中国の節約消費事情 中古品、売れ残り品が人気に

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数年前までは中国人の消費動向のイメージは「爆買い」だったが、現在の中国では不景気の影響から節約をする傾向が強まっている。モノを買わない、お金を使わない中国人が増えたことで人気が集まっている市場が存在する。本記事では節約消費の影響を受け、中古品や売れ残り品が注目を浴びている状況や背景について紹介する。

中国の節約消費事情 中古品、売れ残り品が人気に

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年10月15日

中国で中古品ブーム広がる

上海市にある中古品店に多くの若者が訪れてくる。古着やアクセサリーなどのファッション類や家電、食器、おもちゃ、デザイナーズトイ等さまざまなコスパの良い商品を、人々は求めているのだ。リサイクルショップやブランド品を扱う中古品店、露店が並ぶ中古品のフリーマーケット、小区内など限定的なフリマなどの実店舗だけでなく、中古品を取り引きするプラットフォームにも人気が広がっている。

「閑魚」がこのほど発表した最新データによると、同プラットフォームでは毎日10億元(約210億円)以上の取引が行われており、若者1人が2023年に「閑魚」を通じて稼いだ金額は平均2723.5元(約5万7000円)になったという。

(引用元:36Kr Japan https://36kr.jp/281266/

中国在住日本人の間で日本のメルカリともいわれている「閑魚」は、アリババ・グループが運営する中国最大級のフリマアプリ。筆者の周りの中国人の友人は、同アプリを通して中古品の売買を頻繁に行っている。

中国人は子どもにお金を多く使う文化が日本より強い。しかし最近は「使用期間の短い子供用品は高いお金を出してまで新品で揃える必要はない」と考える人が増え、フリマアプリが注目されている。

1歳の双子を持つ中国人の友人は、2人乗りベビーカーを「閑魚」で購入したり、不要になったベビー用品を販売したりと有効的に活用している。欲しかった商品が格安で手に入ることもあるが、購入後すぐに壊れてしまうなど購入者の観点では問題点もある。

Wechatを利用したフリマグルチャも存在する。同じ趣味を持つ人が集まるグループや小区の住民限定のグループで、不特定多数の多くの人が利用するフリマアプリに比べると出品数や種類は劣るが、出品者と購入者が限られるためトラブルが発生しにくいことや受け渡しの手間が少ないことがメリットである。

清華大学エネルギー環境経済研究所などが発表した「2021中国中古品取引炭素排出削減報告」によると、取引対象となる中古品はほぼ全種類に及んでおり、取引規模は2020年に1兆元(21兆円)を超え、2025年には3兆元(約65兆円)を超えると予想している。

(引用元:中国経済新聞 https://chinanews.jp/archives/18746

中古品取引ECプラットフォームを牽引しているユーザーは18歳~34歳の若者だという。この年代層は、見栄を張ることなく本当に価値のあると感じた物にお金を使うという理性的志向が強い。レトロな雰囲気や個性を表現できる中古品ならではの価値に魅力を感じている若者も多い。また、環境保護への関心が高い中国では、中古品を活用することによってCO2排出削減につながるため、こうした点においても若者のユーザーが増えている理由のひとつだろう。

売れ残り、おつとめ品が人気

コスパを重視する傾向にある中国では、安価で購入できフードロスにもつながる「売れ残り、賞味期限が近い商品」に人気が集まっている。

上海市にあるパン屋では、20時から売れ残り品の詰め合わせを販売している店をよく見かける。パンの種類は購入するまでは分からないが、さまざまな種類のパンが安く食べられるので、売れ残りパンの福袋に需要があるのだ。

賞味期限間近のおつとめ品の需要も高く、ここ数年でディスカウントショップが急増している。上海市にあるディスカウントショップ「好特卖 HotMax(ホットマックス)」は、平日や雨の日でもコスパの良い商品を買い求める客で賑わっている。

背景に中国の失業率悪化

こうした背景には中国の景気の悪化が影響している。

若年層(16歳~24歳)の失業率は深刻化しており、2023年6月に21.3%と過去最高を記録。2024年7月の失業率は17.1%と現在も若者の失業率は高止まりしている状態で、全体の失業率の3倍を超える水準となっている。

先行きが見えない状況から節約志向の傾向が強まり、生活の負担を少しでも減らそうと考える人は多くなっているのだ。

中国人の友人は「不動産市場の低迷などによる景気の先行きへの不安から、お金を使うことに抵抗を感じている人が多くなった」と話していた。政府はこうした状況を打破するため、自動車や家電製品の買い替えを促す補助金支給をすると発表した。今後の効果が期待されている。

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