プライドマンスの6月 ラトビアのLGBTQ+に対する考え方

エストニア

「プライドマンス」と呼ばれる6月、LGBTQ+と総称される性的マイノリティに対する理解を深め尊重するキャンペーンが世界中で行われた。ラトビアにおいてもそれらのイベントが行われ、LGBTQ+に該当する人々への理解を示す動きが見られた。実際のラトビアにおける状況はどうなのか、統計を見ながら考察する。

プライドマンスの6月 ラトビアのLGBTQ+に対する考え方

著者:ラトビアgram fellow さえきあき
公開日:2024年8月19日

ヨーロッパにおける同性婚

ヨーロッパ内でLGBTQ+に対する考え方は国ごとに異なる。LGBTQ+が指す範囲は大きいためすべてを網羅することは難しいが、その中の主要なトピックである同性同士のパートナー制度・結婚が法的に認められているかどうかからある程度、社会の寛容度や理解度を推測することができる。図は同性婚が法律で認められている国を示している。

画像引用元(Human Rights Campaign https://www.hrc.org/resources/marriage-equality-around-the-world )

21ヶ国が同性婚を認めている。地図が表す通り、その可否は地理的にはっきりと分かれている。西側と北側では合法化している国がほとんどだが、中央から東側にかけては現時点では合法化されていない。ラトビアでは現状同性婚は認められていないが、パートナーシップの申請は2024年7月1日からできることが、2023年11月のラトビア議会において決議された。

ラトビアにおけるLGBTIの人々がおかれる状況

European Union Agency for Fundamental Rightsが英国を含むEUの28か国+2ヶ国の計30ヶ国を対象に行ったアンケートによると、ラトビアはEU全体の平均と比較するとLGBTIに対する理解や政策はそれよりも低い。自分がLGBTIであることをオープンにできるかという質問に対して、22%の人がオープンにできると回答した。全体平均は47%だ。「公の場で同性パートナーと手をつなぐことを避けるか」という質問に「はい」と答えたのは75%にのぼる。これに関してはEU平均でも61%と高い。

2019年の世論調査では、54%のラトビア人が同性愛者や両性愛者の同僚を持つことを不快に思っている。2023年のGlobsecの世論調査によると、結婚などの同性の権利を合法化することを支持しているのは40%に過ぎない。

このようにラトビアはまだマイノリティにとっては少し窮屈な面を持っている。その背景にあるのはやはりソ連時代やロシアの影響も大きく関係しているだろう。ロシアは2023年11月、「国際的なLGBT市民運動」を過激派組織と断定し全国での活動を禁止しているくらいで、昔から性的マイノリティに対する世間からの目は厳しい。

Baltic Pride Parade

世界各国で6月中にLGBTQ+の人権の啓発を行うイベントやパレードが行われた。ラトビアにおいても数日間をかけて開催され、最終日には大規模なパレードが行われた。

リガ市内中心の大きな庭園から新市街までを練り歩く大規模なパレードでイベントは締めくくられた。全ての人に等しく与えられるはずの権利が、性的マイノリティだからという理由で認められないというのは悲しい状況である。賛同する人が大勢で集まって行動を起こしても、いまだ合法化には至らない。少なくともラトビアはパートナーシップ制度が法的に認められ、コツコツと歩を進めている段階にある。

同性婚が認められることでLGBTQ+に対するすべての権利が認められた、ということはできないが、次のステップに進むための最初の関門である。

【参考】
◇European Union Agency for Fundamental Rights:
https://fra.europa.eu/sites/default/files/fra_uploads/lgbti-survey-country-data_latvia.pdf

◇Reuters:
https://www.reuters.com/sustainability/society-equity/latvian-parliament-legalises-same-sex-partnerships-2023-11-09/

◇BBC NEWS JAPAN :
https://www.bbc.com/japanese/video-67586334

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さえきあき

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エストニア在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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