製造者連盟会長が不満表明「祝日が多すぎる」
マレーシアの製造業者連盟会長が不満を表明。世界トップの祝日数に追加祝日の必要性を問う。増える祝日による経済損失や生産性の低下など問題点を指摘。マレーシアの多宗教・多民族国家で宗教ごとの祭日が国の祝日となり、さらに各州の特別祝日も多い。学校休みやスポーツ大会での突発的休日も混乱要因。改革や制度改善の必要性が浮き彫りになっている。
そこで今回は、マレーシアの祝日の特徴について紹介します。
経済界が懸念するマレーシアの祝日事情とは?
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年6月1日
経済損失が大きい
製造者連盟の会長は、祝日が1日増えるたびに約30億リンギ(約900億円)の経済損失が発生していると説明し、さらに、生産ラインとサプライチェーンを混乱させ、企業の生産性を低下させているとも述べています。
経済団体は予定外の祝日が多すぎることについてしばしば苦情を述べており、数年前にも同様の苦情を表明しています。
世界でも有数の祝日の多さ
日本も祝日が多い国ですが、マレーシアの祝日の日数はそれ以上!
企業や銀行などに連絡したくても祝日で繋がらずに困ってしまうこともしばしば。
マレーシアの企業とビジネスをされている方は、マレーシアの祝日を日頃からしっかりと確認されることをおすすめします。暦により決まる祝日や、州ごとに祝日が違うこともあるので、要注意です。
ハリラヤで追加の祝日
ハリラヤについては以前この記事でも紹介しましたが、ハリラヤとは「ラマダン(断食月)」が終わった時に断食明けを祝う祝日のことで、イスラム教徒にとって1年で最もおめでたい日です。
ハリラヤの初日は月の観測によって決定されるため、毎年日が変わり、正確な日程はイスラム教指導者の月齢の観測に基づいて直前に定められます。
今年のハリラヤ休暇の日程は事前に設定されていましたが、観測結果に基づき1日早まる可能性があるとされたため、追加の特別祝日を発表していました。
マレーシアに祝日が多い理由
マレーシアは、マレー系、先住民、中華系、インド系、アラブ系などから成る、世界でも有数の多宗教で多民族国家です。
国教はイスラム教ですが、信仰の自由が認められており、仏教やヒンズー教、キリスト教の祭日も祝日に制定されています。宗教ごとの祭日がすべて国の祝日になってしまうので、必然的に祝日が多くなってしまいます。祝日にもマレーシアの多様性が反映されているのです。
さらに、各州ごとに州のサルタン(君主)の誕生日などの祝日があり、これらすべてを足すと世界でも有数の祝日数となります。
また、国際的スポーツ大会でマレーシア人が優勝した場合や総選挙の実施日などはいきなり休みになることもあります。
年に4回ある学校休みも混乱に
年に4回ある学校の学期休みの時にも、一部の親が子どもを遊びに連れて行くために仕事を休み、職場が混乱する事態となっています。
同協会は「会社サイドと従業員とがより適切に休暇を計画できるシステムに移行すべき」と述べ「学校を年に何度も休みにする代わりに、長い休暇期間を一度設けるべきで、そうすれば混乱は最小限に抑えられるだろう」と指摘しています。
利益を犠牲にして操業
マレーシアでは、従業員の年次有給休暇は必ず消化させなければならず、さらに従業員が祝日に働く場合は日給の2倍の賃金を支払わなければなりません。
しかし、アジアの新興工業経済諸国との競争が激しいため、製造業者は厳しい選択を迫られています。
時間外賃金を支払い、利益率を犠牲にしてでも祝日に工場を稼働させる以外に選択肢がありません。
マレーシアは人口が周辺国に比べて少ないため、労働力が不足しており、基本的な製造業ではすでに高コストの国となっています。マレーシアが低コスト生産で競争することを、祝日の多さがさらに困難なものにし、外国人の不法就労による低コスト生産が後を絶ちません。
身を切る改革
公務員は長期の休暇や祝日を謳歌できるため、祝日や休日に関する改革には手を付けにくいでしょう。
しかし、マレーシアが先進国の仲間入りをし、諸外国からの投資を得たいのであれば、よりグローバルに考えなければいけません。
経済の硬直性や政府系の各種手続きの緩慢さを取り除くためには、制度や構造の改革が必要となってきます。