マレーシア 消費税・サービス税の改定 

マレーシア

マレーシア政府は2025年7月1日から売上税率を改定し、サービス税の対象範囲を拡大しました。

現地社会のみならず、日本人コミュニティにも少し動揺が見られます。

マレーシア 消費税・サービス税の改定   

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 9月16日

消費税(SST)の強化

非必需品や高級品に 5~10% の課税が開始されます。タラバガニやサーモン、輸入果物などにも消費税(SST)がかけられます。

一方、食料や医薬品・教科書などの生活必需品や基礎商品は0%のまま維持されます。

サービス税(Service Tax)の対象拡大

賃貸・リース、建設、金融(手数料)、民間医療、教育、美容の6分野を新規対象に追加し、税率は6~8%です。

ただし住宅賃貸や国民向けの公共医療・教育などは免税・除外されます。

税の改定の背景

今回の消費税の強化とサービス税の適用範囲の拡大の背景には、マレーシア政府が進める「財政健全化」の方針があります。

急速に増加する社会保障支出や、インフラ整備、さらには低所得層への現金給付といった政策を支えるためには、安定的な税収基盤の確保が必要となるからです。

かつて導入されたGST(物品・サービス税)は、反発を受けて2018年に撤廃されましたが、その後の財政のぜい弱さを補う形で、より限定的かつ対象を絞ったSSTの拡大という形が今回選ばれました。

税の改定の経緯

今回の改定は、影響を受ける範囲を中所得・高所得者層に集中させることで、制度への反発を最小限に留めるという政策判断がなされました。

税制改正はアンワル首相が昨年10月の政府予算の発表の際に明らかにされており、当初は5月に施行する予定でしたが、財界から懸念の声が上がり延期されていました。

これもまた、2018年のGST導入時の反省を踏まえた慎重な制度設計の現れといえるでしょう。

税の改定の影響

贅沢品や輸入品の価格が上昇することとなり、一般消費者にとっては生活コストや買い物の動機に影響あると予測されていますが、生活必需品への課税据え置きによって低・中所得層の負担は相対的に軽微になっており、抑制されています。

日本人社会への影響としては、日本人駐在員や長期滞在者が利用する私立学校や医療、語学学校・美容サービスにまで課税が適用されるため、月々の支出が増える可能性があり、オフィスや店舗の賃貸料や、リースなどに対する税負担も重くなるため、日系企業のコストが上昇することが懸念されています。

数年先を見据えた視点

SSTはGSTに比べて二重課税リスクもあります。ただ、必需品の非課税の措置がある点では、低所得層への配慮が見られます。

将来的には、より公平で効率的な税制、ポストSSTの税体系の構想がカギとなりそうです。

日本人社会としては事前対策が重要となるでしょう。

月ごとの費用の見通しを計算し、ビジネスや家庭で事前説明するといった信頼維持の姿勢が必須となるでしょう。

「消費税・サービス税改正」が日本人社会にも影響

2025年7月にマレーシアで実施された消費税・サービス税の改正は、財政健全化と社会保障拡充を目的とした大きな転換点です。高級品や一部サービスへの課税強化により、外国人居住者や中間層以上の生活費に影響が出ると予想され、とくに日本人社会では、私立医療、教育、美容サービスなどでの負担増が懸念されています。ただし生活必需品は非課税のままで、低所得層への配慮も見られます。

私たちに求められるのは、正確な情報のもとで影響を見極め、家計やビジネス面での備えを早めに講じることです。

マレーシア社会は次なるステージに向け、柔軟な対応が必要となるでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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