2025年8月1日から最低賃金を1,700リンギットに統一 

マレーシア

マレーシア人材資源省は、8月1日から最低賃金1,700リンギットの全面的な実施を発表しました。2025年2月1日に最低賃金命令が正式に施行されていましたが、従業員数が5人未満の雇用主には7月31日までの6か月の猶予期間が認められていました。

日本でも今夏、最低賃金の目安が発表されましたが、本記事ではマレーシアのケースについて解説します。

(引用元:RM1,700 monthly min wage to be fully implemented from Aug 1 | The Star
https://www.thestar.com.my/news/nation/2025/07/22/rm1700-minimum-wage-to-come-into-force-from-aug-1

2025年8月1日から最低賃金を1,700リンギットに統一   

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 9月25日

1,700リンギットに統一

「2025年8月1日から、例外なくすべての雇用主は、猶予期間を享受していた人々を含め、月額1,700リンギット(約5万9,000円)の最低賃金命令に従わなければならない」と人材資源省が発表しました。

対象と除外

外国人労働者や契約見習いも対象に含まれますが、家事使用人は対象外とされています。

違反した場合、対象従業員1人あたり最大RM10,000の罰金、さらに違反が継続する場合は1日ごとにRM1,000追加の罰金、繰り返し違反には最高RM20,000または5年以下の禁錮刑といった厳しい罰則があります。月額1,700リンギットは、週の労働日数に応じて日給・時給に換算されます。6日労働なら日額65.38リンギット、時給8.72リンギットと発表されています。

背景

この賃金見直しは、2025年度予算で発表された一連の改革の一環で、生活費の高騰に対応し、低所得者の収入を底上げする目的があります。

政府は漸進的に賃金を引き上げる計画も推進しており、企業に対し、生産性やスキルに基づく賃上げを励行するとともに、インセンティブを提供しています。

経済・企業への影響

最低賃金引き上げは低所得層の購買力を高め、内需や消費を後押しする効果が期待されています。ただし、中小企業や労働集約産業では人件費の負担が増し、価格転嫁や効率化、自動化への移行が必要になる可能性が指摘されています。

日系企業への影響

日系企業も新最低賃金に対応するため、給与体系や予算計画の見直し、コスト構造の再構築が必要です。政府が提供するインセンティブおよびスキル研修支援を活用することで、労働者の生産性を高めつつコスト負担を和らげることも検討するべきでしょう。

ASEAN諸国との最低賃金比較

最低賃金の引き上げにより、マレーシアの労働市場における位置づけはASEAN諸国の中でも相対的に高くなります。

・タイとの比較
タイでは2024年末より全国一律で最低賃金が日額400バーツ(約1,680円)に設定されました。月換算にするとマレーシアの新基準よりやや低めです。タイもインフレ対策や生活費の上昇に対応するために最低賃金の調整を進めていますが、地域ごとの格差を残している点が特徴です。

・シンガポールとの比較
シンガポールには法的な全国一律の最低賃金制度は存在しません。その代わりに、業種別・職能別の賃金モデルが導入されています。一律の最低賃金ではなく、スキル重視のインセンティブ構造によって賃金の底上げを図っているのが特徴です。

これからの課題

最低賃金引き上げは住民の生活向上に寄与する一方、物価上昇への連鎖リスクもあります。

労働コストの増加はASEAN内での競争力に懸念が生じます。しかし、高付加価値化や生産性向上を促す追い風にもなり得ます。

家事労働など最低賃金の対象外分野は引き続き低賃金の温床となる可能性があり、公正さという点で懸念されています。

スキルに基づく賃上げなどにより、長期的に所得格差が縮まる可能性が期待されています。

Malay Dragon

36,267 views

マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

プロフィール

関連記事一覧