月餅をお供えして神に感謝する「中秋節」 |中国

シンガポール

常夏の都市国家シンガポールでは、季節の移り変わりを感じることがありませんが、伝統的なイベントなどで月日の移り変わりを感じることができます。

旧暦の8月15日に祝う中秋節は、中華系の人々が多いシンガポール社会にとって大切な年中行事のひとつです。

そこで今回は、シンガポールの「中秋節」のお祝いの仕方について紹介したいと思います。

月餅をお供えして神に感謝する「中秋節」 |中国

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 11月11日

「月餅」を食べる習慣

中秋の名月を愛でる「中秋節」は、旧暦の8月15日にあたり、2024年の今年は9月17日です。

中国の伝説では、「嫦娥(じょうが)」という月の女神が、夫のために不老不死の薬を飲み、月に飛び立ったという物語があります。彼女をしのんで月を眺めながら祝いますが、シンガポールでは、この日には家族が集まり、月餅(ムーンケーキ)を分け合って食べる習慣があります。

シンガポールでのお祝いの歴史

シンガポールは多民族・多文化社会であり、中華系の人々が人口の約74%を占めています。

中華系の伝統や習慣が深く根付いており、中秋の名月もその一つです。

中秋節の祝いは19世紀に中国から来た移民がもたらしたもので、初期の頃は家族やコミュニティの中で静かに祝われていました。

しかし、都市が発展し商業活動が盛んになるにつれて、「中秋節」を祝う祭りは、より大規模で賑やかなものへと変わってきています。

シンガポールでの祝い方

中秋節には多くの家庭やモールでランタン(提灯)を飾り、家族や友人、職場の仲間と月餅を楽しみます。

夜にはランタン・フェスティバルが開催されます。チャイナタウンやガーデンズ・バイ・ザ・ベイでは、ランタンのディスプレイや伝統舞踊、音楽などが楽しめ、普段とは異なる雰囲気にの街になります。おいしいストリートフードがずらりと並ぶので、ライトアップされたランタンを眺めながら食べたいですね。

ジュロンにあるレイクガーデンでは、例年シンガポールを象徴する建物がランタンで再現され、今年も伝統的なランタンや新しいデザインのランタンが展示されています。音楽のライブパフォーマンスもあるので、散策しながら楽しめます。

月餅の最近トレンド

月餅は伝統的な蓮の実の餡やあんこを詰めたものが一般的でしたが、近年ではより多様なフレーバーが登場し、若者や観光客にも人気があります。最近のトレンドを紹介しましょう。

雪皮月餅(スノースキンムーンケーキ):
もちもちとした皮で包まれた月餅で冷やして食べるのが主流です。

マンゴー、ドリアン、抹茶など、フレッシュでユニークなフレーバーが多く登場しています。

2022年、シンガポールで販売された月餅の約30%がスノースキンタイプといわれていて、若年層を中心に伝統的な焼きタイプの月餅よりも支持されています。

低糖月餅:
健康志向の高まりに伴い砂糖の量を控えた月餅が人気を集めていて、種類も増えています。

グルメ月餅:
最近、トリュフ、キャビアなどの高級食材を使用したプレミアム月餅も流行しています。酒フレーバーなどもあります。

最近の月餅は個性的なパッケージのものが多くなっていて、豪華なパッケージやエコな包装も注目されています。お土産や贈り物としての需要が高いため、各店が工夫を凝らしています。

伝統を継続して進化

シンガポールでは有名なホテルやベーカリーが独自の月餅を発売しており、毎年新しいフレーバーで競い合っています。そのためか、2023年にはシンガポール全体で約50万箱以上の月餅が販売されたといわれており、これは前年に比べて約10%の増加です。

シンガポールでの中秋節は、伝統を守りつつも現代的な要素をとり入れた祝い方が特徴で、毎年進化を遂げています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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