2024年 洪水被害額 9.3億リンギット

マレーシア統計局が先日発表した特別報告書によると、2024年のマレーシア国内の洪水被害額は9億3,340万リンギット(約315億円)だったことがわかりました。
毎年のように洪水に悩まされているマレーシアで、政府が「100年に一度」と表現した2021年の大洪水では60億リンギット(約2,040億円)以上の損失をもたらしています。
今回は、マレーシアの洪水の被害について解説します。

2024年 洪水被害額 9.3億リンギット
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年7月12日
昨年比では23.6%増

2024年の国内の洪水被害額は、2023年と比べると23.6%増で、国内総生産(GDP)の0.05%に相当します。
住居の被害が3億7,220万リンギット(約126億円)と最も大きく、全体の39.9%を占めました。公共施設やインフラの被害が次に続き、以下、農業、サービス業、自動車、製造業の順となっています。
州別の被害額
州別では、クランタン州が最大で2億6,300万リンギット(約89億円)で、首都クアラルンプールが810万リンギット(約2億7,500万円)でした。
国内に多大な影響
マレーシアは2030年にGDP比で最大4.1%の損害を受けると予想されていて、推定では雇用への大きな影響が示されており、マレーシアの失業率は最大2.2%上昇する可能性が示唆されています。
地理的・気候的要因
マレーシアは赤道近くに位置し、熱帯モンスーン気候の影響を強く受けています。特に東海岸地域では10月から3月にかけての北東モンスーン期に大量の降雨が発生し、洪水のリスクが高まります。さらに、国土の多くが低地で、河川が氾濫しやすい地形となっています。
シンガポールとの比較
なぜマレーシアはお隣のシンガポールと比べて洪水補被害が大きくなるのでしょうか?
シンガポールも熱帯気候に属しますが、都市計画とインフラ整備により洪水リスクを低減しています。
具体的には、効果的な排水システムの整備や土地利用の厳格な管理が行われています。
一方、マレーシアでは急速な都市化や森林伐採により、自然の排水能力が低下し、洪水リスクが増大しています。
洪水の社会への影響
洪水は人命の損失、住居の破壊、インフラの損傷など、多大な社会的影響を及ぼします。
例えば、2024年12月の洪水では、マレーシアと南部タイで30人以上が死亡し、数万人が避難を余儀なくされました。 農地の浸水により農作物が被害を受け、食料供給や農家の収入にも深刻な影響を与えています。
また、2021年の洪水ではセランゴール州をはじめ多くの州で被害を受け、死者数は54人、避難者数は最大時で約7万人、被害総額も約67億リンギット(約1,800億円)を越えました。
洪水対策
マレーシア政府は洪水対策として以下の施策を実施しています。
・インフラ整備:堤防や排水路の建設・強化を進めています。SMARTトンネルは、洪水軽減と交通渋滞緩和を目的とした全長9.7kmの世界最長の多目的トンネルです。洪水時には雨水を排水し、平常時には車両通行に利用されます。
・早期警報システム:気象予報と連携し、住民への迅速な警報発信を行っています。
・避難計画:避難所の設置や避難訓練を通じて、住民の安全確保に努めています。
しかし、これらの対策にもかかわらず、気候変動による降雨パターンの変化や都市化の進行により、洪水リスクは依然として高い状況が続いています。
日系企業への影響
洪水は日系企業にも影響を及ぼしています。洪水による工業団地の浸水や物流の遅延が日系企業の事業運営に影響を与える可能性があります。2021年の大洪水では、マレーシアに進出している日系製造業(パナソニック、ホンダ、トヨタなど)も大きな影響を受けました。
マレーシアの洪水は地理的・気候的要因、都市化の影響によって被害が増大化していて、社会経済への広範な影響を持つ複雑な課題となっています。