2023年、エストニアへの旅行者数は増えた?減った?
2023年は多くの人にとって再び自由に海外旅行に行けるようになったと感じた年だろう。日本を含めたいくつかの国は、2023年中に空港でのコロナ水際対策を完全終了した。欧州全体ではそれよりも早く国をまたぐ移動に制限がない状態になっていたものの、有名観光地は2022年の夏よりも2023年の夏の方が多くの人でにぎわっている印象があった。はたしてエストニアには観光客は戻ってきたのか、そうでないのか、エストニア統計局のデータとともに見ていく。
2023年、エストニアへの旅行者数は増えた?減った?
著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2024年3月27日
エストニアに訪れた人たち
まずはエストニア国外から訪れた人たちの人数。前年2022年の350万人弱から13%増加し、394万7299人となった。エストニア銀行が発表した最新の統計によると、合計で12億3000万ユーロが外国人観光客によって消費された。これは前年から1億7800万ユーロ増加している。
図は外国人観光客の出身地を視覚的に表したものだ。
外国人観光客が最も多かったのはフィンランド(697,000人)とラトビア(229,000人)であった。やはりバス1本、または船1本でエストニアに到着できる手軽さからか、お隣の2国で全体の半分を占めている。
2022年と比較して、これらの近隣諸国からの宿泊観光客はそれぞれ18%と、12%増加した。フィンランドからの観光客はいまだコロナ前の水準に戻っていないが、ラトビアからの観光客数は2019年と比べて25%増加した。ドイツ、イギリス、アメリカなどより遠い国からの観光客は、2023年は2022年よりも多かったが、それでもコロナ前よりは少なかった。
図とグラフを見てわかる通り、アジア圏からの観光客は全体でみるとトップ10にも入っておらず、アジアで観光地としてのエストニアの人気の低さが垣間見える。このことについて首都に住む筆者の友人に聞いてみたところ、コロナ前はアジア系観光客もある程度は見かけていて、特に中国人観光客を観光ハイシーズンによく見かけたらしい。現地人からしても現状のアジア系観光客の数はコロナ前と比べてより少なくなっていると感じているそうだ。
エストニアから国外へ行った人たち
国外へ出かけたエストニア在住者も前年2022年と比べ増加した。前年約269万人だったところ13%増加し、304万7959人が国外へと旅立った。
面白いのは、エストニア人の目的地はバラバラだということだ。1位、2位はフィンランドとラトビアであるが、エストニア人観光客は欧州内のいろいろな場所へ散らばっている。イタリアやスペイン等の南欧と呼ばれる地域が上位に来ているのは、日差しを求めたエストニア人たちのバケーションの地としてこのあたりの島や都市が人気が高いからだろうと推測できる。
宿泊施設から見る国内旅行の動向
国内の宿泊施設は2023年に総計343万人以上の観光客にサービスを提供した。これは2022年の数字より全体で5%増加している。これは主に外国人観光客のおかげで、国内観光客の宿泊施設利用については減少している。この減少の原因は外国人観光客と国内観光客で求めるものが違うことにあると考えられる。外国人観光客の約83%は世界遺産の街並みがある首都タリン周辺に宿泊したが、国内観光客で首都近辺に宿泊したのは33%である。他の都市が格別に国内観光客をひきつけているのかというとそうでもなく、エストニア第2の都市タルトゥ(Tartu)や夏の首都と呼ばれるパルヌ(Pärnu)はいずれも知名度が高いが、これら2都市に国内旅行者が多く宿泊したというデータはない。
つまり、外国人観光客にとって魅力的な首都の古い町並みも、エストニア国内の人からすると珍しいものではないため数字が伸びず、かといって他の都市に新しい何かがあるわけでもないという状況で、国内旅行者は宿泊しないということにつながっていると考えられる。
まとめ
2023年は多くの人にとって海外旅行が再び可能になった年であり、エストニアへの観光客もエストニアから国外へ行く人も増加した。一方で国内旅行者は減少しており、エストニアでは国内観光市場の再活性化が重要だ。2024年に国内で予定されているイベントは多々あるため、それらの影響がどう出るか楽しみだ。
【参考】
◇ERR:
https://news.err.ee/1609246584/statistics-foreign-tourists-have-found-their-way-back-to-estonia
◇ERR:
https://news.err.ee/1609246584/statistics-foreign-tourists-have-found-their-way-back-to-estonia