中国で高級おにぎり専門店が増えている理由と現地の反応とは

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中国で人気の日本食といえば、鰻、寿司、すき焼き、お好み焼きなどがあるが、最近はおにぎりの人気がじわじわと高まってきている。ここ数年で高級おにぎり専門店が増加し、SNSの投稿数も伸びて注目度が高い。本記事では、中国のおにぎりの概念や文化、現地人のリアルな反応、コスパ重視の傾向にある中国でなぜ高級おにぎりが人気になっているのかなどを詳しく解説する。

中国で高級おにぎり専門店が増えている理由と現地の反応とは

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年8月6日

中国のおにぎり事情

中国といえば、米の生産量が世界一位を誇る米大国。炒飯やお粥、粽、餅など米が使われた料理は、中国で昔から食べられてきた国民食だ。

一方、米を使った国民食といえばおにぎりを思い浮かべる日本人は多いと思うが、中国では日本ほどメジャーな食べ物ではない。

中国語でおにぎりのことを「饭团」という。上海市出身の友人に饭团は国民食なのか尋ねると「丸や三角の形のおにぎりは日本から来たものという認識で、中国の国民食ではない」と教えてくれた。中国では、冷たいご飯は食べない、温かい物を食べるという人が多いため、冷めた米であるおにぎりを主食として食べる習慣がない。

しかし、その友人曰く「他の地域ではどうかよく分からないけど、細長い形のもち米を使ったおにぎりは、上海市では昔から食べられていた」とも言っていた。

(出典:美団のKFCより)

中国のケンタッキーの朝ごはんメニューには、バーガーやお粥セットの他に、饭团セットがある。ドリンクと油条(揚げパン)、饭团の3点セットで23.5元(約470円)で販売されている。おにぎりの中身は肉松や油条、塩漬け卵など。単品だと10元(約200円)ほどで食べることができる。

(中国のセブンイレブンにて撮影)

コンビニのおにぎりは、丸や三角、サンド型の日本でもよく見るおにぎりで、ツナだと約4元(80円)と日本で買うより安く手に入る。

このように中国ではさまざまなおにぎりを手軽に食べることができるのだが、現在人気がでてきているとされているのが、中国オリジナルの高級おにぎりだという。

なぜ今中国で高級おにぎりが人気なのか

(出典:小紅本)

小紅本で「饭团」関連の投稿は143万件を超える。世界で人気の日本食「寿司」は中国でも大人気だが、投稿数は155万件とおにぎりの投稿数と比較しても引けを取らない注目度の高さが伺える。

現在の中国で若者を中心に注目されているのが、さまざまな具材が入った1つ20元前後(約400円)もするおにぎりである。具材は、ソーセージやハム、牛肉、アボカド、レタス、海老、チーズ、卵など、具材だけ見るとまるでサンドイッチのよう。

36Krによると、食べやすく栄養価が高いこと、子どもから高齢者まで年齢問わず食べることができるため人気を集めているという。

(参考:“饭团界爱马仕”,年轻人排队去抢-36氪  https://36kr.com/p/2823318769551877

また、白米に比べカロリーが低く栄養素が豊富な黒米を使用している専門店が多いことも中国風高級おにぎりの特徴である。コスパ重視の傾向が強い中国だが、健康志向の高まりが浸透していることから、栄養バランスのとれた高級おにぎりは、若者にとって新たな消費のエンジンとなっていると考えられる。

一方、コンビニの日式おにぎりは基本は具材が1種類で、中国の高級おにぎりと比較すると栄養価は高くない点や文化的背景から、多くの国民に広く受け入れられているとは言い難いのではないかと中国人の友人は話していた。

中国現地のおにぎり専門店

筆者が住む中国上海市には、数多くのおにぎり専門店がある。中国の食べログといわれている大众点评で★4以上の高評価で、店舗数を増やしてきているおにぎりチェーン店「米蛇饭团」に行ってきた。

筆者が店を訪れた時間は平日の15時頃、昼ご飯でも晩ご飯でもない微妙な時間帯だったにもかかわらず、店は常に数組待ちの状態。客層は若者から中高年まで男女問わず商品を購入していた。目に見える客の他にデリバリーの注文も入っているようで、店員は忙しそうにしていたことが印象的だった。

商品は手のひらよりも小さいサイズで13元(約260円)~26元(520円)。一番人気は塩漬け卵が入っているおにぎりだと店員が教えてくれた。筆者が訪れた際、ほとんどの客が塩漬け卵入りのおにぎりを注文していた。塩漬け卵とは、アヒルの卵を塩水に漬けたもので、塩辛い茹で卵のような味がする。中国の家庭料理として昔から親しまれており、お粥や粽、月餅などさまざまな中国料理で使われている。

注文するとかまどから熱々の黒米を取り出し、米が冷めないうちに手早く具材をのせ握ってくれる。筆者は持ち帰りをお願いし、20分後、おにぎりが入っている包装紙を自宅で広げたが、湯気が出るほど熱々な状態だった。

日本人からすると日本のコンビニのおにぎりは食べ慣れた味で冷めていても美味しいと感じるが、出来立ての中国オリジナル高級おにぎりは格別で、中国人が買い求めることにも納得できるほど、予想に反してクオリティが高かった。

まとめ

近年の健康志向ブームの観点から見ると、中国オリジナルの高級おにぎりは消費者の心を掴むポイントが多く、ここ数年でおにぎり専門店が増加している要因のひとつと考えられる。一方、閉店する店も多いのが現状だ。コスパ重視の傾向にある中国で、高級おにぎりの人気がどこまで広がるのか。今後の動向を注目するべき飲食業界のひとつだろう。

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