フィリピンのお風呂事情 | 水シャワーで生きるフィリピン人と湯船との相性
日本では当たり前のように浸かっている湯船ですが、実は海外ではあまり見かけません。筆者の住むフィリピンでは、湯船に浸かるどころか、お湯を浴びる文化もありません。バケツに溜めた水を手桶で汲んでシャワー代わりにしながら身体を洗うのが一般的です。
今回は、フィリピンで湯船や熱いシャワーが一般家庭に普及しづらい理由や、そんな中でもフィリピン人に人気となっている湯船スポットの秘密についてご紹介します。
フィリピンのお風呂事情 | 水シャワーで生きるフィリピン人と湯船との相性
著者:フィリピンgramフェロー たこ坊
公開日:2023年 9月4日
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フィリピンの一般的なお風呂事情
フィリピンのお風呂事情の前に、まずはフィリピン人の節約意識についてシェアさせてください。フィリピンでは一般会社員の平均月収が3万~5万円程度であり、日本と比較すると約10分の1程度となります。また、フィリピン人は家族に対する愛情が深く、一人暮らしという考えを持つ人が少なく、結婚するまでは家族と一緒に暮らすのが一般的です。
子どもが大きくなると、一家の大黒柱として家族を養う立場になります。そのため、収入は自分一人のものではなく、家族全員の生活費と考えて収入の一部を両親や祖父母へ送金する人が多いです。その結果、嗜好品や趣味に使うためのお金は残らず、常に節約して生活しようという意識が高いです。
そんな節約意識の高いフィリピン人の家のお風呂場はというと、バスタブはおろかシャワーも設置されておらず、タボと呼ばれる手桶と水を溜めるためのバケツ、そして蛇口が設置されているのみです。タボに水を汲んでシャワー代わりに使用し身体を洗い流します。タボやバケツは便器と同じ部屋に設置されていることが多く、排便後のお尻を洗う際や便器を流す際にも使用されます。
フィリピンではインフラが整備されていないこともあり、断水が頻繁に起こります。そんな時に役立つのがこのタボとバケツのセット。バケツには常に水が溜まっている状態にしているため、万が一断水した時にもバケツの水を大事に使用して乗り越えることができます。
シャワーやトイレだけでなく、あらゆる用途に使用できるタボ。そんな「タボがいかに便利か」ということをテーマにしたパロディミュージックビデオが作られているほどです。
同じく節約意識の高さからか、髪の毛を乾かすヘアドライヤーを使用しない人が多く、髪を濡らしたまま学校へ通学、もしくは職場に通勤する人の姿をよく見かけます。常夏の国フィリピンは年中暑いため、自然乾燥ですぐ乾くため自分で乾かす必要がないのだとか。
自然乾燥にちなんだ小ネタとして、フィリピン人はトイレで排便した後、トイレットペーパーは使用せず、水で洗い流します。その際に、パンツやズボン、またお尻が濡れたままになりますが、外の気温ですぐに乾くから気にしないのだそう。筆者もすっかりフィリピンスタイルに慣れてしまいましたが、本当に気にならなくなります。
フィリピン在住日本人のお風呂事情
フィリピンの一般的な家庭ではタボを使用する、つまり冷たい水のみで身体を洗います。一方で現地に住む日本人がどうしているのか気になりませんか?
例として、フィリピン生活5年目の筆者が現在暮らしているのは、家賃・水道・光熱費込みで5万円弱のコンドミニアムです。筆者の部屋のバスルームには入居時よりPanasonic製の電気給湯器が設置されていました。
コンドミニアムや中級クラス以上のホテルには電気給湯器が標準装備として設置されています。ただし、値段は6千ペソ前後( 約1万5千円程度 / 2023年8月25日時点 )のものが多く、現時点のフィリピン人一般会社員の平均月収のうち約30~50%を占めてしまうことからもわかるように、一般家庭に普及するにはまだ時間がかかりそうです。
費用面だけでなく、大半のフィリピン人が水シャワー(タボを使用した水浴び)に慣れていることから、給湯器が必要だと考える人が少ないことも普及に時間がかかる要因のひとつとなりそうです。またフィリピンには、「お湯を頭から浴びると禿げてしまう」という迷信があるため、給湯器需要が高まるには時間を要しそうです。
なお、フィリピンでよく見かける電気給湯器は主にPanasonic(日本)、Champ(シンガポール)、Electrolux(フィリピン)の製品です。価格帯は6千ペソ~1万ペソ(約1万5千円~約2万6千円)程度の製品となります。日本製は今のところPanasonic製のみとなっています。
フィリピン人に人気の湯船スポット | KAWA BATH
フィリピンの一般的なお風呂事情について触れてきましたが、日本人である筆者はやはり湯船に浸かりたいと思う日もあります。
そこで、近くに湯船はないものかと検索してみたところ、KAWA BATHという日本でいう五右衛門風呂のようなスポットを発見しました。
フィリピン国内の他の地域にも同様の釜を扱った湯船スポットが存在しており、自然の景色とのセットで観光客を取り込んでいるようです。
地域名:カビテ州タガイタイ(筆者の住む地域)
スポット名:La VeryOl’s Mountain View Garden
費用:500ペソ(45分)
地域名:アンティーケ州ティビアオ
スポット名:Kayak Inn
費用:250ペソ(60分)
地域名:リサール州タナイ
スポット名:El Patio Razon
費用:300ペソ(60分)
地域名:セブ島サンボアン
スポット名:Fantasy Lodge
費用:550ペソ(45分)
筆者が住むタガイタイのLa VeryOl’s Mountain View Gardenでは、499ペソ(約1300円 / 45分)で湯船に浸かることができます。また、45分のKAWA BATHに加え、1時間のマッサージとセットで1099ペソ(約3000円)というコースもあります。日本では30分ほどのマッサージだけでも3000円くらいかかるので、かなり安いですね。
湯船の効能を期待した需要というよりは、インスタ映えやフォトジェニックを狙った観光客が多い印象です。というのも、フィリピン人は自撮り写真を撮るのが大好きで、鏡を見つけた時や、絵になる景色を見つけた時には、同じ画角の写真でもポーズを変えて飽きるまで何度も撮影するという光景をよく目にします。そんなこともあって、フィリピンではインスタ映え・フォトジェニックなお店やカフェがトレンドになりやすく、メニューの質よりも店舗の内装にお金をかける傾向にあります。
効能や質よりも見た目のインパクトを重視するのがフィリピン人の心を掴む鍵となります。
まとめ
フィリピン人の節約意識の高さ、また平均所得の低さから給湯器や湯船が一般家庭に普及するにはまだ時間がかかりそうですが、一方でフィリピン人の心を掴むフォトジェニックなスポットであれば、たとえ彼らに馴染みのない湯船であっても手頃な価格で映える写真が撮影できることから需要があります。
フィリピンでお店やスポットを展開する際には、効能や意味合いを考えるよりも、見た目のインパクトや美しさを重視することで、フィリピン人の心を動かすことができそうです。
今回はフィリピンのお風呂事情を中心に触れました。何かの参考になりましたら幸いです。