マレーシア中学生、いじめ被害率は世界上位

先日発表された国際学力調査(TIMSS 2023)で、マレーシアの中学2年生にあたる生徒のいじめ被害率が45ヶ国中4位、56%にのぼることが明らかになりました。
マレーシアに15年暮らし、現地で日本語も教えている私には非常にショッキングで信じられないニュースで驚きました。
この記事では、この衝撃のニュースについて詳細をお伝えします。
(引用元:Global Study: Over Half Of Malaysian Students Surveyed Report Being Bullied In School
https://says.com/my/news/global-study-over-half-of-malaysian-students-surveyed-report-being-bullied-in-school)

マレーシア中学生、いじめ被害率は世界上位
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年12月29日
衝撃の数字

被害率の56%という数字にも衝撃を受けましたが、2019年の65%からは減少しているとのこと。しかし依然として世界でも高水準にあり、アジア圏ではマレーシアが突出しています。
確かに新聞報道や現地でのSMSなどを見ると、「冗談」と「からかい」の境界線が曖昧で、笑いの延長に他者を傷つけてしまう瞬間があると感じられます。
教育現場の影響
学力調査ではいじめの頻度が高い生徒ほど学習意欲が低く、学校への帰属感も薄れる傾向が一貫して示されています。OECD諸国では「月に数回以上いじめられる」と答える生徒は約2割程度。マレーシアの56%という数字は、その倍以上となっています。
実際、私が日本語を教えている生徒の中にも「からかわれるのが嫌で、発表を控えるようになった」という学生がいました。
政治と法制度の変化
いじめは単なる学校内の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題として位置づけられつつあります。マレーシアの教育省の統計によれば、学校からの通報件数は2021年326件から2024年には7,681件へと急増しています。コロナ禍からの休校明けで一気に表面化した面もありますが、通報体制が整い「隠れたいじめ」が可視化されつつあるともいえるでしょう。
さらに2025年7月には刑法改正が行われ、いじめや嫌がらせ、相手の個人情報をネット上にさらす行為までを含めて最長10年の禁錮刑を科すことが可能になりました。政府が『教育現場の秩序維持』を超えて、『社会全体の治安課題』と捉えている表れでしょう。
さらに『反いじめ特別法案』が10月の国会に提出される予定です。
社会・環境面の特徴
TIMSSの調査では、身体的暴力よりもからかい・陰口・仲間外しなど感情的ないじめが多いとされています。特に寄宿舎やSNSといった、大人の目が届きにくい場所でのエスカレートが指摘されています。これらは学校単独では解決しにくい領域であり、家庭や地域との連携が不可欠です。
アジア諸国との比較
同じアジアでも、シンガポールや日本はPISAの調査ではいじめの報告率が2~3割前後。マレーシアの56%は、やはり突出していると言えるでしょう。多民族社会や共同体志向が強い国々でしばしば観察される傾向のひとつとして、仲間内のからかいが容認されやすいという側面があるとは言われてますが、国際的に見ても改善の余地は大きいでしょう。
“学習の安全保障”という考え方
私は日本語教育の現場で、『学びの安心感』を確保することが学力以前に必要だと強く感じています。教師や大人が意識的に教室独自の合意ルールを共有し、早期に合図を出して介入する。それだけで教室の空気は変わると思います。
政治は罰則を、教育現場は日常の小さな観察を、家庭や地域は支え合いを――三層が重なってこそ、いじめに対処できるでしょう。いじめの削減は単なる学校問題ではなく、未来の人材育成と社会の安定を左右する“学習の安全保障”だと強く実感しています。
学ぶ環境の改善
今回のニュースは誇張ではなく、国際調査に裏づけられた事実です。改善の兆しは見えていますが、まだまだ道半ばです。数字のインパクトに一喜一憂するのではなく、教育・政治・社会がそれぞれの役割を果たし、子どもたちが安心して学べる環境をどう築くか――それが次の大きな課題であると思います。


















