ショッピングモール大国マレーシア2022

マレーシア

マレーシア政府は、消費刺激策を通じて2022年通年の小売売上高を5,000億リンギ(約15兆円)と、コロナ前の水準まで戻すことを目指すと表明しました。
入国制限を撤廃したことで、隣国シンガポールを中心とした海外からの旅行者による消費も活発化すると予測しています。
そこで今回はマレーシアのショッピングモールについて解説します。

ショッピングモール大国マレーシア 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2022年10月4日

コロナ規制がほぼ撤廃

コロナによる活動や移動の制限を厳しく実施していたマレーシア。
特に、飲食店やアパレル店、フードコートをテナントに持つショッピングモールは、厳しい規制の対象となり、年中人々でにぎわっていたのがウソのように、この2年間は静まり返っていました。
しかし、ほとんどの規制がなくなりました。
マレーシア政府は、消費刺激策を通じて、今年通年の小売売上高を5,000億リンギ(約15兆円)とコロナ前の水準まで戻すことを目指すと表明しました。
入国制限を撤廃したことで、隣国シンガポールを中心とした海外からの旅行者による消費も活発化すると予測しています。
そこで今回は、マレーシアのショッピングモールについて紹介いたします。

至る所にショッピングモールあり

2019年時点、マレーシア国内にショッピングモールは全部で560ヶ所あり、その総面積は約1,255万㎡です。クランバレー(クアラルンプールを中心に隣接する市や町を含めた都市圏)だけで、実に197のショッピングモールが存在しており、その後も30以上の新しいモールがオープンしています。
(出所:MOTAC マレーシア政府観光局データ)
日系でも三井不動産のららぽーとが世界最大規模の店を今年オープンしました。
明らかな供給過多による過当競争とコロナによる生活様式の変化が、マレーシアのショッピングモールの生き残り戦略に大きく影響しそうです。

マレーシアのショッピングモールの歴史

マレーシアで最初のショッピングモールができたのは1973年の クアラルンプール市内にできたAmpang Park (アンパンパーク)です。その後ローカルのモールが少しずつ建てられ、1985年にジャスコ(現イオン)が最初の店舗をオープンし、1988年には伊勢丹が進出と日系の進出も増えていきました。
その後はショッピングモールのサイズも巨大になり、映画館やボーリング場、ゲームセンターなどが入る複合的なコンプレックスになり、2018年には世界の10大ショッピングモールの中にマレーシア(いずれもクアラルンプール市内か近郊)の3つモールが入る(7位 ワンウタマ、9位 ミッドバレーメガモール、10位 サンウェイピラミッド)ほど巨大化が進みました。

モール好きなマレーシア人

なぜ短期間のうちにマレーシアではショッピングモールが増えていったのでしょうか?
もともとは、平均最低気温が25度で平均最低湿度も70%と蒸し暑い熱帯性気候のマレーシアで、一日中冷房の効いているショッピングモールは、最も快適で安上がりで便利な場所という利点があったからではないかと思います。
また、外食文化が盛んで、家族みんなで屋台やフードコートで夕食を食べ、その後モール内をじゃらんじゃらん(ゆっくりと歩き廻る)するというライフスタイルが一般化したのも大きな理由かと思われます。このライフスタイルを支え、レジャースポット化を強化してお客様の満足度をアップさせたのも、ショッピングモールが生活に完全に溶け込んだ一因ではないでしょうか。
マレーシアは完全に車社会で、車でのアクセスしやすいロケーションにあって巨大な駐車場を構えるモールは、マレーシア人の生活に欠かすことのできない場所になったのだと思います。
近年ではWi-Fiの完備がショッピングモールの集客に必須となっています。

ショッピングモールのさらなる進化

ショッピングモールはマレーシア人のいろいろな目的をかなえる場へと進化し、さらには供給過多から他のモールとの差別化を図るべく、さらなる多様性を提供し、進化しています。
アウトレットモール形態での進出も増加しており、この形態での日系の進出もすでにあります。
また、増大する観光客のニーズ(観光客の買い物が増加し、国の総観光支出の30%に上る :出所:マレーシア政府観光局データ)にも応えるべく、ホテルや交通機関との相乗効果を期待し、ターミナル駅や空港の周りにも建設されています。
ショッピングモールの中には、通常のインフォメーションカウンターではなく、ホテルのコンシェルジュデスクを思わせるような人を置いたり、さらには、アラビア語などの外国語に堪能なアンバサダーを配置してカスタマーケアを提供し、毎年恒例のアラブの方の買い物を支援したりしています。

ショッピングモールに死角はないのか?

巨大化し多機能化するショッピングモールも、コロナの影響は甚大で、マレーシアの小売業は、2020年には前年と比べ16.3%売上が減少し、2021年も2.3%縮小しています(出所:Retail Group Malaysia(RGM)発表)。
それだけでなく、コロナはEコマースの発展を加速させ、2021年にはその売上が24.7%増加し、2024年には12.6ビリオンドルになると予測されており(出所:マレーシア国際貿易産業省データ)、ショッピングモールの脅威となることでしょう。

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