ブータンのお風呂事情:石焼風呂ドツォに行ってみた

ブータン

日本人に根付く入浴文化。日本のように日々入浴する習慣がある国は珍しいだろう。ブータンでも基本はシャワーだけで済ませて、家で入浴する文化はない。その理由のひとつに給湯器が挙げられる。ギザと呼ばれる給湯器は使用できる湯量に限りがあり、また湯が使えるまで時間を要するのである。しかしブータン西部では、昔からドツォと呼ばれる伝統的な石焼風呂がある。近年はブータンのどこでもドツォを楽しめるようになっている。今回はティンプーにあるドツォでの体験をレポートする。

ブータンのお風呂石焼風呂ドツォに行ってみた

   著者:ブータンgramフェロー よう 
公開日:2023年6月17日

ドツォってなに?

南アジアに位置するブータンは20のゾンカク(Dzongkhag :県)、日本でいう都道府県に分かれていて、地域ごとに独特の言語、文化がある。石焼風呂ドツォはブータン西部で昔から行われている伝統的なお風呂で、水をはった木製のバスタブに熱した石を次々と落とす。伝統的な薬効成分としてレモングラスやアルテシアの葉を散らす。石に含まれるミネラルは肌に良い。近年は西部以外にも広まり、どこでもドツォが楽しめる。

ドツォ体験

今回行ってきたドツォは首都ティンプーにあるHerbal Hot Stone Bathである。写真のように部屋が並んであり、個人用と家族用(バスタブが2つ)の2種類ある。

石を焼くのに時間がかかるため最低でも1時間以上前に予約する必要がある。事前に伝えていても着いてから30分程度は部屋の準備ができるまで待つため、時間に余裕があるときに行くことをオススメする。

部屋は石でできておりやや暗い。写真の通り脱衣所はなく、手前にベンチがあるのでそこで着替えて湯に入る。シャワーはなく、体や頭を洗いたい人はバスタブの中のお湯を使用する。

バスタブの奥が外に出ており、そこから石が入れられる。湯がぬるくなってきた場合には壁の向こう側にいる店の人に石の追加をお願いする。湯が少ない場合にも水の追加をお願いできる。筆者個人の感想としては、店の人が壁の向こうにいない時があり不便を感じたのと、利用者が多い時には焼き石の準備が間に合わず湯温が下がってしまうので、空いている時間であれば快適に利用できると感じた。

部屋の中は飲み物や食べ物の持ち込みが可能で、店にも簡単な軽食やスナック、水、お酒等が常備されている。お店の人に言えば部屋に入る前でも、お湯に浸かりながらでも受け取ることができる。軽食に関しては個人利用だと断られることもあるため、事前の確認が必要だ。

料金は2時間利用で600Nu=1020円(1Nu=1.7円)。日本の銭湯を考えるとやや高いが、なかなかできない体験なのでブータンに来た際にはぜひ試してほしい。

ブータンの入浴文化

ブータンの各家庭では「ギザ」(geyser)という給湯器がお風呂や調理場についている。電源を入れるとタンク内に溜まっている水を電気で熱され、お湯ができる。熱湯になるので水を混ぜて適温にして使用する。ギザ内のお湯が減るとタンク内に水が追加され、徐々に冷たくなってくる。湯温のメーターがついているギザもあるが、どのくらいでお湯がなくなるのか気にしながらシャワーに入らなければならない。ギザの大きさにもよるのだが、一度冷たくなると再度熱くなるまで時間がかかるため、何人も続けてシャワーに入ることはできない。

 首都のティンプーではギザを付けている家が増えてきているが、高価なものなのでまだの家庭もある。その場合は投げ込み式湯沸かし器という、電源に繋いだ棒のようなものの先端をバケツの中に入れて水を温めるものが使われているが、労力がかかるので徐々にギザに移行している。

 家庭にバスタブがある家も少しずつ増えてはきているが、日本のバスタブとちがってかなり浅く、大人が肩まで浸かることは難しい。また先ほど説明したように、ギザを使用すると湯量に限界がありバスタブ一杯のお湯を溜めることは困難だ。溜められたとしても次の湯が使えるようになるまで待つ必要がある。バスタブもギザの容量も大きく、快適にバスタブに浸かれるホテルもあるがその数は多くない。ブータンに日本のような湯に浸かる文化が根付くのはかなり難しいだろう。

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