オーストラリア:労働力不足により、ワーホリの年齢制限50歳に引き上げか?

オーストラリア

日本から毎年約1万人がワーキングホリデー(以下、ワーホリ)ビザを利用して訪れる国・オーストラリア。日本以外にもヨーロッパ諸国やカナダなど、様々な国の人がワーホリビザを利用してオーストラリアに滞在しています。深刻な働き手不足に悩むオーストラリアでは、現在30歳(一部の国の国民は35歳)までとなっているワーホリの年齢制限を50歳にまで引き上げるべき、もしくは撤廃するべきという意見が浮上しています。

オーストラリア:労働力不足により、ワーホリの年齢制限見直しが必要か?

   著者:オーストラリアgramフェロー 平澤 歩
公開日:2023年3月8日

オーストラリアの深刻な労働力不足

オーストラリアは、OECDの国の中でカナダに次ぐ2番目に深刻な労働者不足に陥っています(2022年9月時点)。その一つの原因が「ワーホリ労働者数の激減」です。オーストラリアでは、農作物の収穫・ホテルやレストラン等のサービス業・僻地での仕事など、オーストラリア人が進んで行わない仕事の労働力をワーホリ労働者に依存している一面があります。

しかし、パンデミックの影響により、数多くのワーホリ労働者が帰国を促され、また海外からの新規入国を全面ストップしていたため、ワーホリ労働者数が激減しました。2021年12月15日にワーホリ労働者の入国受け入れが再開されましたが、2019年末に14万1000人いたワーホリ労働者数は2022年7月時点で4万4000人と、約10万人も少なくなっています。入国受け入れ再開後、思うようにワーホリ労働者が増えない理由としては、パンデミックが広がった2020年にワーホリ労働者が帰国を促されたことへの反感や、何かあった際にパンデミック禍と同様事実上の鎖国を行なうのではないかという恐怖心があるようです。

労働者不足は特に農業・交通・物流・サービス業に大きな影響を与えています。地方のホテルなどは対応するスタッフが少ないことによるサービスの質の低下、農家は収穫する労働者が少ないことによる収穫高の低下を招いています。

現在のワーホリの年齢制限

現在、オーストラリアのワーホリビザを取得できる国民(パスポート保持者)は19ヶ国です。ワーホリビザの申請が可能な年齢は18~30歳となっています。なお、カナダ・デンマーク・フランス・アイルランド・イタリアの国民(パスポート保持者)は、18~35歳が申請可能となっています。

ワーホリの年齢制限見直しの必要性

こうした状況を受けて、オーストラリア観光交通フォーラムのマーギー・オズモンド最高経営責任者は「オーストラリアはワーホリビザの年齢制限を50歳まで引き上げることで、ワーホリ制度からより多くの利益を得ることができる」と主張しました。

また、オーストラリア政府観光局は「ワーホリビザの年齢制限を撤廃し、スキルのある労働者や専門家を幅広く確保したい」と述べています。

まとめ

オーストラリアでは、ワーホリビザの年齢制限の見直しの他にも、ワーホリビザの延長条件の緩和や、移民制度の見直しなど、労働力確保に向けた制度の見直しが検討されています。日本では「オーストラリア出稼ぎ」が話題となっており、「オーストラリアは賃金が高い国」と労働面でプラスの印象があるかもしれませんが、実際のオーストラリアの労働市場は深刻な状況を迎えているのです。

【引用】

◇Australian Government Department of Home Affairs:
https://immi.homeaffairs.gov.au/visas/getting-a-visa/visa-listing/work-holiday-417/first-working-holiday-417#Eligibility
◇The Guardian:
https://www.theguardian.com/business/2022/dec/26/australias-tourism-body-wants-to-lift-working-holiday-visa-age-limit-to-50
◇Australian Immigration News:
https://www.youtube.com/watch?v=OCyze7xSqh8
◇World Voice:
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/takao/2022/09/post-38.php

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