デジタル経済最前線 「AIとフィンテックの融合」

AIとフィンテックを融合させたデジタル経済において、シンガポールはアジアのリーダー的存在となっています。政府の政策や金融機関との連携、そして世界中の企業を引きつけている魅力的な環境により急成長を遂げています。
今回の記事では、シンガポールのデジタル経済の最前線である「フィンテック」について詳しく説明します。
デジタル経済最前線 「AIとフィンテックの融合」
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 4月4日
- 中国のBYD シンガポールの自動車販売のトップに
- 世界イノベーション指数 2年連続アジアトップ
- 「世界最強のパスポート」ランキング シンガポール1位
- 「デジタルツイン(Digital Twin)」先進国 シンガポール
市場規模の急拡大

シンガポール政府は、2014年に「Smart Nation Initiative」という政策を発表し、AIを国の成長戦略の中心に位置付けました。これにより、デジタル金融サービスの導入が急速に加速されました。
シンガポールのデジタル経済の市場規模は、1,130億シンガポールドル(約13兆560億円)でGDPの17.7%を占めており、年平均成長率も10%を超えています。
歴史的背景と成長の過程
ではまず、シンガポールのデジタル経済の成長過程を確認しましょう。
1980年代~1990年代にかけては、1970年代の国際金融機関を誘致する政策の展開をさらに加速させ、金融サービス業が成長基盤を確立し、金融ハブへの転換をはかりました。
2000年代にはIT技術が台頭してきて、金融との融合を図り始めます。インターネットの普及と技術革新を背景に、金融業界でのデジタル化が進展していきます。
2010年代では、2015年に世界最大規模のフィンテックイベント「Singapore FinTech Festival」が初開催され、フィンテックへの本格的な移行が始まります。
そして2020年代に入り、AIとフィンテックの融合へと進化していきます。
代表的なフィンテック企業
シンガポールを代表するフィンテック企業を紹介します。
①Grab Financial Group
配車アプリからスタートして、保険や投資、デジタル決済などの金融サービスを提供するまでに進化しています。AIを活用した顧客分析を強化しています。さらにシンガポールの通信大手Singtelとデジタル銀行の「GXSバンク」のライセンスを2022年に取得し、東南アジア市場全域に拡大しています。
②Singlife with Aviva
シンガポール金融管理庁が認可した、最初のローカルの保険会社「Singlife」とAviva Singaporeが合併して、新ブランドの「Singlife with Aviva」が誕生し、シンガポール最大の保険会社となりました。AIによる個人向け保険商品のカスタマイズやリスク評価を強化してデジタル保険の普及をリードし、東南アジア市場での存在感を拡大しています。
③Validus Capital
中小企業資金調達ニーズに対応するために 2015 年に設立された、現在シンガポール最大のオンラインプラットフォームです。 AIを活用した中小企業向けのデジタル融資プラットフォームとしてインドネシアやベトナム、タイでも存在感を高めています。
シンガポール躍進の理由
シンガポールのフィンテックが躍進した理由としては、まず「規制環境の整備」が柔軟かつ明確に行われたことがあげられます。日本では規制が厳しくフィンテックの普及が遅れ気味ですが、シンガポールは規制緩和と官民連携で企業が新しい技術を試しやすい環境を提供することで、迅速に成長しています。
また、戦略的な地理的位置にあることも成長の要因で、ASEAN市場全体へのアクセスが容易で、地域のハブとして見事に機能しています。
さらに、AIやフィンテックに特化した教育プログラムを提供する大学や研究機関が多数あり、優秀な人材が輩出されていて、加えて世界中の専門家を引き寄せる移民政策でその優位性を強化しています。
他国が追随
シンガポールは政府の政策や支援、インフラ、そして技術革新のスピードで他国を引き離し、フィンテックの先進国としての地位を確立し、他国をリードしています。
この成功は単なる技術的な進歩にとどまらず、官民が一体となった取り組みの結果であり、他国が追随するモデルとなっています。
この分野での革新が、アジア地域全体のデジタル経済をさらに押し上げていくでしょう。