月餅の最新トレンドは健康!あの大人気ゲームコラボも|中国

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旧暦8月15日(今年2024年は9月17日)は中秋節だ。上海市では1ヶ月ほど前からスーパーやパン屋、カフェなど至る所で月餅を目にするようになり、今年も月餅商戦が到来した。本記事では、中国のみならず台湾や香港、シンガポールなど中華圏で広く食べられる月餅の2024年トレンド事情について紹介する。

月餅の最新トレンドは健康!あの大人気ゲームコラボも|中国

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年10月22日

中国における中秋節と月餅とは

(毎年販売されている中国のスターバックスの月餅。写真は今年2024年上海市にて撮影)

中国の中秋節とは日本の十五夜にあたる。中国では国の伝統的な祭日で、中国人にとって特別な日となっている。

月餅とは「中秋節」に食べられる中国の伝統菓子である。中国語で月餅はユエビンと発音する。小麦粉や砂糖、卵などで作られた皮で、小豆や蛋黄(塩漬け卵の黄身)、蓮の実を包み、満月に見立てた丸い形になっている。日本の和菓子のような見た目ではあるが、和菓子にはない中国ならではの独特な味わいと、ずっしりとした食べ応えにハマる日本人も少なくないだろう。

月餅はもともと月の神様へのお供え物であり無病息災、五穀豊穣など秋の豊作を祝うために用いられたという説がある。時は流れ、現在はお供え物から食べる物として中国人に親しまれている。家族団らんを象徴する月餅を家族や愛する人と一緒に食べることで、満月の丸い形のような円満、幸福、健康などの幸せを願うお祭りになった。

今年の中秋節は9月17日で、9月14日~17日の間の数日は学校や会社が休みになっている場合が多い。連休を利用してふるさとへ帰省する際に月餅を購入して帰る人やお世話になった人、取引先への贈答品として大量に月餅を購入する人たちで店は賑わう。

スタンダードな月餅は甘くてボリュームもあるため、日本人の感覚だと多くても2~3個で十分満足できるが、この季節になると食べきれないほど大量の月餅が贈られてくる。中国の友人に聞いたところ「たくさん贈ることに意味がある」とのことで、ギフト用の月餅ボックスを両手に何個も買い込む人が居ることにも納得できる。

今年は手軽に食べられる健康月餅が人気

(写真:8月頃からさまざまな店で設置される月餅の特設ブース)

月餅はさまざまな種類と味があり、メジャーなものは10種類ほど。特に人気で日本のデパートなどでも売られている月餅は広東式月餅だろう。しっとりとした生地にナッツなどを使い甘い餡を入れた月餅だ。

また、上海市でよく目にする蘇州式月餅も特に人気の高い商品だ。パイ生地でできた皮に、甘い餡だけでなく肉や海老などを入れたものがある。

数年前までの月餅は、贈答品としてハイブランドとコラボした何万円もする高級月餅や高級酒付き月餅、住宅付き月餅などが販売されていた。過剰包装、高級食材の使用など珍しくなかったが、中国政府が販売を抑制したことでやりすぎた月餅を見ることは殆どなくなった。筆者の感覚ではあるが、ギフト用の月餅の価格帯は100元~500元(約2,000円~10,000円)にまで落ち着いている。

(写真出典元:小紅本)

現在トレンドとなっている月餅は、数年前から続いている健康志向ブームの影響を受けた、ヘルシーで気軽に食べられる価格帯の月餅だ。

一般的な甘い月餅の餡にはごま油やラードなどが練り込まれたものが多いが、近年は油分と甘さを控えめにした月餅が若者に人気となっている。月餅は1つあたり500キロカロリーある商品も珍しくない。マクドナルドのポテトLサイズが517キロカロリーだと考えると、和菓子は見た目に反して高カロリーで味も重たいため、健康志向の若者には伝統的な味わいの月餅は受け入れがたいように見受けられる。

中国のSNSでは「♯低糖月餅」「♯低カロリー月餅」など、ヘルシーな月餅に関する関連投稿が増えている。甘くて重いハイカロリーな餡の代わりにカロリーの低い果物や山芋の餡に雑穀を練り混ぜ、見た目は華やかでポップにするなど、若者向け商品が目立つようになった。

大ヒットゲーム「黒神話:悟空」コラボ月餅が話題

(写真出典元:小紅本)

「黒神話:悟空」は西遊記をテーマにしたアクションRPGゲームだ。中国初の国産AAAゲームであるため、発売前から中国のみならず国内外からも注目されていた。完成度の高さや西遊記という題材も注目され、今年8月にリリースされると瞬く間に人気となり、さまざまなゲームプラットフォームで1位となった。

「黒神話:悟空」の関連商品も大人気で、中国の大手コーヒーチェーン瑞幸咖啡(luckin coffee:ラッキンコーヒー)とのコラボ商品は発売されるとすぐに売切れとなった。

現在月餅生産のピークを迎えている中国で、世界でも高く評価されている中国製ゲーム「黒神話:悟空」と月餅のコラボ商品が販売され、SNSでも話題となっている。

西遊記がテーマの豪華なボックスに、主人公の「天命人」をはじめとする人気キャラクターを再現した6個の月餅とポストカード3枚が入っている。価格は99元(約1,980円)と良心的な価格で、スーパーやネットで販売されている。

まとめ

(写真:上海市ではよく目にする蘇州式月餅)

月餅の市場規模は拡大傾向にある。中国の調査会社、艾媒諮詢によると、2023年の販売量は271億元(約5900億円)で、22年から11%増えた。

(引用元:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80999850Y4A520C2FFJ000/

中国は広いため地域によって普段から食べられる料理は異なるが、月餅は中国全土で食べられる共通した数少ない食品のひとつだ。また、中国人にとって特別な祭日「中秋節」に欠かせない月餅だが、若者の購入率は低いため、まだまだ開拓の余地がある将来性のある市場と言えるだろう。企業による主要ターゲット層にヒットするような商品開発は続いている。

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