現状
上述のように、クアラルンプールでは空室率の上昇とグレードAオフィスへの需要の集中が目立っています。
この背景としては、オフィスの供給過剰とコロナ禍以降のリモートワークの普及によってオフィス需要が減少したことがあげられ、賃貸市場は借り手が有利な状況が続いています。
特に古いオフィスの賃料は低下しており、値下げやフレキシブルな契約条件が増加しています。
グレードAオフィス vs. 古いオフィス
ここで、グレードAのオフィスと古いオフィスの比較を見てみましょう。
グレードAオフィスの特徴としては以下があげられます。
立地 | KLCC周辺、TRX(トゥン・ラザク・エクスチェンジ)、バンサーサウスなど |
設備 | 最新のITインフラ、エネルギー効率の高い設計、ハイエンドのセキュリティシステム |
賃料相場 | RM 6〜12/平方フィート(月額) |
古いオフィスの特徴は以下の通りです。
立地 | KL中心部やダマンサラ、チョウキットなどに点在 |
設備 | エアコン、照明、エレベーターなどが老朽化 |
賃料相場 | RM 3〜6/平方フィート(月額) |
テナント離れが進み、空室率が50%を超えるビルも見受けられます。
質的向上が優先事項に
マレーシア、特にクアラルンプールのオフィス市場は移行期にあたり、入居者の最優先の事項は環境の質となりつつあります。特に職場環境や従業員の福利厚生、そして企業統治を重視する企業では、質の高いオフィスへの需要がさらに増加すると予想されます。
一方で、供給過剰やオフィス市の場競争の激化といった課題も存在しており、どのように物件の差別化を図るかが鍵となっています。
「借り手市場」が続く見込み
クアラルンプールのオフィス市場は、引き続き供給過剰と需要の変化に直面し、今後数年にわたって”借り手市場”が続くと予想されます。
これからクアラルンプールに進出を考えている企業にとっては、低コストでオフィスを確保できる絶好のタイミングといえます。