Santander銀行がデジタル銀行と消費者金融を一体化

2025.12.12

スペイン

スペインの大手銀行グループであるBanco Santanderは、2025年10月、完全オンライン型のデジタル銀行「Openbank」と消費者金融部門「SCF（Santander Consumer Finance）」を統合すると発表した。

欧州各国で異なっていた事業構造を一本化し、ドイツを皮切りにOpenbankブランドとして再出発する。デジタル時代の新たな銀行モデルを目指すこの再編は、金融業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めている。

本記事では今回の統合の背景や、顧客にとってのメリット・リスクについてもお伝えする。

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この記事の内容

Santander銀行がデジタル銀行と消費者金融を一体化

Santander銀行がデジタル銀行と消費者金融を一体化

　　　著者：スペインgramフェロー北田ミヤ
公開日：2025年11月17日

デジタル・ファースト戦略

サンタンデール銀行が進める「デジタル・ファースト戦略（Digital First Strategy）」は、銀行を店舗中心からテクノロジー中心のモデルへと変革する試みである。アナ・ボティン会長は『サンタンデールは銀行免許を持つテクノロジー企業である』と語り、クラウド基盤、AI、データ活用を軸に事業の再構築を進めている。

各国に分散していたITインフラを共通化し、ひとつのプラットフォーム上でローン、預金、投資商品を提供する「One Santander構想」を展開しており、完全オンライン銀行であるOpenbankは、この戦略の中核を担う存在だ。欧州のFintech企業が急成長する中、サンタンデールは自らを「伝統的な銀行」から「デジタル金融グループ」へと再定義し、効率化とスピードの両立を追求していく。

なにが変わる？

統合後は、OpenbankとSCFが法的にもひとつの実体となり、欧州各国において「Openbank by Santander」としてサービスを展開する予定である。報道によれば、デジタル系事業で取り扱う預金残高は約840億ユーロ、ローン残高は約1,400億ユーロ規模に達するとされている。ドイツを皮切りに、2026年春までに主要市場への展開を目指す。

自動車ローン、クレジット、デジタル口座といった商品群が同一ブランドのもとで提供され、申し込みから審査、返済までをオンラインで完結できる仕組みへと進化する。また、クラウド基盤の活用によって新商品の立ち上げが数週間単位で可能となり、従来の銀行と比較して俊敏な運営が期待されている。

一方で、移行完了までに12〜18ヶ月を要するとの報道もあるように、システム統合や各国の規制当局による承認プロセスには一定の時間が必要で、短期的には一部サービスの移行に遅れが生じる可能性もある。とはいえ、今回の再編は、Santanderにとって欧州におけるデジタル銀行モデルの確立に向けた決定的な一歩であるといえるのではないだろうか。

顧客にとってのメリットとリスク

顧客の視点における最大のメリットは、「ワンストップ化」である。これまで別々に提供されていたデジタル銀行とローン事業が統合されることで、口座開設、融資、投資、決済までをひとつのアプリで管理できるようになる。AIによるパーソナライズされた商品提案や、オンラインで完結する審査プロセスも拡充され、利便性は飛躍的に向上する見込みだ。

しかし、その一方でリスクも存在する。ブランド移行に伴う手数料体系や契約条件の変更、システム統合による一時的な障害、データ移行時の個人情報リスクなど、過渡期特有の不確実性は避けられない。

従来のSCF顧客にとっては、利用アプリやログイン方法の変更が必要となる可能性も高い。これらの課題をいかに最小化するかが、顧客との信頼関係を維持する上での重要な鍵となるだろう。