7月1日から マレーシアのVEP施行 

マレーシア

マレーシアは2025年7月1日から、シンガポールの登録車両に「車両入国許可(VEP)」の取得とRFIDタグ(車両識別用の電子タグ)の装着を義務化しました。その背景には複数の要因が複雑に絡んでいます。

今回は、その背景と両国関係に及ぼす影響を多面的に整理してみます。

7月1日から マレーシアのVEP施行   

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年8月13日

8年越しの実施

マレーシアは7月1日から、車両入国許可(VEP)なしで入国するシンガポール登録車両に対する取り締まり措置を開始すると、アンソニー・ローク運輸大臣が発表しました。

この計画は2017年に初めて提案され、システムの導入が2019年と2020年の2度にわたって棚上げされており、計画発表後8年たってから実施されました。

違反すれば罰金

「有効なVEPを所持していない外国人の車両所有者は、マレーシアを出国する前に罰金(300リンギット=約1万300円)を支払わなければならない」と、運輸大臣は記者会見で述べました。

シンガポールで登録されている個人所有の民間車両のうち、231,018台がすでにVEPに登録されていますが、そのうち15パーセントはまだ無線周波数識別(RFID)タグの有効化をしていないとされます。

長い列

シンガポールでは、週末にマレーシアのジョホールバルへ買い物やバカンスに出かける人も多く、この発表後にはVEPとRFIDタグの取得のために、長い列が発生していました。

なぜ義務化されたのか?

今回義務化に至ったのにはさまざまな理由があります。

シンガポールとジョホール間の2本の橋(国境ゲート)の交通過密問題が深く関係しています。コーズウェイ(Causeway)は、シンガポール北部(Woodlands)とジョホールバル市中心部とを結ぶ全長1kmの橋です。主に通勤や商業利用が中心で、1日あたり約40万台近くの車両と通行人が利用していて、「世界屈指の混雑国境」となっています。

毎日大変な渋滞で、経済的にも社会的にも大きな影響を与えています。 物流の停滞は経済活動に影響し、違反車両の追跡や課金が手動や不明確なままでは徴収効率が悪く、税収漏れが起きているのです。さらに、盗難車や不法通行車両の管理が困難なことから治安上の課題にもなっています。

今後の展望

現在はシンガポール車のみが対象ですが、商用車両や他国登録車(インドネシア、韓国など)にも波及する可能性があります。

また相互主義ルールから、将来的にはシンガポールもマレーシア車両向けに同様の制度を検討する可能性がありそうです。

非接触識別技術(RFID)は、自動車や物流の広範囲への応用がマレーシアでは進んでいて、両国をまたぐスマートインフラの構築が進む可能性も予測されています。

両国間の対応協議が必須

2025年7月からの義務化は、マレーシア側にとって制度の実行力の強化や収益の改善となります。外国車両管理が透明化されることで治安対策にもなり、合理的な政策転換として期待されています。

一方、シンガポール側には手続きの負担の大きさや週末のバカンスなどへの影響、両国交渉の必要性という課題が浮かび上がっています。

今後は制度運用の効率化や協調関係の深化が鍵となり、単なる「交通政策」から、国境を越えた共同インフラ戦略の進化への布石となることが期待されています。

そのためには両国国民の理解を深める対応と協議が不可欠で、両国の信頼関係の醸成が今後を左右すると見られています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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