マレーシアの高速道路のETC(電子料金徴収)制度

マレーシア

マレーシアのジョホールバルとシンガポールを結ぶ2つの橋は、世界でも最も交通量が多い道で、毎日大渋滞を起こしています。
渋滞を緩和するために、マレーシア政府はシンガポール国民に対し、2024年10月1日から「車両入国許可証(VEP)」の取得を求める制度が施行されました。
今回はこの「車両入国許可証」制度と、マレーシアのETC制度について解説します。

マレーシアの高速道路のETC(電子料金徴収)制度  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年2月27日

RFIDタグ

シンガポール国民が乗用車でマレーシアに入国する際には、マレーシアの車両入国許可証(VEP)の「RFIDタグ」を用意することが義務付けられました。
シンガポールでのタグの受け取りには39シンガポールドル(約4,500円)の費用がかかり、タグの発行手数料として10リンギット(約350円)も必要となります。
このRFIDタグは外国登録車両を瞬時に識別するために使用され、マレーシア入国時に課されている20リンギット(約700円)の道路使用料の支払いに使われるだけではなく、マレーシア国内での高速道路での通行料の支払いの際にも使用可能です。

違反者には罰金か懲役が科される

10月1日以降、VEPを持たずにマレーシアに入国した場合には違反措置が取られ、有罪判決を受けた者は、最高2,000リンギット(約7万円)の罰金、または最長6カ月の懲役が科せられる可能性があると、マレーシアのローク運輸大臣は注意を促しています。
現在シンガポールで登録された自動車のうち、VEPタグが有効化されているのは約7万台のみであると述べています。

複数あるマレーシアのETC

このRFIDタグは、マレーシアに複数存在しているETCシステムのひとつです。
マレーシアの高速道路のETC(電子料金徴収)制度には、主に「タッチアンドゴー(Touch ‘n Go)」と「RFID(Radio Frequency Identification)」そして「Smart TAG」の3つの方式があります。それぞれのシステムついて説明します。

1、タッチアンドゴー(Touch ‘n Go)
1997年に導入されたマレーシアのETCシステムの中で最も古いもので、プリペイドカードを使用して専用のタッチポイントにカードをかざして通行料金を支払います。
マレーシア国内の高速道路だけではなく、駐車場や公共交通機関の一部でも使用可能です。
タッチポイントにかざさなければならないため、料金所での渋滞が課題となっています。

2、Smart TAG
高速道路の料金をキャッシュレスで支払うための方法です。Smart TAGは、特に地方の特定のエリアで導入されていることが多く、専用の車載デバイスを利用して料金を徴収します。車両がゲートを通過すると専用のスキャナーによって料金が自動的に差し引かれる仕組みです。

3、RFID(Radio Frequency Identification)
RFIDシステムは、タッチアンドゴーの料金所での渋滞という課題を解決するために導入されました。車両のフロントガラスに貼り付けられたRFIDステッカーを使用し、車がRFIDゲートを通過するだけで自動的に通行料が徴収されます。自動的にスキャンされるため、減速することなくゲートを通過でき、渋滞の解消につながると期待されています。

なぜ統一しないの?

タッチアンドゴーが長く使用されてきたため、すぐに新システムに移行するのは難しいという事情があります。RFIDを導入しながら既存のタッチアンドゴーユーザーの便宜を図るため、両システムを並行して運用しています。

現在ドライバーは複数のシステムを使っていて、渋滞度などを見極めてどのゲートを利用するかを料金所の直前で決めています。

緩さも重要

政府はタッチアンドゴーからRFIDに完全に移行するためのインフラ整備、啓蒙活動を進行中ですが、全国のゲートがすべてRFID対応になるまでには相当時間がかかると予測されています。
タッチアンドゴーを使い慣れている人が多いため、いきなりひとつのシステムに統合するのではなく、両システムを維持しながら移行を進める模様です。

現時点では、ドライバーが自分の車の利用頻度や使用パターンに応じてシステムを選ぶ柔軟性が求められています。マレーシアらしい緩やかさのある段階的な移行により、政府は混乱を最小限に抑えようとしています。

Malay Dragon

18,495 views

マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

プロフィール

関連記事一覧