クアラルンプールで渋滞税の導入を検討 

マレーシア

首相府相(連邦直轄地担当)のムスタファ大臣は、クアラルンプールと他の2都市で、慢性的な渋滞の緩和策として「渋滞税」の導入を検討していると述べました。

アジアでも有名なクアラルンプールの渋滞に、政府が本格的に取り組んでいくようです。

今回の記事ではこの渋滞税について紹介するとともに、その影響を解説します。

クアラルンプールで渋滞税の導入を検討  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年7月10日

過去にも検討…

マレーシアの交通渋滞を緩和するために渋滞税を導入するというアイデアは、過去にも何度か議論されていますが、この度それに関する調査が行われていると報じられています。

ムスタファ大臣は「現在、マレーシア道路安全研究所とマレーシアグリーンテクノロジー・気候変動公社によって研究中である」と述べたうえで、実施メカニズムや渋滞税が導入された場合の公共交通機関の利用予測などの要素が検討対象となっていると付け加えました。

最大で20%の削減可能

ムスタファ大臣は「この調査は今年中に完了予定で、渋滞税の導入によりクアラルンプールの交通量は最大20%削減できる」と述べました。

そして「料金は低すぎることは許されないが、ドライバーが特定の道路を利用しなくなるようにすべきで、消費者に負担がかかるような高すぎる料金も望んでいない」と述べています。

200億円の経済損失

同氏は、クアラルンプールは交通渋滞により200億リンギ(約6,690億円)の損失が発生したことが明らかになったとし、交通渋滞に対処するには、国民が公共交通機関を利用するような包括的な対策を講じる必要があると強調しています。

渋滞の原因

マレーシアは東南アジアで有数の車社会であり、乗用車の総台数はインドネシアに次ぐ2位で、1,000人あたりの乗用車の数は地域内で最も多い状況です。ひどい渋滞の影響は経済的損失ばかりではありません。特にコロナ禍後は自動車購入の税金の免除政策もあり車の販売が急増し、公共交通機関の利用者の減少や、スクールバス利用者の減少も相まって渋滞がさらに悪化しています。

渋滞税の導入の背景

慢性的な交通渋滞を緩和するための渋滞税は、「クアラルンプール交通マスタープラン2040」に盛り込まれた対策の一環であり、現在、その有効性評価に向けた調査が行われています。

これはシンガポールなど他国での導入成功事例を参考にしたものです。

導入した場合の影響は

渋滞税が導入された場合、さまざまな影響が予想されています。

渋滞の緩和により通勤時間の短縮や大気汚染の改善が期待され、市民の生活の質向上につながる可能性があります。一方で、自家用車利用者への追加負担となるため、公共交通機関の利便性向上や料金設定など、慎重な政策設計が求められます。

また、渋滞による経済的損失の削減により、生産性の向上や物流効率の改善が期待されます。公共交通機関の利用促進により、関連産業の活性化や新たな雇用創出も見込まれています。

今後の動向と予測

渋滞税導入の有効性に関する調査結果が道路交通渋滞に関する内閣委員会に提出され、最終決定が下される予定です。

クアラルンプールの交通渋滞問題は、経済、環境、生活の質に直結する重要な課題であり、今後、渋滞税の導入と併せて、公共交通機関の整備や利用促進策、都市計画の見直しなど、総合的で効果的な交通政策が求められています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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